ギリシャの余計な危機

ギリシャは、IMFとEUそして各国政府から融資を受けているが、その返済が難しくなっている。銀行システムは破綻寸前。預金者が預金封鎖や銀行破綻、ユーロ離脱を恐れて、預金の引き出しに走っている。

こうなったら、経済は終わりだ。銀行を封鎖して、金融破綻からの経済崩壊を防止するために、一旦動きを止めるしかない。自給自足に近い経済に戻し、金融システムの再建のめどが立つまで、経済活動を止め、待ち続けるしかない。

なぜ、こんなことになってしまったか。理由はただ一つ。債権者の言うことを聞かなかったからである。お金を借りているときに、するべきことはただ一つ。返済条件を守り、守れないときは債権者の言うことを聞くこと。それだけだし、それ以外に選択肢はない。

ギリシャは、一度デフォルトしており、過去の国債は元本を大幅に削減して返済するリスケジュールが行われた。その再建策でも返済が難しくなり、今回、二度目の破綻を迎えようとしている。

一度目の破綻では、欧州金融市場全体への不安の波及、欧州銀行システム全体への波及が懸念された。ギリシャからポルトガル、スペイン、イタリアといけば欧州金融システムは破綻、欧州経済はどん底へ落ち込むからだ。したがって、何としても救済しなければならなかった。しかし、現在は、民間銀行セクターは債権者ではなく、また他国への波及も懸念されず、精神的な準備もなされているから、欧州にとって怖いことはない。ユーロ離脱となれば、ユーロという通貨の脆弱性が示されることになる、という恐れが一部にあるが、これは杞憂である。

なぜなら、第一に、ギリシャがユーロから離脱することはできないからである。離脱した瞬間に、実体経済も崩壊してしまう。エネルギー資源も食料も輸入できなくなるだろう。第二に、間違って離脱してしまえば、そのように経済は本当に破綻してしまうから、むしろ、ユーロの強さ、強い通貨で守られていることの価値が、誰にでも、どの国にもわかって、誰もユーロから離脱したくない、とますます思うはずだからだ。これは、リーマン破綻後の危機でハンガリーなどが体験済みで、皆知っていたことだし、ギリシャもチプラス首相もわかっていることで、彼は、借金は返さないと言っているが、ユーロには残ると言っているぐらいだ。

したがって、ギリシャの脅しというよりは、乳幼児のような泣き叫びも、遠吠えも、欧州は相手にせず、借金を負けることも、債務削減要求をのむこともしない。しかも、チプラス首相のように態度が悪ければ、感情的にも誰も支持しなくなってしまう。お情けすらかける気が失せてしまうからだ。もちろん、まっとうな、譲歩しない強い理由がある。ギリシャに財政再建について甘い条件で救済してしまえば、ユーロ圏の他の国への悪い、甘やかす前例になってしまうことを恐れているからだ。したがって、ここでは欧州は一歩も譲らない。だから、ギリシャは、黙って欧州の言うことを聞くしかないのだ。債権者の言うことを聞かなくては債権の再建はできない。