トランプ候補、高卒男性に人気な理由 --- 安田 佐和子

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暴言で知られる不動産王、ドナルド・トランプ候補の勢いが止まりません。 リアル・クリアー・ポリティクスの世論調査平均で算出した支持率は、若干低下したとはいえ34.0%と余裕の首位を堅持しています。アイオワ州党員集会に向けた世論調査ではテッド・クルーズ米上院議員(テキサス州)が28%とかわしトランプ候補は2位ですが、それでも24%と大健闘。2月1日予定の同州党員集会で、引き続き力をみせつけるか注目されます。

トランプ候補、他の追随を許さず(1月11日現在)
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(出所:Real Clear Politics)

トランプ候補の支持層と言えば、様々な分析が出ていますよね?ワシントン・ポスト(WP)紙の世論調査では支持者の特徴を年齢、性別、宗教、学歴など詳細にわたって切り取っており、それぞれの特徴が見て取れます。

調査結果をみると、トランプ候補の場合に支持者のうち 1)年収5万ドル以下 50% 2)男性 47% 3)カトリック 44%——となっています。現実保守派のマルコ・ルビオ候補だと 1)年収5万ドル以下 8% 2)男性 14% 3)カトリック 14%——でした。いかにトランプ候補の支持者において低所得者、男性、カトリックつまり宗教の保守派が多いかが伺えます。

そのうち、なぜ高卒者の支持率が高いのか?答えは、年収に潜んでいます。

米国勢局によると、2001年において25歳以上の高卒男性の年収は3万7,900ドル、男性全体では3万8,913ドルでその差はわずか1,013ドルに過ぎません。しかし金融危機から回復を遂げた2014年になると、その差は一気に拡大します。25歳以上の高卒男性は3万2,080ドル、男性全体では3万6,302ドルに至り、ギャップは4,222ドルでした。

つまり、高卒男性は景気回復の恩恵を受けていないのです。だからこそエスタブリッシュメント勢力を忌み嫌い、移民で奪われた職を取り返すべくトランプ候補のような存在に目を付けたと言える。以前は映画「ロスト・イン・トランスレーション」でビル・マーレイ演じるミドルエイジ・クライシスに陥った男性にスカーレット・ヨハンソンが「ポルシェ買ったんじゃない?」と聞いたように、スポーツカーで鬱憤を晴らすことができました。しかし所得が思ったように増えないとあって、ストレスの行き先はお金が掛からない米大統領選に向かったのかもしれません。平易な言葉で語りかけ、スローガンに「アメリカをもう一度偉大な国に!(make america great again)」を掲げるトランプ候補なら、同調しやすかったのでしょう。

(カバー写真:Gage Skidmore/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年1月11日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。