【映画評】ドリーム ホーム 99%を操る男たち --- 渡 まち子

2016年02月10日 05:30



リーマン・ショック後の大不況に見舞われたアメリカ。フロリダに住む無職のシングルファザー、デニス・ナッシュは、ローンの返済に苦慮していたが、ある日突然、長年暮らしてきた家から強制退去させられる。家族のために大切な家を何としても取り戻したいナッシュは、自分たちを追い出した不動産ブローカーのリック・カーバーに雇われることに。ナッシュはカーバーの下で働きながら、法の穴を抜ける悪辣な住宅差し押さえビジネスの手法を身につけていく。母や息子に真実を言えないまま、大金を稼いでいくナッシュだが、やがて彼は大きな代償を払うことになる…。

マイホームを失ったことから金と欲望の世界に堕ちていく男の姿を描く「ドリーム ホーム 99%を操る男たち」。物語は、リーマン・ショック後に家の差し押さえにあった人たちの実話をベースにしていて、非情なアメリカ資本主義を冷徹なまなざしで批判する社会派サスペンスだ。リーマン・ショックの舞台裏を描く作品はすでに何本もつくられていて、近日公開の話題作「マネー・ショート」などもその一例。なぜこんなことになったのか?!を紐解く映画が多い中、本作は、社会の末端に生きる人間の一人だった主人公が、家を失った人々の悲劇を食いものにする不動産ブローカーと共闘して道を踏み外していくという異色ドラマである。

A.ガーフィールドが葛藤する主人公を好演するが、何といっても強烈なのは、悪徳不動産ブローカーを怪演するマイケル・シャノンの圧倒的な存在感だ。国や政府、公的システムをまったく信用していない彼は、良心のかけらも持たない勝ち組である。彼いわく「アメリカは負け犬に手を差し伸べない。この欺瞞の国は、勝者の勝者による勝者のために国だ」。この言葉には多くのアメリカ人が納得してしまうのだろう。それはイラン移民を両親を持つラミン・バーラニ監督の視点でもある。主人公が本当に失ったのは家ではなく、人間性と家族だ。ついに手に入れたプール付きの豪邸に、一緒に住む家族はもういない。最後の最後に見せるナッシュの良心に、かすかな希望が託されている。
【65点】
(原題「99HOMES」)
(アメリカ/ラミン・バーラニ監督/アンドリュー・ガーフィールド、マイケル・シャノン、ローラ・ダーン、他)
(非情度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年2月8日の記事を転載させていただきました(画像はアゴラ編集部)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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