なぜ米国で銃がなくならないのか --- 松田 公太

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▲「銃社会」米国が抜本的に変わる日は来るのか(GATAGより、アゴラ編集部)

銃乱射事件が頻発する米国。3億丁が流通しているとされ、昨年も6月にはサウスカロライナの教会で9人が死亡、12月にはカリフォルニアで14人が犠牲になるという悲惨な事件が続きました。

2015年、銃によって死亡した人は前年比711人増の1万3286人(自殺者を除く)。

こういった状況を受けて、オバマ大統領は、1月1日のビデオ演説で銃規制を強化する方針を打ち出し、4日にはその具体的な内容を発表しました。来週12日に行われる最後の一般教書演説では、議会に対して規制強化に取り組むよう求めると報じられています。

最新の米国世論調査では、これに賛成と答えた人は67%でしたが、犠牲者を減らす効果があると答えた人は41%にとどまりました。

賛同はするものの、あまり実効性がないと感じている方が多いようです。それは、発表された具体策が、ガンショーやネットでの販売における身元確認の義務付け(現在は「抜け穴」となっています)、違法な取引の取締まり等、銃の売買を前提とした当たり前のもの(むしろ今までないのがおかしいようなもの)に過ぎないからでしょう。

銃による犠牲者を無くすには、銃所有を原則として禁止し、既に流通しているものを回収するといったところまでやる必要があるのではないか?と日本人なら思うでしょう(全国民向けの刀狩をやれ!と)。

しかし、現在のアメリカではそれができません。独立戦争や西部開拓の歴史、そして家族は自らの力で守るという考え方に支えられている合衆国憲法修正第2条に「国民が武器を保有し携行する権利は侵してはならない」と規定されているからです(これこそ憲法改正するべきだと考えてしまうのも、やはり日本人だからでしょうか)。

今回の発表はこのような憲法上の制約がある中で出されたものであることを考えると、抜本的な解決策になり得ないのも仕方がないのかもしれません。

問題は、国民の生命・安全を守るためのこの程度の規制でも強く反対する勢力があることです。

その代表格が全米ライフル協会(NRA)です。この団体は「身元調査の厳格化は銃を所持する自由への侵害だ」として、強力な政治力と資金力を背景に積極的にロビー活動を展開しています。

また、野党共和党も抵抗を示していますが、オバマ大統領は、「業界団体の圧力が強く、選挙に勝つために必要だからだ」、「規制法案に反対したら当選できなくすれば、彼らも考え直すだろう」と見方を示しています。

利権団体と族議員の癒着により国民軽視の政治が行われるという構図。日本もアメリカも変わりませんね。

私は原則として経済分野の規制は反対ですが、生命・身体を守るための最小限の消極目的規制は必要だと考えています。それがなければ国民生活が脅かされるからです。

アメリカの銃規制反対派の多くは、乱射事件等が起こるたびに、「銃の問題じゃない。それを悪用する人が問題だ」と言われますが、であれば銃を持つ人がどういった人かの厳格な身元確認が必要なはずです。

大統領権限に基づき行われようとしている規制は、全国民にとって賛同できる内容だと思います。困るのは、銃の売上を気にしなければならない者、自分の銃の購入を知られたくないやましいところのある者くらいでしょう。

約7割が賛成という世論調査の結果もこれを受けてのものと言えますが、サイレント・マジョリティのこうした考えが政治に反映されるためには、しがらみをなくしていくことが不可欠です。

やはり、国民の意見をきちんと受け止め、国全体のことを考えて政策を作っていくということを政治家自身が肝に銘じなくてはなりません。

これはみんなの党結党時の理念でもあり、私が政治家になる決意をしたときから抱き続けている信念でもあります。日本は完全な二大政党制に至ってないからこそ、まだ是々非々の政党が生まれ、そこが成長していく余地が残っているのです。

この初心を忘れず、これからも活動をして参ります。


松田公太宣材


編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、参議院議員の松田公太氏(日本を元気にする会代表)のオフィシャルブログ 2016年1月10日の記事を転載させていただきました(画像はアゴラ編集部)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。