税務当局が次に行うべき改善

マイナンバー制度は今年10月からカード配布で来年から効力を発揮します。その中身は数年間の間に何段階かを経て順次内容が強化される仕組みに特徴があります。来年は住民票ベースのカード配布になるはずですが、何れ戸籍ベースの配布になると思われます。つまり、日本国籍を持つ人は世界のどこに住んでいようがこの番号をあてがわれ、海外資産も含めた管理、報告が要求されるのであります。


私は一種の囲い込みと考えており、あらゆる権利義務が電子化されて一括管理され、見落としが無くなる大きな第一歩になるとみています。これは以前から指摘されていた個人の税逃れ、年金の不正受給防止などにも役立ちますが、疑問が残るとしたら多くの高齢者がそのメリットをうまく享受できるのか、という事でありましょう。数年間は利用者の戸惑いの上に内容の改善が続くため、運用側も利用者も一部で混乱しそうですが、究極的には国税にとっては強力な味方となることは間違いありません。

さて、個人や法人の税の逃げ道が無くなる中、今だ甘い状況に放置されているのが個人事業主の青色申告ではないでしょうか?青色申告は1949年のシャウプ勧告に基づいて始まったものでいわゆる戦後の日本に於ける会計と納税への道筋を作ったものです。特に闇市などでどんぶり勘定、税逃れが横行していた中で正しい会計と納税を推し進めるためのアメとムチのような仕組みであるともいえます。

特に当時はクレジットカード決済などがなかったわけで現金決済が全てであるところからザル勘定、どんぶり勘定が普通であったともいってもよいでしょう。昔の八百屋や魚屋にはザルがぶら下がっていて店主のオジサンが客から受け取った代金をそこにいれていたのが語源だと思います。私も覚えていますが、八百屋のオジサンがザルからお金を取り出して何か支払いに充てていたシーンは古き良き日本だった気がします。今考えれば何が売り上げで何が仕入代金なのか分からず、最後余ったお金で生活をするというむちゃくちゃぶりだったのでしょう。

それが一歩進んで青色申告が普及し、商店街の店主は青色申告会に入り、経理を奥様に任せるという家庭内分業制度が出来ました。帳簿と言っても現金の出し入れの大福帳でした。今では経理ソフトがありますからちょっと分かる人ならそれを入力していけば年度末には立派な青色申告書がボタン一つで印刷されるようになっています。

では私が指摘する青色申告の問題点とは何か、といえば経費の計上が当てにならないという事であります。

商店主の場合、自宅兼用になっている場合も多く、その場合、光熱費等は口座が一つ。その費用を全額経費計上したり個人の用途のものを経費で落とすなどの間違いが起こりやすいのです。いかんせん、青色申告は提出すればそれでおしまい。経費の内訳も総括表に入れるだけですからその内訳の信ぴょう性は疑問がつくところもあるのではないでしょうか?(国税も小さい魚は追わないのかもしれません。)

費用として認められるのは売り上げに対応するものであります。売り上げと全く関係ないものを購入したり、個人の用途のものを経費として計上しても税務調査がない限りまず見つかることはありません。一方で先日、競馬の賭けをビジネスとしている会社がはずれ馬券を費用として認識できるかとの裁判で費用と認定されたのは賭け事がビジネスだからであります。

では青色申告を強化するにはどうするか、ですが、電子申告を強化し、経理ソフトの勘定元帳、明細書を総括表に自動添付出来るようにして、国税側のソフトに連動させ、売り上げと経費の分析が自動的に行われ、異常値が出ればすぐにわかるようにすればよいと思います。かなり前ですが、ファッションホテルと銭湯で売り上げをごまかしていた事業主が摘発されました。どうして売り上げが過少計上だったか判明したかといえば水道代とのバランスが悪い点で判明したのです。当時はまだマニュアルで調べ上げたのだと思いますが、業界の経費水準をビックデータにいれれば管理可能でしょう。

納税に関する知識が日本人は驚くほど低いその一つの理由にサラリーマンの方は納税について何もしなくてよい為、税に対する経験値がないことが大きいでしょう。また、納税=経理という連想のもと、できない、分からない、やらないを決め込んでいる人も多いではないでしょうか?カナダの様に全員が確定申告するようになると税に対する認識は高まり、底上げ効果はあるのですがこれははかない期待かもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人 6月4日付より