川崎簡易宿泊所火災の「闇」

0001

地方の人口を吸収し、地域格差を糧にして大都市ばかりが繁栄する、という図式があった。しかし、日曜日に投開票された大阪市の住民投票の結果をみる限り、少なくとも東京以外はそうでもなさそうだ。都会は生活費、特に住宅が高い。都心から離れた遠方へ行けば安いが、通勤時間や交通費などを考えれば良い選択でもない。都心で高給取りになれば問題はないのだが、今の多くの若い世代にとっては難しいだろう。

ホームレスの形態も様々になっている。住所不定でネットカフェを泊まり歩く、というのが若い世代のホームレスで常態化しつつある。遠方に住んでいては、早朝集合などザラにある日払いバイトに臨機応変に対応できないのだろう。だが、ネットカフェの夜間のパック料金は、安いところでも8時間で1200円ほどだ。


一方、東京の浅草・山谷や横浜の寿町、大阪の西成あたりに行くと安いところでは一泊800円、一ヶ月いても3万円以下、という簡易宿泊所がある。日雇い労働者やホームレスが安く宿泊できる簡易宿泊所は、旅館業法で認められた宿泊施設だ。最近のネットカフェにはシャワーのある店もあるが、簡易宿泊所で入浴施設があるところは少ない。

こうした宿泊施設は、宿(やど)を逆に読ませて「ドヤ」と言わせ、それら簡易宿泊所が集まっている場所を「ドヤ街」と呼んだ。本来は日雇い労働者やホームレスなどが雨露をしのぐために利用するものだが、最近では受験就活で上京した学生や安上がりに旅をする外国人なども使っている。

当方の住居は横浜の寿町にも近い。横浜というのは不思議な街で、寿町から数百メートルの距離にブランド路面店が並ぶ元町があったりする。山谷が銀座から遠くない場所にあるようなものだが、寿町の住人たちの雰囲気は昼間から酔っ払って道に迷い出てくる以外はいたって平和だ。

大阪の西成に行ったときは、警察署がトーチカ陣地のようになっていて驚いた。その横の路上では、一個100円のオニギリをおばちゃんが売っていた。トーチカ陣地はかつての越年闘争の名残だ。大阪市の住民投票は、南部ほど「大阪都」への反対票が多かったようだ。貧困層や高齢者層は、橋下改革についていけなかったのだろう。

ところで、東京23区の場合、生活保護費の中の住宅扶助費の上限は、単身者で5万3700円だそうだ。2011年1月に新宿区大久保で起きた木造二階建てのアパートの火災では、5人の住人が亡くなられた。そのうち4人が70歳以上の高齢者だったのは記憶に新しい。このアパートは、ほかが入居を嫌がる単身の高齢者を受け入れていたわけだが、周辺の相場より高い家賃を取っていたようだ。行き場のない高齢生活保護需給者を受け入れる場合、住宅扶助費の上限までむしり取る、という背景があるらしい。

火事と言えば、5月17日に川崎市で起き、宿泊者5人が亡くなった火災は、アパートではなく簡易宿泊所が火元だった。犠牲者の年齢は、48歳の方以外、まだはっきり身元がわかっていないため不明だ。しかし、報道によれば、火事を起こした簡易宿泊所には生活保護を受けている高齢者が多かったらしい。ネット上では、川崎の火事の原因について諸説紛々飛び交っている。ひょっとすると、賃貸契約で嫌われる高齢の生活保護需給者を目当てに、相場より家賃を高くしていた新宿のアパートのような話が裏にあるのかもしれない。

ネタりか
都構想どころじゃない!? 大阪市Visaプリペイド支給に群がる生活保護ビジネス業者


空き家ビジネスが地方に人を呼ぶ!? 沖縄の動きとは
HANJOHANJO
昨年から国交省が主導して「空き家」対策に関する法律が施行され始めた。また地方自治体も増え続ける空き家に頭を悩ましている。高齢化や人口流出、限界集落化、空洞化などにより、住む人のいなくなった家が全国で増えているわけだ。総務省によれば、全国の空き家戸数は2013年の時点で約820万戸もある。空き家率は13.5%で過去最高となった。そのため「空き家ビジネス」と呼ばれる事業も出て来始めた。東急リバブルや住友不動産、積水ハウス、大京穴吹不動産、さらに最大手の大和ハウスが関連子会社を使った「空き家ビジネス」に参入し、話題になっている。空き家の保守管理や点検などを行うこのビジネス。相続税対策で仕方なく家を空けたまま保持しているような顧客層は、これらデベロッパーにとって上客なのかもしれない。

WSU researchers produce jet fuel compounds from fungus
EurekAlert!
米国ワシントン州立大学(WSU)の研究者が、腐葉土などの黒カビからジェット燃料を抽出する技術を開発した、という記事だ。一種のバイオエタノール。この生物は、麦わらやトウモロコシの皮など、本来なら廃棄されるような植物で容易に培養できるらしい。現在は最適化している最中だそうで、研究者によると非常に有望なエネルギー源になる可能性があるとのことだ。

Researcher imagines a world without large, plant-eating animals
PHYS.ORG
アフリカ大陸には多種多様な動植物が棲息しているが、その中でも生態系に大きな役割を果たしているのが大型草食獣だ。ゾウやキリン、シマウマ、ヌーや水牛などウシの仲間、インパラなどシカの仲間、サイ、カバなどなど。彼らは数も多く、植物のタネを遠くへ運んだり、山火事を防いだり、肉食獣を養ったりしている。この記事は、米国スタンフォード大学の研究者らの警告を紹介してるが、大型草食獣がもしも絶滅すればどうなるか予測している。得てして絶滅危惧種にばかり注目されるが、こうしたサバンナのマジョリティたちの重要性を再認識せよ、ということだ。

AMPキナーゼ|筋肉で血糖値を下げる|夢の扉
健康美容ニュースブログ
これは感覚的にも合致する話だ。筋肉量とダイエットの効果には相関関係がある。エネルギーを燃やすのは筋肉だからだ。血糖も血液中のブドウ糖、つまり全身へのエネルギーの供給源なので、燃える量が増えれば血糖値も下がるだろう。これは、そのメカニズムが少しわかった、という記事。AMPキナーゼ(AMP活性化プロテインキナーゼ、AMP-activated protein kinase:AMPK)については以前から糖尿病治療薬としても候補に挙がり、テレビでも紹介された。首都大学東京大学院人間健康科学研究科の藤井宣晴教授は、この分野の第一人者ということだ。


アゴラ編集部:石田 雅彦