「与野党の攻防」って本当なの?

2015年09月18日 07:00

よい子のみなさん、どうも新田です。売上低迷で来月末は家計が存立危機事態です。
ところで、ここ最近、国会が安保法案(安全保障関連法案)の審議でもめています。国会の外では連日、法案に反対する人たちが集結してデモを行っており、昨日の参議院では、特別委員会で与野党の議員が乱闘する様子がニュースで流れていました。NHKをはじめ、マスコミでは、「与野党がぎりぎりの攻防を演じている」といった表現で報じていますが、これは本当のことなのでしょうか。


※ネット上で話題沸騰のNHK中継の国会乱闘
150918安保
■多数決で与党が勝つのは当たり前
池田先生がツイッターでも指摘したように、実は「ぎりぎり」でもなんでもなく結果は見えています。

なぜなら、現在の日本の政治の仕組みでは、私たちが選挙で選んだ国会議員が法案を話し合って、最後は多数決で正式な法律として定めるからです。近年の選挙、つまり2010年の参院選、12年の衆院選、13年の参院選、14年の衆院選を経て、自民党と公明党が最大の勢力となりました。選挙で勝った政党は与党となり、次の選挙までの間、国民から政権を託されます。

一応、法案の問題点や課題について、選挙で負けた方の野党から指摘を受けて修正することはたまにあるものの、多数決になったら、与党が勝つのは当たり前です。それは選挙が終わった時点で明らかです。野党の民主党が「安保法案は廃案」と訴えたり、デモに参加しているSEALDsという大学生たちが「安倍政権は退陣しろ」と叫んだりしたところで、政治的には何の効力もありません。彼らが自分たちの主張を通したいのであれば、大阪市の橋下徹市長が忠告しているように、選挙で勝つしかないのです。

■記者が「ぎりぎりの攻防」と書く理由
それなのに、マスコミはなぜ「ぎりぎりの攻防」といった表現を使うのでしょうか。マスコミの中には朝日新聞や毎日新聞、TBSやテレビ朝日のように法案に反対または慎重な考え方をしている会社があります。彼らにとっては、安保法案が野党が抵抗して国会が乱闘したり、デモが盛り上がったりすることで、政権与党が動揺や配慮をして少しでも多数決を取るのを遅らせて、国会が盛り上がっているようにしないと、読者や視聴者の期待に応えられないのです。もちろん、朝日新聞の記者になるような人たちは東大などの一流大学を出た優秀な人たちなので、時間稼ぎでしかないことは当然わかっているはずですが、会社の偉い人たちから「角度をつける」、つまり、会社の思うような方向に世の中の空気を持っていくような報道をするように命令されているので、もし従わないと田舎の支局や記者以外の営業などの部署に飛ばされてしまう可能性があります。

良い子のみなさんは、日本の選挙で近年、民主党と自民党の間で政権が交代してきたのをニュースで見てきたと思いますが、日本では1955年から2009年の間、一時的な例外をのぞいて自民党を中心にした政権がずっと続いてきました。昔の野党、たとえば社会党は政権を取れるとは本気で思っていないので、「国対政治」といって与党と野党のボスキャラの政治家が国会ではなく、夜の赤坂の料亭で話し合いをしていました。これは、昼の国会で与党が法案を通すのを渋々認める代わりに、野党のメンツが立つように法案を一部修正したり、時には筋書き通りに乱闘を行ったりする“取引”がされていました。与野党でこういう馴れ合いが長く続いていたので、当然、政治の世界を取材する記者さんたちも緊張感がなく、そういう茶番劇を知っていながら、むしろ表の筋書き通りに国会が盛り上がるように報道していました。

■いつまで“言葉遊び”ができるのか?
日本の政治は近年こそ政権交代が行われるようにはなりましたが、報道する側の会社は、政権交代がありえなかった昔の文化が根強く残っています。「ぎりぎりの攻防」などという茶番劇の表現をするのは、ある種の伝統芸のようなものでしょう。歌舞伎界では、3代目市川猿之助さん(現・2代目市川猿翁)が80年代に古典芸能の殻を破ったスーパー歌舞伎を始め、18代目中村勘三郎さん(故人)も90年代に現代音楽と融合したコクーン歌舞伎に挑戦するなど、伝統と革新を融合する動きがありましたが、日本の政治報道が変わるには、記者の世代交代がもう少し進む必要があります。

※数の上ではシニア層が目立った国会前のデモ現場(16日夜)
安保反対デモ
なによりも、安保法制を戦争法制と言い換え、ありもしない徴兵制反対を声高に叫ぶ昔の学生運動崩れのおじいさん、おばあさんたちが年老いて老人ホームに入ったり、亡くなったりしてデモに参加する人が減ってくれば、読者ニーズも変化します。その頃には、日本の財政や年金制度が破たんする危機が現実味を帯びているので、記者も読者も「ぎりぎりの攻防」などと言葉遊びを楽しんでいる余裕はありません。むしろ世代間の格差を巡る攻防こそがガチンコ状態でしょう。

それにしても、国会前のデモをしている人たちは大きな勘違いをしています。戦争を仕掛ける危険があるのは安倍首相ではなく、中国や北朝鮮です。国会前より六本木の中国大使館前で抗議したほうが意義があるはずなのですが、なぜか国会前で自分たちの国の首相をdisり続けています。橋下さんに「選挙で勝たないと意味がない」とたしなめられても、デモに参加しているおじいさん、おばあさんたちは、選挙に本気で参加して人に頭を下げたり、ビラを配ったりして辛い思いをするよりも、国会前で叫んでいるほうがストレス解消になるし楽しいのです。よい子の皆さんは、こんな無責任な大人にならないように、書を読み、友と語らい、自分の頭で現実の問題を考えられる人になりましょう。ではでは。

新田 哲史
ソーシャルアナリスト/企業広報アドバイザー
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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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