来年はポーランドが“台風の目”に --- 長谷川 良

2015年12月26日 12:00

ポーランド上院(定数100議席)で24日、憲法裁判所の権限を大幅縮小する改正法案が賛成多数で採決された。58人の上院議員が支持、反対の議員は28人、棄権は1人だった。下院(定数460議席)では22日に採択済みだから、上下両院が憲法裁判所の改革案を支持したことを受け、アンジェイ・ドゥダ大統領が同法案に署名すれば即施行される運びとなる。

右派政党「法と正義」(PiS)が主導するシドゥウォ新政権が提出した同改正案に対し、野党勢力からは、「権力の3権分離の原則を崩壊させ、司法を混乱させる」と言った批判の声が強い。一方、国外からも批判の声が上がってきた。上院の採択前日の23日、欧州委員会がポーランドの右派政権に対し、憲法裁判所の独立性を制限する法案に警告を発している。欧州委員会のフランス・ティマーマンス副委員長(オランダ)はポーランドのヴィトルド・ヴァシチコフスキ外相とズビグニェフ・ジョブロ法相宛ての書簡の中で、「改正案を再審査すべきだ」と要求し、法案施行の延期を求めている。ワルシャワが再考しない場合、ブリュッセルは制裁を施行することも辞さない姿勢を示唆したという。

同国では11月末、新政権は憲法裁判所の5人の裁判官を解雇し、新政権寄りの裁判官を任命済みだ。それに対し、憲法裁判所は今月、新政権の決定は違法と批判している。

欧州連合(EU)理事会議長国ルクセンブルクのジャン・アセルボーン外相は、「ワルシャワで何が起きているのか。例えば、ドイツでカールスルーエの憲法裁判所の権限が剥奪されるといった事態が考えられるだろうか」と、当惑を表明したという。

アセルボーン外相は、「残念ながら、ポーランド新政権が行こうとしている道は独裁政権がやってきた道だ」と述べ、来年初めにもポーランド新政府関係者を招集し、今回の憲法裁判所改正案についてその見解を質す考えだ。

国内外の批判に対し、ヴァシチコフスキ外相は24日、「憲法裁判所の改正に関する論議を早急に終わらせるため 欧州評議会に法案の評価を求めた」と説明、理解を求めている。

トゥスク現EU大統領がポーランド首相(「市民プラットフォーム」PO党首)時代、同国の国民経済は旧東欧諸国の中でも最優等生と受け取られ、順調に発展してきた。にもかかわらず、右派政党「法と正義」が政権を奪い返した背景には、リベラルなPOが主導する経済改革で国民経済は発展したが、その恩恵を受けられない国民が多く、「貧富の格差」が拡大してきたことがある。ポーランドではPOはエリート層の政党、PiSが貧者の政党というイメージが定着してきている。

ブリュッセル主導のEU政策に批判的で、難民問題でも受け入れ拒否を主張する最大野党PiSは10月25日に実施された総選挙で下院は460議席中235議席、上院100議席中61議席をそれぞれ獲得し、コバチ首相が率いる中道右派のPOから8年ぶりに政権を奪い返し、89年の民主改革後初の1党単独政権シドゥウォ政権を先月発足させたばかりだ。ちなみに、同党は今年5月に実施された大統領選でも同党の候補者ドゥダ氏が、POの現職コモロフスキ大統領を破って新大統領に就任した。

東欧最大の人口を誇るポーランド(約3800万人)で発足したシドゥウォ右派政権は難民問題や財政危機などに直面しているEUにとって大きな不安材料となることは間違いない。ポーランドは2016年の欧州の新たな“台風の目”となる恐れが出てきた。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年12月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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