高速道路が墓場となった --- 長谷川 良

2015年08月30日 11:51

オーストリア東部のブルゲンラント州で27日、高速道路(A4)の路肩に駐車していた小型冷凍トラック車の中から71人の遺体(子供4人、女性8人、男性59人)が発見された。多くの遺体は窒息死と受け取られ、死亡時期は26日前。不法移民あっせん業者がハンガリー経由で移民たちを運んでいた途上、車のタイヤがパンクしたため、車を残して行方をくらましていた。

Schlepper Route
▲北アフリカ・中東から欧州に入る移民・難民ルート(オーストリア連邦犯罪局「移民あっせん業者報告書」から)

ブルゲンランド州警察当局は28日、4人の不法移民あっせん業者(Schlepper)がハンガリーで逮捕されたことを明らかにした。1人はレバノン出身のブルガリア人、他の2人はブルガリア人とハンガリーの国籍を有するアフガニスタン人だという。警察側は遺体の身元確認に乗りだしているが、シリア旅券が見つかったこともあって、「多くはシリア難民」と見られるが、完全に身元が分かるまでには時間がかかるものとみられている。

多数の移民の遺体が高速道路の路肩に駐車していた冷凍トラック車内から見つかったというニュースはオーストリア国民に大きな衝撃を与えている。国営放送や民間放送は移民対策や移民あっせん業者問題に関する特集番組を流している。

イタリア最南端の島ランペドゥーザ島沖で2013年10月3日、難民545人がボートに乗り、波の荒い秋の海をリビアのミスラタ海岸からスタートし、約140キロ先のランぺドゥーザ島を目指したが、途中乗った船が火災を起こし沈没し、360人が犠牲となった時、「地中海が墓場となった」と表現したマルタのジョセフ・ムスカット首相の発言(「地中海が墓場になる!」2013年10月17日)に倣い、同国高級紙プレッセは28日付社説で「わが国の高速道路上で多くの移民の遺体が発見された。高速道路が墓場となった」と指摘し、嘆いていたほどだ。

ミクルライトナー内相は今回の出来事を深刻に受け取り、不法移民あっせん業者の取り締まりを強化する5点計画の早急な実施を表明している。具体的には、①ハンガリーからの国際列車の徹底的な監視(ハンガリー領土内で)、②国境線のコントロール強化、③連邦犯罪局内の不法移民あっせん業者担当官の増強、④不法移民あっせん業者への刑罰強化、⑤移民あっせん業犯罪を専門とする検察官の設置、等の5点だ。

内相は、「移民あっせんをするプロ業者は犯罪者だ。彼らは移民の運命などに関心をもっていない。如何に多くの利益を獲得するかだけが最大関心事だ。わが国は同犯罪に対してこれまでも厳しく対応してきたが、今後はもっと強化しなければならない。セルビアとハンガリー国境線に対するオーストリアとハンガリーの連携は重要なステップだが、わが国は自国の国境警備も強化しなけれならない。また、司法省との連携が大切だ」と述べている。

オーストリア連邦犯罪局(BK)の犯罪統計によると、同国では今年に入ってこれまで起訴された不法移民あっせん業者数は457人だ。今年はまだ4カ月余りを残した段階で昨年1年間の511人に迫っている。同業者の国別によると、昨年はハンガリー人64人でトップ、それを追ってセルビア人56人、シリア人34人、コソボ人34人、ルーマニア32人、ドイツ人32人だ。

今年7月末までに欧州に入った移民・難民は約34万人で前年同期比の3倍増だ。移民ルートとして海路(地中海)と陸路(バルカン・ルート)の2通りがあるが、北アフリカ・中東地域からボートや小型船でイタリア最南端の島ランペドゥーザ島沖に殺到している一方、ギリシャのレスボス島など離島にも難民が押し寄せている。その一方、トルコ経由などでバルカン・ルート経由で欧州入りをする移民が増えてきている。

「今回のシリア人難民は故郷を追われ、長い道のりを子供を抱えながら歩き、砂漠を超え、空腹を我慢しながら山や川を渡り、欧州の地にやっと到着、欧州でも最も豊かな国(オーストリア)に通じる高速道路上で車の中で窒息死した。このような悲劇を繰り返してはならない。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は紛争地で事務所を開設し、そこで難民審査を実施し、ジュネーブの難民条項に合致した難民を空路で安全に欧州に運ぶようにすべきだ。これこそ不法移民あっせん業者への最強の対策だ」という声が難民救済に従事する人々の間から出ている。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年8月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑