どうするシャープ

シャープの経営についてはこのブログで折をみて取り上げてきました。もう書くことはないだろうと思わせないのがこの会社の特徴で、突っ込みどころが実に多い会社であります。ここにきて再び動きが出てきましたのでアップデートしていきたいと思います。

まず、4-9月の半期決算見込みですが、日経によると当初の100億円の黒字見込みから300億円程度の赤字に転落するだろうと予想されています。まだ9月が終わっていないのでこの数字は当然動く可能性が高いのですが、厳しい数字になるのは間違いないでしょう。通期の営業損益ベースで同社は800億円の黒字を達成することが銀行団との「握り」になっています。

銀行と「杯」を交わしたわけですから800億黒字が達成できないという言葉は絶対にありえないのであります。(日本の銀行は本当に怖いですから。)要するに本業で稼げないのなら持てる資産を売却させ、会社を解体しようが、骨抜きにしようが貸した金を回収することに全力投球します。この時期に本社売却に始まる固定資産の流動化は3月までに目標が達成できない可能性が既に想定されており、不動産市況が比較的良好な今、処分に走る、という流れかと思います。

分社化して部門ごとの流動性を高めるというプランも銀行の思うつぼだったのですが、その中で現時点で価値的にボリュームがある液晶事業の行方に注目が集まっています。

液晶を通じた事業も半期ベースの予想では黒字化確保が難しいと見込まれています。理由は中国市場のスマホ向け中小液晶が競争激化と伸び悩みとなっているためであります。そのため、液晶事業は売却ないし、第三者との合弁が検討されています。その相手が台湾の鴻海精密工業か日本の産業革新機構であります。鴻海ならばアップルとの連携が取りやすくなる半面、技術の海外流出などが懸念されます。一方、産業革新機構はジャパンディスプレーとの関係がありますので独禁法に引っかかる可能性がないとは言い切れません。

どちらも一長一短ですが、今のところ鴻海側のディールを進めているように見えます。

同社の液晶部門ですが昨年と今年の第一四半期の数字で見ると昨年は21億の利益を計上していたのですが、今年は137億の赤字に転落していることが非常に大きく響いています。ただ、それ以外もセグメント別でみてもわずかな黒字部門とその額に対して多額の赤字部門が目につくというアンバランスさとなっており、会社の組織がもはや維持できていないように見受けられます。

既に3500人規模の希望退職募集に対してほぼ集まりつつあるとされる中で組織を切り刻んだ経営によりシャープの原型はほぼとどめない状態になりつつあるのではないでしょうか?よって同社の場合、液晶部門の売却なり合弁なりが決定した時点で残り部門の再生にどう取り組むか、これにかかってきます。

個人的には清算会社との分離を行い、その時点で現経営陣は退任し、社員がフレッシュな気持ちで再度チャレンジする風土を作らざるを得ない気がします。同社の経営再建に伴うごたごたは長すぎ、社員は完全に疲弊状態であります。つまり、シャープの再建は社員のやる気の起こさせ方にかかっているとみてよいでしょう。負のサイクルの主である高橋社長が16年3月までにそこまでリストラクチャリングすれば一旦は会社規模は小さくなりますが、やり直しの道筋を立てることは可能だろうと思います。

経営再建中の企業における社員のマインドが如何に下がっているか、それはそういう組織にいた人ではないと分からないでしょう。個人ベースで頑張ろうとしても周りがネガティブモードだともはや立ち直れなくなってしまうのです。そういう意味でそこまで壊してしまった経営者の責任はやはり相当重いと言わざるを得ないでしょう。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 9月28日付より