憲法改正の議論、ポイントはここだ!

田原 総一朗

002-3このところずっと、僕は憲法について考えている。7月にあるだろう衆参ダブル選挙で、政府与党の自民党と公明党が3分の2以上の議席を獲得したら、安倍晋三首相は憲法改正すると明言している。

僕は、必ずしも憲法改正に反対ではない。それに関して、ある興味深い調査結果がある。朝日新聞が昨年7月12日に、弁護士を対象に実施した調査だ。質問は「現在の自衛隊の存在は違憲か」。回答した122人の弁護士のうち、「憲法違反にあたる」という回答は50人、「憲法違反の可能性がある」が22人。なんと72人、63%の弁護士が、「自衛隊は違憲」だと考えているのだ。

朝日新聞は、なぜかこの結果を紙面に載せなかった。だが、これはたいへん重要な結果ではないだろうか。やはり自衛隊という存在について、きちんと国民に問うべきなのだ。そして、憲法改正をすべきという声が大きければ、それから憲法改正に向けて動けばいい、と僕は思う。

しかし、安倍首相の考えは違うようだ。大騒動になるだろう第9条2項には触らず、第96条の改正と、新たに「緊急事態条項」の新設を考えているようなのだ。第9条2項は、いわゆる「戦力の不保持」をうたっている。そして第96条は、憲法改正の手続きを定めた条項だ。この「緊急事態条項」だが、2012年に自民党が発表した「憲法草案」第98条に書かれている。

憲法草案では、「内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる」とある。そして、続く第99条で、「緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない」と定められている。

要は、緊急事態宣言が発せられると、首相の全権に従うことになるのだ。これはたいへんな条文である。国会でも民主党の岡田克也さんや、社会党の福島瑞穂さんがその危険性を指摘している。

このような問題は、当然、おおいに議論されるべきだろう。繰り返すが、僕は憲法改正に必ずしも反対ではない。先に示した弁護士アンケート結果を見ても、憲法第9条については、一度、きちんと議論し、必要があれば改正すべきだと考えている。

だからこそ、安倍首相にはひとつだけお願いしたいのだ。憲法の「どの部分」を変えるのか、必ず「選挙の前」に明示していただきたい。そうすれば、国民の間で議論が湧き上がる。そして、議論を尽くされたときにこそ、選挙で決をとるべきなのだ。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2016年2月8日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。