大統領たちが恐れた男ーFBI長官E・フーバー

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FBIは真珠湾攻撃を知っていた?
ルーズベルトは真珠湾攻撃を事前に知りながら、米国を戦争に引き込むためにわざとやらせたという陰謀説が根強く囁かれているが、ここに書いであるのは、FBIが、日本は真珠湾を攻撃対象としていることを知る機会を得ながら、この情報をドイツ側の謀略として握りつぶしてしまった、勿論ホワイトハウスにも伝えなかったというもので、ルーズベルト陰謀説に加担するものでない。
FBIがこの情報を適切に処理していれば、真珠湾であれほどの損害を被ることはなかったと言っている。

1974年第二次大戦中二重スパイをはたらいたドゥサン・ポポフというユーゴスラビア人の自伝が出版された。
彼は最初ドイツ軍諜報機関「アブヴェール」に属し中立国ポルトガルのリスボンを拠点に活動し、後反ナチスの信条に基き同志であるドイツ人のイェプセンと共にイギリス諜報機関のために二重スパイとなる。ドイツ側の真実の情報を英国にもたらし、英国の偽情報をドイツにつかませるのが彼の任務。

イェプセンから日本がタラント空襲の詳細をほしがっていると聞かされた。
更にドイツ側上司フォン・アウエンローデからアメリカで収集すべき情報のリストを渡された。それは真珠湾に関するものが中心であった。真珠湾の弾薬と機雷の貯蔵庫、燃料タンク、格納庫、潜水艦基地、錨泊地の位置等。これが指し示すのは日本軍がハワイ真珠湾空襲を企てているとしか考えられない。

ポポフが属するイギリスのMI6は直ちにアメリカにつたえるように指示。
その結果真珠湾攻撃のおよそ4ヶ月前1941年8月12日ポポフは米国へ渡る。
ニューヨークでFBIニューヨーク支局長フォックスワースと会った。だがフォックスワースはポポフをドイツ側のスパイと疑いまともに取り合わなかった。
9月末にはポポフは、ニューヨークでFBI長官フーバーに会う。以下引用

ポポフの記憶によればエドガーは嫌悪の表情を浮かべてポポフを睨みつけるといきなり怒鳴ったり喚いたりし始めた。怒りで顔を真赤にしたフーバーは、ポポフを「偽スパイ」と決め付け、ニューヨークに着いて以来有用なことを何一つしていないと罵った。
又ポポフが女性をフロリダに連れて行ったことや映画女優の尻を追いかけ回したことや生活全般が贅沢すぎると勢い込んで非難し、長広舌をふるった。
以上引用
この自伝の内容はFBIの名誉を傷つけるため、公表されたFBIの記録にないが、その信憑性はイギリス側資料で立証できる。

この本を離れる。
私もわざと真珠湾攻撃をやらせたというルーズベルト陰謀説は成り立たないと思う。
その理由
一、ルーズベルトが先に日本に戦端を開かせる必要があると考えたのは確かだが、あれほどの損害を被る必要はなかった。陰謀論者は真珠湾攻撃を知って空母を逃がしたと主張する。ではなぜ戦艦、巡洋艦、駆逐艦、地上基地の航空機を逃さなかったのか。
山本五十六は戦艦を時代後れと見ていたようだが、それは日本海海戦型の艦隊決戦を想定するからであって地上基地を攻撃する動く要塞としての威力は絶大であった。それはサイパン戦、硫黄島戦、沖縄戦等で実証された。

一、真珠湾攻撃のような重要情報をルーズベルト一人で抱え込めるはずがない。この情報の処理には何人もの「共犯者」を必要とする。多くの関係者が70年以上も秘密を保てるだろうか。

一、これまで幾つかルーズベルト陰謀説を立証したとする本が出たけれど全てイカサマ、特にひどいのは「真珠湾の真実(R・Bスティネット)」

一、もしルーズベルトが知っていれば、空母艦載機がなくても日本機動部隊に匹敵する航空機は地上基地にあったから、事前に空中に退避させ待ち伏せすれば、日本側航空隊は大損害を被ったであろうし、潜水艦で日本機動部隊に大損害を与えることができたはず。そうすればミッドウェイを待つことなく米国は初戦で大勝利を挙げることができたであろう。米国の領土領海を侵犯した日本軍に反撃するのに遠慮はいらない。開戦理由としても十分だ。

但しそのことは、ルーズベルトというより米国首脳に、日本政府がいわゆるハル・ノートを最後通牒とみなし、先に開戦することについて確信があったことを否定するものではない。国務長官ハルがハル・ノートを日本側に手交した後、海軍長官ノックスに「私のしごとは終わった。後は君の仕事だ」と言ったことからも裏付けられる。
だが日本の最初の攻撃対象はフィリピンという考えが米軍首脳の間では当時支配的であった。実際にフィリピンも攻撃対象になっていた。真珠湾より遅れたのは気象条件が悪かったため。

青木亮

英語中国語翻訳者