「複雑怪奇」なISをめぐる中東情勢

イラクの首都バグダッドの西方約110kmにある要衝ラマディをめぐる、イラク軍といわゆるIS(イスラム国)攻防戦が激化したのが、5月下旬だった。一度はイラク軍がラマディを奪還するも、すぐに放棄してISへ引き渡してしまう。イラク第二の都市モスルも昨年からISの手に渡ったままだ。ISにはフセイン時代の精鋭部隊が合流し、ほとんど寄せ集め部隊であるイラク軍との戦意の差がはなはだしい、という話もある。


しかし、今年に入ってISは各地で劣勢となり、米国が中心となった有志連合軍による空爆の効果もあり、イラク軍が押し気味だったはずだ。一時、IS消滅も時間の問題、という報道もあった。シリアでもアサド政権が劣勢となり、シーソーゲームのように勢力の境界が行ったり来たりしている。いったい、どうなっているのか、ISをめぐる中東情勢は「複雑怪奇」で不勉強な当方には理解不能なことも多い。

こうしたイラク軍の退却劇の幕間に起きているのが、米軍から供給された武器弾薬がISに渡っているという深刻な事実だろう。昨年のモスル陥落の際も大量の米国製軍事車両などをISが鹵獲し、それが彼らの軍事的実力を不必要に高めている。米国などが、不甲斐ないという度を超え、背信行為を疑われても仕方ないイラク軍に業を煮やしているのもむべなるかな。

イラクとイラン、シリアの国境地帯は、チグリス・ユーフラテス文明の揺藍の地でもある。小麦類の原産地としての穀倉地帯でもあり、古来から争奪戦が繰り返され、近年では石油が出るのでさらに戦略的な価値が高まった。表題の記事によれば、首都にも近い要衝であるラマディ近郊には、ユーフラテス川を堰き止めたダムがあるらしい。さすがにISも水源地に毒を混入するなどの犯罪行為はまだしていないが、ダムを抑えられるとバグダッド市民はまさに干上がってしまう。

紛争を長引かせるためのデキレースとも指摘されるイラク対ISだが、水源地を巡る争奪戦となると話は少し違ってくるのではないだろうか。モスルの戦闘でもダムの攻防戦があった。次第に、ISと交戦する側も非人道的な攻撃を増やし、非戦闘員の被害も目だってきている。この状態が双方でエスカレートすれば、ISが水源に何か入れるという最終手段に訴える可能性も高くなりそうだ。

BUSINESS INSIDER
Iraqi officials fear IS ‘water war’ in Ramadi


Previously undetected link between brain and immune system discovered
gizmag
生物の免疫系は、外部からの異物を攻撃するシステムと、自分を攻撃しないシステムから成り立っている。積極的なものと消極的なもの、と分けてもいいが、脊髄で作られて胸腺で選別される各種のT細胞は末梢まで到達し、免疫系を構築する。また、血液中にも様々な免疫のシステムがある。これらはあたかも自律的に動いているようにみえるが、この記事によると、脳からの神経も免疫系と接続されていることがマウスで観察されたらしい。論文は科学雑誌『nature』に掲載された。ひょっとすると、タンパク質の立体構造が変異することよるアルツハイマー病といった神経発症疾患などとの関係が示唆されるかもしれない発見のようだ。
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この発見により、リンパ系について再認識する必要が出てきた。Credit: University of Virginia School of Medicine

Navy Researching Firing Mach 3 Guided Round from Standard Deck Guns
USNI NEWS
いわゆる「大艦巨砲主義」は第二次世界大戦で否定された遺物というのが一般的な認識だろう。しかし、艦載砲から打ち出される砲弾は、今の誘導ミサイルよりも格段に安い。コスト面から考えれば、まだ十分に砲弾のチョイスは可能だ。この記事では、米海軍が艦船の上から5インチ砲弾をマッハ3で打ち出した、と書いている。さすがに、使用されたのは戦艦ではなくアーレイ・バーク級のミサイル駆逐艦「Ross(DDG-71)」。なぜ、こんな高速度で発射されたのかといえば、照準時の計測が砲弾飛行中に外界からの影響でかく乱され、命中率が下がるのを避けるためらしい。速く目標に到達できれば飛行時間を短くできる。通常、この種の高初速弾は、レール上を高圧電源を使って打ち出されるが、これは最新式Mk45を使ったようだ。このMk45は海自のあたご型やあきづき型にも採用されている。
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Rossと同じアーレイ・バーク級のミサイル駆逐艦のMk45タイプ4から発射された高初速砲弾。写真:米国海軍

Doctors’ Secret Language for Assisted Suicide
The Atlantic
世界的な宇宙物理学者、スティーブン・ホーキング博士は、死んだら魂など残らない、と主張したことで有名だが、最近は安楽死を厭わないと発言して注目されている。すったもんだの挙げ句、オランダでは安楽死が認められた。この記事では、全米の5つの州以外では医師による安楽死は認められていないが、患者本人や家族の意志をもとにした暗黙の了解で「ひそか」に行われている、と書いている。いつ何が起きるかわからない。意志を示せないような状況に陥る前に、自分の気持ちを家族へ伝え、または文書などで残しておくのも一つの選択肢だろう。意識を失いつつ家族の負担になってまで、なお生き続けることを希望するというのは、自分に引き付けて考えた場合、かなり悩ましい問題だ。

For Apple Music to succeed, iTunes must be sacrificed
BGR
製品やサービスが共食い、つまりカニバってしまうことを、Appleは怖れない、という記事だ。iPod Touchはすでにない。ラップトップのラインナップもiPadに喰われてしまうかもしれない。iTunesの音楽収入が初めて減少し、音楽のストリーミング配信のほうへシフトすれば、おそらくAppleはiTunesサービスと訣別するだろう。日本では非現実的だが、iTuneは単なるラジオとゲーム、映画の再生サービスになってしまうのだろうか。


アゴラ編集部:石田 雅彦