自民党議員のエネルギー観とは?滝波参議院議員に聞く

2015年11月27日 00:39

石井孝明
ジャーナリスト

エネルギーをめぐるさまざまな意見が、福島原発事故の後で社会にあふれた。政治の場では、自民党が原子力の活用と漸減を訴える以外は、各政党は原則として脱原発を主張している。

しかし、政党から離れて見ると、各議員のエネルギーをめぐる意見は、それぞれの政治観、世界観によってまちまちだ。1人1人の議員は、それぞれの地域の選挙民の付託を受け選出された人物であり、見識の高い人ばかりだ。

自民党の議員は何を考えているのか。全体像ではなく1人の議員にフォーカスをあてて紹介したい。そこで自由民主党の滝波宏文参議院議員(福井県選挙区)を選んだ。滝波議員はエネルギー・原子力問題を議員活動の柱とする自民党若手のホープ。日本再興の志から政治の世界に飛び込んだという。

ここで示されるのは滝波氏の個人の見解だが、そこには「問題の解決策を決められない日本の意思決定の問題」「原発立地地域の人々の感情」など、重要な問題がある。インタビューを読み物として、まとめた。

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滝波議員、ホームページより。

「歴史の検証に耐えうる政策」

「原子力規制委員会の行動には効率性、明瞭性が見えません。米国の制度を参考にしたのに姿がまったく違う」。昨年11月の参議院経済産業委員会で、滝波宏文議員は田中俊一規制委委員長に迫った。田中氏は弁解を重ねたが、ようやく「効率性に配慮する」という言質を引き出した。

滝波議員は参議院の原子力問題特別委員会や経済産業委員会での適切な質問でエネルギー関係者の注目を集める。特に規制を担当する原子力規制委員会は事業者との適切なコミュニケーションがなく、当局の意図が明確に伝わらない。そのために滝波議員の質問を多くのエネルギー関係者が参考にする。

また自民党の原子力規制に関するプロジェクトチーム、さらに電力安定供給推進議員連盟でも、滝波議員は積極的に発言し、規制の正常化を求める意見の取りまとめに参加した。

「東京電力福島第1原発事故の後の2013年に初当選したことは巡り合わせと思います。合理的かつ現実的な『歴史の検証に耐えうる政策』づくりに、エネルギーでかかわりたい。これが原子力の立地県である福井から、私の議員としての役割の一つです」。物静かで知的な物腰だが、言葉からは決意が伝わる。

なぜ日本で適切な決定ができないか

滝波議員は財務省で期待された俊英だった。ところが大蔵省に入省後、同省への官僚バッシング、不祥事、財務省への改編と金融行政の分離などの激変に直面した。

同時期の日本政府は、政策面でも不良債権処理の遅れと金融危機の深刻化、そして財政赤字の拡大と不手際を重ねた。財務省は、その現実に押し流され、政策の失敗に追い込まれてしまう。

滝波氏は2009年から11年まで米スタンフォード大学の客員研究員として日米の金融危機の対応の差を調査した。米国は日本の対応の先延ばし、それによる不良債権問題の長期化を研究していた。そこから日本を反面教師として、米国は2008年のリーマンショックの時に、公的資金を早期に投入して、金融機関を救済した。公的資金投入は不人気な政策であるが、それを実行したことで、米国の金融システムの傷は浅く、経済は比較的早く立ち直った。滝波氏には米国の政策決定のスピードの素早さが印象に残ったという。(滝波氏の共著論文 “The Politics of Financial Crisis Response in Japan and the United States” PHILLIP Y. LIPSCY, HIROFUMI TAKINAMI )

「政策の決定では口当たりのいいもの、人気を集めるものに関心が集まりがちです。ところが、それが後で頻繁に問題を引き起こします。日本の〝失われた20年〟もそれが一因でした」。財務省の人々が唱えた正論が政策にならなかった面もあったという。

またスタンフォード大学は近くにあるIT産業の集積地であるシリコンバレーに知と人材を供給する。シリコンバレーは大都市ではない。またヤフー、グーグル、アップルなどのIT界の巨人企業は、大都市に本社がない。社員は生活・労働環境のよい、自然豊かな環境で働いている。

「地域の持つ力を連携させ、地方が世界とつながることで、活路を見つけることはできないか」。滝波氏が米国の例を紹介し、アイデアを福井県の人々に伝えると、話を聞きたいと、財界から地域コミュニティなど、さまざまな場に講演で呼ばれるようになった。

自民党の強みと凄さは優秀な人材を発掘する努力を重ねることだ。滝波氏の経歴、問題意識を福井の政治家らが注目し、選挙への出馬の話が来た。しかし、議員に当選するまでは難路だった。滝波氏の家系に政治家はいない。しかし、留学、そして官僚生活の中で、日本の問題を高い視点から解決したいという思いが強まっており、政治家への挑戦を選んだという。党の公認を得る前に、退路を断って退官・帰郷した。そして自民党福井県連の推薦枠を得る党内の選挙で勝ち抜き、参議院選挙にも勝って議席を得た。

滝波氏は新人議員ながら自民党で財政再建、女性活躍、整備新幹線の仕事にかかわる。「安倍政権の登場、そしてアベノミクスで『日本が再登場した』と、知日派の米国人が喜んでくれたのが印象的でした。財政という日本経済の爆弾、また少子高齢化の対応策としての働きやすい社会づくりに、政策でかかわれることは、大変うれしいです」という。

ただし今、エネルギー政策の混乱はなかなか解消されない。これについては危機意識を持つ。

「日本の抱えるリスクで、直近で一番大きいのはエネルギー問題ではないでしょうか。原油価格の低下という幸運があっても、電力料金が上昇し、各地で製造業の人々が疲弊しています。

日本は無資源国で他国と遮断された島国です。そして、エネルギーを消費することで経済活動を行う経済大国です。そして、環境と原子力では世界の最先端の技術を持つ企業のある国です。そうした条件があるのに、原子力について、不幸な対立があります。原子力の活用は日本にとって不可欠であり、安全性を確認した原子力発電所を活用するのは当然ではないでしょうか」という、常識的な意見を持つ。

原発立地県の立場を全国に伝える

滝波氏に心配があるという。原子力政策の混乱と長期の原発停止、大消費地の人々の原子力に対する反感に、福井県の人々の間で「報われない思い」が強まっていることだ。

「福井県の人々は原子力のリスクを抱え、それと共存しながら、安定安価な電力の供給に協力してきました。原子力施設は残念ながら不人気です。それを引き受けたのです。都会を始め、電力を使う方に、立地地域への感謝という気持ちがあればと思うのです」。

今後も原発立地地域の立場を、政治の場、そして日本の人々に、議員活動の中で伝える意向だ。

原子力への反感が社会に残り、エネルギー問題は票にならない。「ふるさとの福井は落ち着いた雰囲気があります。ポピュリズムに流れず正論を言う私の考えを支持していただき、政治を続けられます」という。

残念ながら、近年の日本の政治と行政はポピュリズムに右往左往した。その行き着いた先が、自らの組織で政治課題に定見がなく、民意に動揺を続けた民主党政権であろう。

滝波氏はそれに疑問を持ち「歴史の検証に耐えうる政策」をつくろうとする新しいタイプの政治家だ。政治の決断が「混乱」といえる状況の続く、エネルギー・原子力問題をはじめ、行き詰まった諸問題に求められる。

また残念ながら原発の反対、賛成という単純な議論が、エネルギー問題を混乱させたばかりか、立地地域の不信感を高めている。

エネルギーをめぐる今起きつつあるさまざまな問題を乗り越えるには、社会のあらゆる立場の人が原子力に向き合う必要がある。しかし重要な役割を果たすのは政治家であろう。筆者は福島原発の事故後、記者としてエネルギー問題を観察した。そこでは政治が社会の対立調整という重要な役割を果たしてこなかった面があると、残念に思い続けてきた。選挙で選ばれる以上、政治家は不人気な政策には、誰も手を付けなくなってしまうのだ。原子力、エネルギー政策の混乱は、こうした民主主義の陥りがちなポピュリズムに、一つの原因がある。

しかし、滝波議員のように、政治の責任を受け止め、政策を作りだそうとする議員もいる。滝波議員をはじめとして、新しい政治家の奮起に期待したい。

(たきなみ・ひろふみ)1971年福井県生まれ。東京大学法学部卒。94年に大蔵省(現財務省)に入省。98年米シカゴ大学大学院公共政策学科を修了し修士号取得。05年米国公認会計士試験に合格。09年から11年までスタンフォード大学客員研究員。主計局主査、人事企画室長、広報室長、機構業務室長などを経て12年12月に財務省を退官。13年の参議院議員選挙に福井県選挙区から出馬し初当選。

(この原稿はエネルギーフォーラム11月号に掲載されたものを加筆した。転載を許諾いただいた。関係者に感謝を申し上げる。)

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