地方創生レビュー第3回 地方創生は未来学から始まる

未来学(futurology)という言葉を聞いたことがあるだろうか?
「歴史上の状況を踏まえて未来での物事がどう変わっていくかを詳細に調査・推論する学問分野」(wikipediaより)であり、未来研究をする学問といえばイメージがつかめるだろうか。最近、地方創生に未来学の視点がかけているのではないか、とつくづく感じる。

地方創生について各自治体は地方版総合戦略(いわゆる地方創生戦略)を策定中である。今回の地方創生戦略には、今後の人口予測と取り組む事業など将来を見越した内容を明記している。しかし、この戦略には未来学の観点から2つの問題を孕んでいる。


第一に、社会がどう変化するのか、未来予測をしていない。既存の社会システムを前提で考えられており(それは仕方ないが)、将来こうしたことが起きそうだなどの言及がほとんどない。先端技術などの動向などを踏まえ、自分たちの自治体は想定される予算規模でどうなるのかが検討されていないのだ。
グーグルの自動走行車、タクシー配車システムのuber、ロボット、自動翻訳機など世の中の技術進化は日進月歩。ウエアラブル・デバイス、ビッグデータ、遺伝子組換など、こうした技術が社会を、人間を変えていく。恐ろしいスピードで。こうした先進技術がどう社会に影響を及ぼすのか。それに対して完璧で適切な予測はできなくても、どういったことが起きそうだろう、そのときどうすればいいか?と考えることが大事だ。そんな難しいことではない。企業の先端研究所での研究開発、東大などの先端技術研究所の活動をウオッチしていればいいのだ。

第二に、10、20年後の最悪のシナリオを考えたか、という点だ。過疎自治体の住民のみなさん薄々気づいているはずだのだ。今後やばい、と。しかし、「人口・・万人が目標」と設定する戦略が策定され、住民のパブリックコメント数は10を超えない。一方、漠然とした不安はあるが、なかなか地域内で正直に向き合おうとする活動が行われない自治体もある。

そもそも、市役所、町・村役場ですらそうなのだ。中には役所や役場が地域で一番の「大企業」である自治体もある。

だからこそ
・10、20年後の社会はどうなるのか?インフラ・道路・山や森林の状態は?
・予測される予算規模において、どれだけの事務事業が行えるのか?
・10、20年後の各施策や事務事業にどんな影響(対住民)が及ぼされるのか?
・そして、上記の状況で市民満足度はどこまで変化するのか?
など一度予測して、役所・役場内で、そして住民と共有してみるといい。今の仕事のやり方ではダメだ、と皆が感じるだろう。そう既存の施策や事務事業の改革改善にも役立つ。

今回の地方創生。過去のある時点において、未来を予測して先んじて取り組んできたところが今の「成功例」「先進自治体」となっている。
地域の価値や独自性が問われる中、そして地域間の競争が激化する中、の今更先進事例の視察や事例調査に執心してもあまり意味がないのは言うまでもない。

先史以来、存在している「まち」は何か理由があって今まで続いてきたはずだ。
我々の先人たちは時には苦しい時もあっただろう。過去の先人が頑張ってくれたことに思いを寄せ、将来への責任を感じ、語り合うべきときは「今でしょ」。

上記かなり偉そうなことを言ったが、「あの時の地方創生改革があるからこそ今がある」と思えるような取り組みを地域に期待したい。

西村健:未来学者、NPO法人日本公共利益研究所代表