ROIが体感できてそな自治体とできてなさそな自治体

2016年02月02日 09:30

shinkamigoto
▲町長より高給で募集するワケとは(新上五島町ホームページより)


どうも新田です。まだ東京で連日連夜、消耗しております。先々週、アゴラの執筆陣でもある秋元祥治さんが上京して、ビズリーチ主催のメディア向け地方創生プレゼン懇親会に登壇されました。お会いするのは1年半ぶりくらいですが、そこで面白い話を聞きましてね。はあ、書きそびれている間に、朝日に先に書かれちゃったよ。

離島の町が町長より高給で募集するワケ


長崎)新上五島町、年収1200万円で非常勤職員募集
新上五島町が、年収1200万円の破格の給与で非常勤嘱託職員を募集している。人口減少が止まらぬ中、町が職員に寄せる期待とは――。

町が募集しているのは、昨年9月に開設した産業サポートセンターのセンター長。町を活性化させて人口減に歯止めをかけるため、町内の中小企業や新たに事業を始める起業者を対象に、経営面から助言することなどが求められる。

センター長の給与は月額100万円。月給78万円の町長より高額だ。雇用契約は1年ごとの更新で、原則として3年まで。求められるレベルの仕事が継続できれば、3年間の給与は最大で3600万円になる。(朝日新聞デジタル 2016年1月30日)

新上五島町(しんかみごとうちょう)は、その名の通り、長崎・五島列島の一角にございます。人口が過去10年で26,200→20,600と、2割も減ってしまって、地場産業を育てて地域経済を浮揚しなきゃどうにもならん、だけども、そういう土俵際でうっちゃってチャンスを切り拓けるビジネス人材がいなくて何とかしないと、というところです(ちなみに応募締め切りは今月10日)。

実は新上五島町で新たに始めた産業サポートセンターは、まさに秋元さんが愛知県岡崎市で展開されている岡崎ビジネスサポートセンター(OKa-Biz)、あるいはその師匠筋である静岡県富士市の「f-BIZ」をモデルにしているようなんですが、この両センターが連日相談に来る地場の中小企業や個人事業主が行列をなし、全国の地方から視察が来まくっているというのは、ポテンシャルや強みをちゃんと引き出して成果を出しているから。成功例が積み重なって秋元さんも昨日みたいに時々アゴラに投稿しておりますけども、この前のプレゼンで一番面白かったのは、経営危機だった町工場のケース。

たしか社長以下、数えるほどの社員数数人で、鋼材切っている、どこにもであるような工場。さすがの秋元さんも強みがどこにあるか最初は手掛かりが無さそうで、一瞬お手上げになるかと思いきや、60分の相談時間の最後のほうになって、社長さんが「うちは頼まれれば半日でも納品する」と何気なく言った一言に「社長、それ」と秋元さんが指摘して始めたのが、「超特急サービス・鋼材切断119番」。SNSも始めて告知に力を入れると、すぐに受注が増えて売り上げが回復。めてたしめでたし、という展開だったようです。いやはや、私も中小・零細企業のマーケティングPRコンサルやってきましたけど、これはよく鉱脈を見つけられたなと感心します。

地方に足りない攻めの経営人材


木村産業のケースで、もう一つ今の地方人材ニーズを象徴していると思ったのが、社長さんがOKa-Bizを訪ねた時に両手にどっさり財務諸表とか持ってきたそう。地銀とか信金といった地場の金融機関の“経営アドバイス”で使われるからだが、そんなものは敢えて見ないのが秋元流。その会社の弱点ばかりに目がいってしまうからだそうです。まあ、そもそも経営と一口に言っても「金勘定」(守り)と「売り上げアップ」(攻め)では求められるスキルも違うわけで、後者の攻めの経営ができる人材、特に国内の他地域や海外の市場とブリッジできるノウハウをドタ勘レベルでも持っている人材は少ないわけです。

だから、今回の新上五島町が町長よりも高い給与を出すというのは、攻めの経営指南ができる人材の価値が「それだけある」と気づいての投資判断なわけです。1,200万円は、都会の腕利きコンサルとしては安いけども、家賃相場とかを考えると可処分所得はそんな変わらないか、むしろ増えるはず。そういえば「離島振興」の成功例として、小泉進次郎やマスコミがよく取り上げる島根県の隠岐諸島にある海士町は町長以下、役場が給与を削りまくって確保した予算を攻めの経営にシフトする投資判断が功を奏してましたね。

フリーライダーの自治体との危機感の差


このあたり離島は自治体消滅の危機を常にヒシヒシと感じているからこそ、身をもって攻めに転じられるのでしょう。ところが厄介なのは中途半端に都市化していたり、人口がそこそこある地方の街こそ、茹でガエル状態で意外に旧態としている。OKa-Bizが軌道に乗った分、周辺の自治体からも相談にやってくる地場の業者さんが増えすぎて、泣く泣く地元優先の措置を開始。これを受け、タダ乗りしていた豊橋では、ヤバイと思ったアゴラメンバーの市議、長坂君が議会で「OKa-Bizみたいな新しい相談機関を市はやらないのか」と質問したところ、市の方はまるでやる気なしだったとか(詳しくは長坂君の個人ブログご参照)。

まあ、そういう自治体の首長の語彙にはROIの3文字が無そうだよね。新幹線が通ってなまじっか街が物理的には豊かなだけに危機感が薄く、地元ニーズも読めてないんだね、と傍観する次第。ちなみにハフポによると、海士町ではコンビニも無い状況を逆手に「ないものはない」と町らしさを表現して改革に乗り出したそうで、「なまじっかある」豊橋のような自治体では、先を見据えた人材が決定権を持つ、もしくは近いところにいて先手を打ってないと、10年たってから「攻めの経営ができる人材がいない」とか慌てるご愁傷様な事態にならなきゃいいですがね。ではでは。

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新田 哲史
アゴラ編集長/ソーシャルアナリスト
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アゴラ編集長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事/ソーシャルアナリスト/企業広報アドバイザー

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