TBSのラジオ番組ポリシーに対する疑問

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私はブログで特定の団体や個人を非難するような事はしたくないし、現実にやった事もなかった。しかし、今回はその禁を破る。それには若干個人的な理由がある。たまたまの事であるにも関わらず、タイトルにまで入れてしまったTBSさんには申し訳ないが、ご勘弁願いたい。

「森本毅郎スタンバイ」がもたらす金曜日の朝の不快感

私の配偶者はキリスト教徒で、社会奉仕活動などで結構忙しい。その事もあってか、彼女はあまりテレビを見ず、家事をしながら聞けるラジオをずっとかけ続けている。朝はいつもTBSの「森本毅郎スタンバイ」だ。私の耳にも嫌でも入ってくる。日常は特に何ということはないが、毎週金曜日にはいつも神経を逆なでにされるような不愉快な気持ちになる。それは元社会党埼玉県議で社会評論家の小沢遼子さんが延々と自分の一方的な見解を喋り、森本さんはそれに相槌を打っているだけだからだ。

この小沢遼子さんという人については、グーグルかヤフーで検索していただければ分かるが、突っ込みどころ満載の人物で、非常識な発言が多いのでネット上ではしばしば炎上している。

(最近では、キングコングの梶原さんの母親の生活保護について、「芸人は収入の不安定な仕事だから母親に生活保護を受けさせるのも妥当」と言ってみたり、御嶽山噴火の救助活動に出動した自衛隊が天候不良下では無理をしなかった事を「腰抜け」と罵り、それと集団自衛権を結びつけて意味不明のコメントをしたりしている。自分の不注意からパスコードを盗み見られ400万円を取られた事を、あたかも銀行に問題があるかのようにクレームする等もしており、何でも人や政府のせいにする「自己中心の文句言いおばさん」の典型をここに見た様な気がした。)

しかし、如何に偏っていると言っても、評論家を自称する人がマスコミを通じて自分の見解を語るのは当然の事で、私は何もその事に文句をつけているのではない。私が不愉快なのは、これが一方的な「言いっ放し」「聞きっ放し」のメディアであるラジオで流れている事である。大体において左翼系の人達は屡々そうなのだが、彼女の語り口は、「自分だけが世の中の良識を代表している」「自分が批判している相手(例えば安倍首相)はとんでもなく非常識な悪人である」と言っているかのような印象を、聴いている人達に何時も与えるのだ。

番組は公共の電波を使ったTBSで放送されており、相手役の森本毅郎さんは、「違う見方もある」という示唆をするでもなく、ただひたすら相槌だけを打っているだけだ。私の配偶者の様な「事実関係をあまり知らない人達」がこれを聞けば、「ああ、そうだったのか」としか思わないだろう。TBSがそれでよいと思っているのなら、慰安婦問題の嘘情報を広めた朝日新聞とあまり変わらないとも言える。

慰安婦問題についての小沢遼子さんの妄言

先の金曜日の放送では彼女は桜田議員の発言を取り上げた。桜田議員の語り口は甚だ不見識なものだったから、それを批判するのは結構だが、彼女は調子に乗って、「軍隊が管理する組織だったから、強制されても逃げられなかった」とか、「慰安婦像の撤去は要求する事ではなくお願いする事」等としゃべりまくった。

馬鹿げた話だ。当時の日本には(そして世界中の多くの国には)吉原遊郭の様な政府公認の売春施設が数多くあり、不幸にして親の借金の質にされてそこに売られてきた女性達が逃げ出そうとすると、店の若い衆につかまって酷い目にあわされた。そんな事は何度も映画等で描かれている。

口入れ屋に金を払い、女性達の管理をした軍の担当部署も、逃走は許さなかっただろうから、遡ってそれを非難されているかのようだ。事情を聞いて可哀想な背景がわかれば、旅費を払って故郷に帰してやればよかったわけだが、そこまではしなかったので、「そこまでやらなかった」道義的な責任を問われ、謝罪もしている訳だ。

「慰安婦像」は、「官憲が強制連行した」という嘘話を広めた人達の手で、その嘘話と表裏一体のものとして作られてきたものである事、良好な隣国同士の関係作りの為にマイナスになる事、等々の理由で、その撤去を日本側が要求したものであり、嘘つき集団に「お願いする」筋合いのものではない。(本来なら、嘘話を広めて日本国民の父祖達を誹謗した事に対する謝罪を、彼等に要求してもおかしくないのだ。)

許せない卑劣な偽善者達

しかし、そこまでなら、もう何度も語り尽くされた事だから、私もここまでは頭には来ない。私が怒り心頭に発したのは、終戦後に日本政府の手でいち早く作られた米軍用の「特殊慰安施設」について、彼女が「日本はすぐにこんなことをする」と、当時の日本政府の「苦衷」に如何ほどの思いを馳せるでもなく、一方的に非難し、あたかもこれを「日本人の怪しからぬ特性」ででもあるかのように誹謗した事についてである。

人間の「原罪」とも呼ぶべきもの、「力が全てを決する世界での男性と女性の関係」つまり「男性の性欲には抑制が効かず、女性がこれに対して無力であるという事」を直視せず、それに対する真の解決策(戦争と貧困の撲滅)を必死で追求しようともせずに、大きな問題のほんの一部だけを切り出して、残った何百倍もの大きな問題からは目を背け、その切り出した部分を断罪する事によって、全てを綺麗事で済ませてしまおうという「卑劣な偽善者」が存在する。慰安婦問題を異常なまでに拡大して騒いだ人達、とりわけ小沢遼子さんのような発言を今なお繰り返している人達は、この様な偽善者の典型であり、私は到底許す気にはなれない。

残念ながら、古代から現在に至るまで、戦争に駆り出された男達の多くは占領地では野獣になる。何としても戦争に勝たねばならぬ責務を負った指揮官達は、麾下の兵士達の士気を下げない為に、こういう男達に対して寛容にならざるを得ない。この為に、無数の残酷な悲劇が、世界中の色々な場所で、気の遠くなる程多くの数の女性達を襲ってきた。この女性達の霊を慰め、そういう事を二度と起こさない様にする為には、世界はどうすればよいのか? 偽善者達は一度でもその事について考え、その事について語った事があるのか?

ノルマンジーに上陸した米軍は多くのフランス人女性を白昼公然とレイプしたので、ル・アーブル市長は郊外に慰安施設を作るよう米軍に懇請したという。ドイツ降伏に至るまでに米兵が犯したレイプの被害者は全体で14,000人に及んだという記録もある。沖縄戦後に沖縄全土で発生したレイプ事件は10,000件にも及んだという推測もある。米兵はまだ良い方で、ロシア兵の場合はもっと酷かったという話は世界中に伝わっている。近年ではベトナムにおける韓国兵の蛮行がよく知られている。

「特殊慰安施設」の真実

終戦二日後の8月17日に成立した東久邇内閣の近衛文麿国務大臣は、こういう事態を恐れて直接警視総監に書簡を送り、日本人の一般婦女子を守る為に迅速に適切な措置を講ずるように要請した。これを受けて、8月26日には、早くも「特殊慰安施設」が関東地区に開設され、その後全国各地に展開されていった。

それでも時すでに遅く、終戦後10日のうちに、神奈川県だけで合計1,336件のレイプ事件が発生している。施設がなければ、レイプ件数はどこまで拡大していったか想像に難くはない。ラジオでの小沢遼子さんは、施設を作った当時の日本人を汚いものでも見るように見下した発言をしていたが、それでは、彼女は、数万人にも及んだかもしれないレイプ犠牲者を、どうして救う事ができたと言うのだろうか? それともそんな犠牲者等はどうでもよいという事なのだろうか?

この施設で働く女性達は、新聞広告や街に貼られたポスターによって募集された。当局の狙いは、先ずは花柳界で働いていた女性達を確保する事だったが、将来に何の希望も見出せず、食物を得る術もなかった多くの女性達が応募してきた。こういう女性達の多くは、仕事の内容を知らされると、驚いて立ち去っていったが、生き延びる為にそのまま働き始めた女性達も多かった。こうした仕事についた女性達の数は、翌年の1946年には全国で7-8万人にも及んだという。

ちなみに、この施設の存在は、大統領夫人だったエレノア・ルーズベルトの知るところとなり、彼女の要請で後に閉鎖されたが、ここで仕事をしていた女性達の殆ど全てが、そのまま非合法の私娼となったので、彼女の意図した事は全く実現しなかったと言ってもよい。これこそが人間の原罪のなせる業なのだ。

結語

私は、子供の時にパンパンと呼ばれていた彼女達を多数見ている。子供達は彼女達を蔑み、しかし、彼女達から入手できたランチョンミート(現在のSPAM)の缶詰に目を輝かせた。

大学に入ってから、友人の知り合いだった満州からの引き揚げ者から、「ロシア軍に女性を差し出せと求められ、花柳界出身の一人の女性にみんなで頼み込んで犠牲となって貰った」という話を私は聞いた。翌朝彼女は「人間とも思えぬぐらいのボロボロの姿」になって帰ってきたとの事だった。これがこの世界の痛ましい現実だ。彼女達の為に銅像が必要なら、世界中の街は銅像で埋め尽くされるだろう。

この一文はTBSの関係者には是非読んで欲しい。そして、出来れば、小沢遼子さんのような人物は、一方通行のラジオ番組では起用しないでほしい。もしどうしても使いたいのなら、ちゃんと別な意見を言える人と組み合わせて、対話形式にしてほしい。私はこれ以上毎週金曜日の朝を、抗する術も持たずに不愉快に過ごしたくはない。

松本 徹三