評価できる慰安婦問題合意

2015年12月29日 11:24

欧米は休みでニュースが少ない中、ある意味、世界中がこの会談の行方に注目していたと思います。私は当初、合意出来ないのではないか、という懸念もあったのですが、合意に至ったのは結構なことだと思います。

多分、多くの日韓の国民はこの合意を素直に受け止められないと思います。なぜなら本件は事実よりも感情論が先走ってしまい、双方の国民にやり場のない怒りを作り上げてしまったからです。つまり、感情だけの話をすれば解決などはあり得ないのです。

私は今年の1月からカナダの慰安婦像建立問題で振り回されました。以前からそれなりに書物などで知識は積み上げていたのですが、いざ実践でその問題に対峙すると様々な困難にぶち当たりました。その一つは日韓双方で問題に対する感情の深さが違うことでした。カナダで慰安婦問題の交渉相手となるべく韓国市民グループ側はその「感情の深さのもつれ」から我々日系との交渉のテーブルにつく人さえはっきり出せませんでした。

一方で日本側にも同様の温度差があり、様々な意見が寄せられました。が、私は「本件はもともと政府間の問題であって、国交回復50周年という年にあたり、安倍首相のアメリカ議会でのスピーチ、戦後70年談話、そして、秋から漏れ聞こえていた日韓政府レベルでの決着交渉の行方を見守るべき」と主張してきました。それでもカナダでの慰安婦像問題について政府間交渉と当地の民間レベルでの慰安婦建立問題は別次元と強く主張する声もあり、それを抑えるのは容易ではありませんでした。

韓国がこの問題に異様に熱くなったのは2011年の憲法裁判で慰安婦の個人的請求権はある、と判断されたことです。これが時の李明博大統領に火をつけ、それを引き継がざるを得なかった朴槿恵大統領が厳しい姿勢を貫いたのであります。今回の日本政府による10億円規模のファンドの創設は資金の出所が日本政府であり、判決にある個人的請求権に基づく支払いが出来ることが担保できたわけです。韓国政府としては憲法裁判所の判決に基づき、政治的解決が出来ました。

これは非常に大きな成果なのですが、ほとんどのメディアの記事はこの論理的落としどころを指摘していないようです。

政府レベルでの合意は韓国政府が市民団体に一定の抑止力を持たせるということになります。つまり、「違法で迷惑な」慰安婦像が市民団体により勝手にあちらこちらに建立されることを強権で撤去する手段を作り出しました。勿論、急にそんなことすれば熱い韓国人、特に韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)は反発します。よって多少時間をかけながら説得工作に入るものと思われます。ちなみにこの挺対協の英語名はThe Korean Council for the Women Drafted for Military Sexual Slavery by Japan であって正に「慰安婦問題の為の韓国協議会」であります。政府レベルで合意に達したことで市民は感情的な思い出は別として新たに事を起こすことは困難にならざるを得なくなります。

これは世界の各地で建立されてきた慰安婦像の更なる拡散を抑止する力も働くはずです。例えばアメリカはこの合意が歴史的なものであり、高く称賛しています。もちろん、アメリカの腹は対北朝鮮外交において韓国と日本が同調するための外交戦略と言えますが、日本からすれば次々と建立されようとしていたアメリカ国内での慰安婦像計画を進みにくくさせるとも言えます。サンフランシスコも市議会は建立への同意はしたもののまだ建っていないはずですし、シカゴも動きが止まっているかと思います。トロントは私有地への建立に留まり、まさに慰安婦像の無秩序な拡大もその方向転換されたような気がしています。

但し、挺対協より怖いのはカリフォルニアの世界抗日戦争史実維護連合会(抗日連合会)やそのカナダ支部である第二次世界大戦アジア史保存カナダ連合(カナダALPHA=Association of Learning and Preserving the History of WWII in Asia)であります。こちらはマイクホンダ議員など政治家を絡ませながらの極論を振りかざすグループであり、こちらの対策を今後重点的に行う必要があると思います。

世界でニュースが少ない時の合意話は世界がこの問題に気を止め、一定の考慮をするというフォローの風も吹くでしょう。ムービングポストゴールと言われる韓国でここまで世間の注目を浴び、朴槿恵大統領の笑顔の意味するものは歴史的合意との評価につながり、ゴールポストが動かせなくなる気がします。

勿論、不満を持つ人も双方多いと思います。が、慰安婦問題の政府レベルでの明白なる決着は絶対的に必要でした。歴史家や専門家の事実関係の学術的調査は今後も進めていけばよいでしょう。海外から見ると「こんな問題」という視点や解決できない理由がわからないという意見はあり、当然ながらにして日本に不利な状況だったことは否めません。ですので私は感情論を抜きにしてまずはひと段落してよかったと思っています。

私個人も慰安婦に始まり、慰安婦に終わった一年、そんな気がします。

では今日はこのあたりで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 12月29日付より

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