目的は改革結集か、政党交付金か? --- 選挙ドットコム

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ニコニコ生放送「小沢鋭仁元環境相ら 記者会見 生中継」より

維新の党を離党した小沢鋭仁元環境相ら衆院議員5人が21日、新党「改革結集の会」を結成した。年末年始にはこれまでも多くの新党が作られたが、存在感を発揮することなく消えていったものが多い。新たな年末新党に待ち受ける運命とは――。

21日に「改革結集の会」結成を届出


新党に参加するのは小沢氏のほか、いずれも無所属の小熊慎司、重徳和彦、鈴木義弘、村岡敏英各衆院議員。維新の党執行部による大阪系議員の「排除」に反発して同党を離党したが、「大阪色」が強すぎるとしておおさか維新の会への参加は見送ったメンバーだ。21日付で総務省に新党設立を届け、代表には村岡氏が就いた。

多くの新党が年末年始に結成されるのは、政党交付金が1月1日時点で政党要件を満たしている政党に支払われるためだ。政党交付金を受け取りたいがために、これまでも12月から1月にかけて多くの新党が設立された。

最近の例ではみんなの党を離党した江田憲司衆院議員らが2013年12月に結いの党を結成。同じくみんなの党所属だった松田公太参院議員ら4人は、みんなの党解散を受け、次世代の党からアントニオ猪木氏を迎えて2014年1月に日本を元気にする会を立ち上げた。

2014年末には小沢一郎氏率いる生活の党が衆院選で議席数を4に減らし、政党要件を喪失。12月26日に無所属の山本太郎参院議員を迎えて政党要件を再び満たすとともに、党名を「生活の党と山本太郎となかまたち」に変更した。厳密には新党ではないが、12月末に政党要件をギリギリ満たして再出発したという点では年末新党に近い。

その後、結いの党は日本維新の会と合流して「維新の党」となったが、たった1年で再び分裂することとなったのは周知の通り。所属議員が5人だった元気にする会は最近、離脱者が出て政党要件を喪失。空中分解の危機に立たされている。これまで多く設立された年末新党で、今(2015年12月21日現在)も生き残っているのはこの元気の会だけである。

年末新党が短命の理由(わけ)


年末新党が短命で終わるのは、短い期間で政党要件の「5人」を満たすため、政策を度外視した仲間集めが行われやすいためだ。翌年も政党交付金を受け取るために無所属議員が「年越し政党」を作ることもある。今回の改革結集の会はその様相が強い。

改革結集の会に参加した議員の多くは野党再編を志向しているが、民主党と維新の党を中心とした再編には否定的。将来的に民主党の一部や大阪維新の会などが合流する本格的な保守系野党の結成を思い描くが、すぐには実現できそうにない。そこでまずは小さな党を作って政党交付金を受け取っておき、将来に備えようというわけだ。

一般的な政党であれば政党交付金のうち年間800万~1200万円程度が議員の取り分で、秘書の人件費や事務所の家賃などに充てられる。資金力の弱い議員はこの金がないとまともな事務所運営ができず、選挙準備もままならない。

改革結集の会の結成でひとまず来年は1億円強の政党交付金が支給される見通し。この資金でなんとか食つなぎ、選挙にも備えつつ、野党再編を待とうというわけだ。

政党の粗製乱造は防ぐには


交付金の算定方法が、新党結成のタイミングに影響を与えているというのはおかしな話だ。実際には政府は政党交付金を年4回に分けて配分している。それならば年に4回算定し、毎回配分額を変えればいいではないか。何も難しい計算があるわけではない。

新党結成がいつでもいいということになれば、金目当ての寄せ集め政党を作る必要性も薄れる。政党の粗製乱造は有権者を混乱させ、政治への信頼を低下させるだけだ。

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山本洋一:元日本経済新聞記者
1978年名古屋市出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、日本経済新聞社に入社。政治部、経済部の記者として首相官邸や自民党、外務省、日銀、金融機関などを取材した。2012年に退職し、衆議院議員公設秘書を経て会社役員。地方議会ニュース解説委員なども務める。
ブログ:http://ameblo.jp/yzyoichi/


編集部より:この記事は、選挙ドットコム 2015年12月21日の記事『目的は改革結集か、政党交付金か?駆け込み新党を作り出す、政党交付金の真実』を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は選挙ドットコムをご覧ください。