復興をさまたげる「1ミリシーベルト」のタブー

2016年02月12日 00:54

丸川環境相が、除染の基準が年間被曝量1mSvとなっている点について「何の科学的根拠もなく細野環境相(当時)が決めた」と発言した、と東京新聞などが報じた問題について、国会で「誤解を与えた」と陳謝したが、発言は認めなかった。

記事のように彼女が「何の科学的根拠もなく」除染の基準を決めたと発言したとしたら、間違いである。民主党政権はICRPの線量基準を誤解し、誤った科学的根拠を適用したのだ。放射線医学の専門家である中川恵一氏もいうように、

平時では、「公衆の被ばく限度は年間1mSv」、「職業人は年間50mSvかつ5年で100mSv以下(今回のような緊急時は別)」とICRPは勧告している。また、「緊急時で被ばくがコントロールできないときには年間20-100mSvの間で、ある程度収まってきたら年間1-20mSvの間で目安を定めて、最終的には平時〔年間1mSv〕に戻すべき」とも勧告している。

つまり1mSvは原発事故のような「緊急時」の基準ではなく「平時」の基準であり、それを被災地の除染に適用したことが決定的な間違いだった。中川氏もいうように「この法令上の年間1mSvとは、健康影響上の科学的なデータではなく、安全を十分に見込んだ防護上の目安に過ぎない」からだ。

細野氏はツイッターで、「除染の長期的目標として、『平時の基準』を適用するのは当然」と書いているが、そんなレベルまで全県を除染するには数十兆円かかる。これは「安全を十分に見込んだ防護上の目安」であって、除染の目標にすべき数字ではない。

しかもこの除染基準は法的に決まっておらず、政府は「20mSvまでは帰宅してよい」と決めているが、「1ミリ以上は危険だ」という錯覚が人々に刷り込まれたため、除染も帰宅も進まない。丸川氏の指摘は、基本的には正しいのだ。むしろこういう発言をすると、すぐマスコミが言葉尻をとらえて騒ぐ「タブー」になっていることが復興をさまたげている。

細野氏は自分の名前が出されたことが頭に来たのだろうが、彼も1mSvが失敗だったことはわかっているはずだ。むしろ彼が大臣として誤った科学的根拠を適用したことを陳謝し、政府は除染の基準を科学的根拠にもとづいて法的に明確にすべきだ。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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