「くたばれGDP」は中国にこそふさわしい

2015年11月05日 10:01

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先日閉幕した五中全会で向こう五年間の重要な政策はGDP6.5%と一人っ子政策の修正
先ずGDP成長率目標6.5%
これは雇用確保のためというより「小康社会(多少ゆとりのある社会)」実現のためであり、2020年の対2010年比GDP2倍目標から逆算したものだろう(但し平均6.5%では2倍に届かない)。労働人口が減り続けている今雇用は中国の差し迫った課題ではない。

ところで日本が高度成長の終期「くたばれGDP」という言葉が流行ったことがある。GDPが増すことは国民の幸福度を増すとは限らないという認識が深まったことが背景にある。あの頃挙げられた例に次のものがある。
蚊がない国で、わざと蚊を繁殖させれば蚊取り線香が売れてGDP増加に寄与するが、国民の幸福度はむしろ下がる。

最近の例をあげれば、
横浜の欠陥マンションは、立替計画もあるようだが、もし実現すればその分GDPは増えるだろう。だがそれで誰がハッピーになれる?

中国について言えば、大気汚染で呼吸器系疾患が増えれば、医療費が増加しGDPは増える。だが国民の幸福度は低下する。

中国の富裕層には海外移住指向が強い。これには言論の自由がない、不自由なネット空間等政治的理由もあるが、GDPの増加にも関わらず(というよりもGDPが増加したからというべきか)中国の環境等生活環境が劣悪であることが大きい。大気汚染は広く報道されているが、水問題の深刻さは質量ともそれに劣らない(拙文「南水北調計画は華北の水不足を解決できるか?」を参照)。日本の下水処理した水の質が中国の上水と余り変わらない。

GDPで国民の幸福度が分からないのは当然だ。GDPはフローであって数字の内実を問わないし、生活水準を左右するストックを表すものではないからだ。

日本はこの20年以上GDPはほとんど成長していないが、悪い話ばかりではない。この間大気と河川は随分きれいになったし、車の渋滞も減った。とはいうものの「くたばれGDP」と言えた時代が無性になつかしい。

中国が6.5%にこだわり潜在成長率を無視して景気対策を行えば、2008年4兆元の景気対策の失敗を繰り返すことになる。あの政策の後遺症で、地方政府は財政赤字に苦しみ、銀行は多額の不良債権を抱え込むことになった。ゴーストタウンはその象徴である。
GDPを無理に(潜在成長率を超えて)増加させようとする政策が何故ダメなのかは、日本の経験が教えてくれる。
この20年以上歴代政府は中国政府と違って正面からGDPの数値を目標にすることはなかったが、景気対策と称して毎年莫大な公共投資を行った。何とかの一つ覚えで不況期のケインズ政策というわけだ。ところが景気対策としての効果はあまりなく、財政赤字の増大という副作用ばかり目立つようになった。そして財政赤字は、将来の増税、社会保障費の削減を予想させるために、消費者は支出を控えるようになる。つまり財政赤字は長期的な経済成長を抑制する効果がある。
安倍首相が突如「一億総活躍社会」と言い出したが、私には「いずれ年金支給開始年齢が80歳になるまでそれまで働いてくださいね」に聞こえた。

中国のGDP数値が当てにならないことは確かだが、水増し部分だけを強調するのはフェアではない。地下金融が支える地下経済等統計に表れない数値も勘案する必要がある。
李克強指数(貨物輸送量、電力消費量、銀行貸出残高)も今となっては製造業、鉱工業に偏り過ぎているのでGDPに代替することは不可能だ。

最近中国の輸入額が激減したのを見て「GDPはマイナスではないか」とおっしゃった評論家もいたが、それは世界的な資源価格の下落によるところが大きく輸入数量自体は金額ほど減っていない。

中国の一人当り所得は2014年推定で7500ドル(為替レートが関係するので多少幅をもたせるべきだろう)、1万ドルには及ばないが既に中進国の罠に入りつつあるかのようだ。

中国がGDPのために無駄な公共事業を行い、ゴーストタウンを作るのは日本が知ったことではないが、企業が過大な設備投資を行うとなると対岸の火事では済まない。例えば中国の鉄鋼メーカーが稼働率を維持するため世界中でダンピングに走っているせいで日本鉄鋼業の収益は悪化している。

一人っ子政策の修正
五中全会で決まったもう一つの重要政策は、一人っ子政策の修正だ。二人までOKとなったが大した効果があるとは思えない。2013年の緩和でも顕著な出生数の増加は見られなかったからだ。
中国でも今世紀に入ってから大学進学率の上昇はすさまじく今や3割に近い。そのため育児と教育費が大きな負担となっていることが出産の制約要因である。都市人口の増加に伴いこの傾向は一層強まるだろう。その上出生数の増加が労働人口の増加となって表れるのには20年以上かかる。

そもそも一人っ子政策も又毛沢東の政策の失敗と関係がある。毛沢東はマルサス先生のご託宣も何のその「人口は多ければ多いほどいい」という奇説を唱え「産めよ増やせよ」の号令を発したので50年代から60年代にかけて人口は爆発的に増加した(大躍進の時期を除く)。
これは毛沢東の「人は、口は1つしかないが手は2本ある(だから人は消費する以上に生産できるはずだ)」という深遠な(?)「人口理論」に基づく。

青木亮

英語中国語翻訳者

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