中東の混乱と北朝鮮の暴走を招いたイラク戦後処理 --- 八幡 和郎

2016年02月25日 17:30

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▲混迷したイラクの戦後処理の教訓をどう生かす(アゴラ編集部)


旧支配層の追放とか処罰は、正義という観点から一理あるし、戦争や暴政を抑制する予防措置になるという理屈もある。しかし、排除したいような体制が崩壊回避へ過度の抵抗をする動機になるし、崩壊後の社会秩序維持の障害にもなる。

リビアのカダフィが殺されるまで、アメリカは金正日に対してリビアのように対米関係を改善すれば体制は生き残れるとメッセージを送っていたが、アラブの春で反体制派がカダフィを殺すことを助けた。これでは金正恩に融和策を勧めても説得力がない。

イラクのフセイン体制崩壊時にバース党関係者を広範に追放した。バース党の理念はもともと近代的なものだ。創立者はキリスト教徒で、欧米からの解放・アラブ統一・穏健な社会主義を唱えてきただけでイスラム過激派ではない。官僚組織としても良く機能していた。ところが関係者を徹底的に追放してシーア派に権力を握らせたのでバース党関係者がISに流れた。

先の戦争のあと日本でも東京裁判で戦犯を死刑にしたり公職追放を行った。しかし、処刑された人数はそれほど多くなかったし、中堅クラス以下は追放されなかったし、された人もさほど時間がかからずに解除されたから、日本の統治機構は復興のために効率的に機能した。しかし、そういう限定された処刑や追放すらいまもって保守層を含む広範な反米主義の温床となった。

また、マスコミや学界などでは、右派が追放されてその後も復帰できなかったので、中道派というべき人が右寄りといわれ、極端に左翼的な人が主流を占める左翼片肺体制をいまもって維持させている。

イラク戦争のあと私は日本の占領時の経験をアメリカのイラク占領に生かして過度な追放や粛清を避けるようにアメリカに進言し、できることなら直接に占領行政に参加すべきだと主張した。また、カダフィの殺害も止めるように強く言うべきだったと思う。

日本の経験を欧米に教えることが今後のためにも必要だと思う。やはりバース党のアサドを追放したとしても身の安全くらい保証するとか、バース党関係者の広範なはしないと約束しないと話し合いにならないのではないか。

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八幡和郎  評論家・歴史作家。徳島文理大学大学院教授。
滋賀県大津市出身。東京大学法学部を経て1975年通商産業省入省。入省後官費留学生としてフランス国立行政学院(ENA)留学。通産省大臣官房法令審査委員、通商政策局北西アジア課長、官房情報管理課長などを歴任し、1997年退官。2004年より徳島文理大学大学院教授。著書に『歴代総理の通信簿』(PHP文庫)『地方維新vs.土着権力 〈47都道府県〉政治地図』(文春新書)『吉田松陰名言集 思えば得るあり学べば為すあり』(宝島SUGOI文庫)など多数。


編集部より;この原稿は八幡和郎氏のFacebook投稿にご本人が加筆、アゴラに寄稿いただました。心より御礼申し上げます。

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