支持率が下がった安倍首相の次の打ち手

いま内閣支持率はどんどん低下して行っており、安倍政権が今後どれほど持つかにつき内外より不安視する声すら出始めています。


先週金曜日から3日間実施されたNHKの世論調査では、『安倍内閣を「支持する」と答えた人は、先月より4ポイント下がって37%、「支持しない」と答えた人は、3ポイント上がって46%』との結果が出たようです。

自民党の二階俊博総務会長は御自身の派閥研修会で今月9日、「派閥は一致団結して行動してこそ、力を発揮できる。われわれのグループは全員一致して、安倍氏を次期総裁選に推薦する」と明言されたと報じられます。

そしてその翌日、同派会長代行の河村建夫衆議院議員が国会内で「安倍総理大臣と会い(中略)二階派のメンバー35人の署名を連ねた推薦書などを手渡」されたようで、「首相の出身派閥である細田派以外の派閥が総裁選で首相支持を決めたのは初めて」とのことです。

今この二階さんと言いますと自民党総務会長という御立場ですが、私はある意味党内最大の実力者かもしれないと見ています。翌月の総裁選で「安倍首相の無投票再選」が既定路線と言われてきましたが、その二階さんが早々そうした宣言をされたのは、安倍内閣の支持率が大幅に下がる中「ポスト安倍」に名乗りを上げ、選挙をしようというような動きをしている輩もいるということかもしれません。

今月9日投開票された埼玉県知事選にあっても、現職の上田清司さんが「維新の党からの支持のほか、民主党県連、県内約9割の首長、経済団体など幅広い支援を受け、終始優位に戦いを進め(中略)、大差で多選批判を退け」ました。

勿論、前回選で上田さんを支持した自民党県連は今回告示まで1か月を切って後の対抗馬擁立でしたから「出馬表明の遅れが響き、浸透し切れなかった」ということもあるでしょうし、上田さんが知事在任期間を通して大変な実績を上げられた強過ぎる相手だということもあり、自民党は「麻生副総理や石破地方創生相、高市総務相ら現職閣僚が応援に入った」にも拘らず大惨敗を喫したわけです。

上記した通り次の総裁選を巡っての自民党内の蠢き、あるいは地方選挙で表面化したシビアな現実より、いま安倍政権は決して安泰な状況ではないと思われます。そしてこれから後、憲法違反の安保法制や合意間近のTPP問題等で以て、内閣支持率は恐らく3割を大きく切ってくる可能性もありましょう。

そうした状況を見据える中で二階さんとしては此のタイミングで名乗りを上げ、余りじたばたせぬよう早くに手を打ったということだろうと思います。党内屈指の実力者がそうした形での動きを見せたがため、安倍政権は比較的安泰に向かう可能性もあるだろうと思います(但し、首相の持病がストレスでぶり返すリスクは一つ気掛かりではありますが…)。

先月16日に安保法案の衆院通過を見て後また一段追い詰められた安倍首相としては、何らか起死回生の手を考えねばいかんとは当然ながら思っていましょう。言ってみればその一つが「北朝鮮による日本人拉致問題」であり、安倍首相の「電撃訪朝」観測も一部流れる中で、その解決前進を試みての支持率上昇を考えているかもしれません。

それからもう一つは未だ以て日露間で抱えている「北方四島領土問題」につき、エリツィン時代にある程度合意を見た「2島返還2島交渉継続」という戦略の下で取り敢えずの決着を見、次のステップに進んで行くといった類での支持率アップを考えているのかもしれません。

何れにしろ歴史に遡ってみれば支持率の問題が生じ始めたらば、どの国の如何なる政権であってもその解決の一端を国外に求めるよう取り組んでいるわけで、安倍首相も現在そうした志向を有しているのではと私は推測しています。

BLOG:北尾吉孝日記
Twitter:北尾吉孝 (@yoshitaka_kitao)
facebook:北尾吉孝(SBIホールディングス)