自民党は定数是正反対より東京一極集中排除を --- 八幡 和郎

2016年02月28日 17:00

kokkai
▲人口減少時代に相応しい議席数とは(首相官邸HPより)


2015年国勢調査の速報値で日本全体として人口減に転じたことは、真の国難であり、第二の敗戦といって良いくらいだ。それとともに、今回の数字で、衆院議長の諮問機関「衆院選挙制度に関する調査会」が答申で示した「アダムズ方式」だと「9増15減」が必要なのは深刻だ。

青森、岩手、宮城、福島、新潟、三重、滋賀、奈良、広島、山口、愛媛、長崎、熊本、鹿児島、沖縄の15県が各1議席の削減対象となり、東京都は4議席、神奈川県は2議席、埼玉、千葉、愛知の3県は1議席ずつ増える試算だ。

2010年調査に基づく試算で「7増13減」に、新たに原発事故の福島と首相の地元山口の2県が削減対象となるのが象徴的だ。山口の小選挙区選出代議士は、安倍首相、河村元官房長官、高村副総裁、それに首相の実弟の岸信夫の四人だが一人はじき出される。全般に西日本が減って東日本に大きくシフトする。自民党はこれまでも諮問機関の答申を値切ろうとしているが、それどころでないことになる。

しかし、自民党の政治家は、どうして、定数是正に反対するより東京一極集中・地方の衰退・西日本の没落に歯止めを掛ける努力をしないのだろうか。それどころか、工場や大学などの地方移転政策を廃止したり、いったん決まった首都機能移転を凍結するとか、後退ばかりなぜするのか。

まことに不思議なのは、中国四国のような自民党の金城湯池ともいうべき地域ほど人口流出が激しいことだ。とくに、安倍首相、石破地方創生担当相、二階総務会長といった地方振興の責任者というべき政治家の地元は衰退が著しい。私は石破氏が地方創生担当になったとき、彼が成功するためには、自分がこれまでにやってきたことを間違ったと反省することが必要だと書いた。

安倍、石破、二階の三氏は何十年も政治家をやって、地元の衰退に成果を上げられなかった人たちだ。そこで、「これまで自分の政治家人生でやってきたことは間違っていた。反省して根本的に違う対策を命がけでやる」というなら、成功するかもしれない。しかし、これまでの政策を少し強化したくらいで成果が出るはずない。

彼らが、仕事をしたかどうかは、定数是正など必要ないように人口を動かしたときだ。それに失敗したら、あれをやったこれをやったと言っても数字になっていないから失敗だと最初から宣言しておくべきだ。

いま田中角栄ブームだが、角栄のすべてが正しいかどうかは別として、彼が偉いのは、地元の衰退を克服するために不退転の覚悟で列島改造に取り組んだことだ。西日本の政治家、とくに安倍、石破、二階、それに麻生、岸田、細田あたりは角栄を見習って欲しい。選挙区は神奈川だが秋田出身の菅官房長官もそうだ。秋田の惨状は西日本以上だ。

しかも、西日本の特殊出生率は非常に高い。上位10県はすべて稲田政調会長の福井以西だ。九州は1.6で東京の1.1より0.5も高いのだ。西日本の彼らの選挙区へ人口を移動させれば、いかなる少子化対策より劇的な効果が出るのである。

ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏は、日本の低成長は人口不足の結果だと述べ、労働年齢 人口の生産の伸びは「さほど悪くない」と最近、いいだしたが、日本経済を再活性化する鍵はアベノミクスのいかなる方策より少子化対策で有り、そのもっとも簡単で効果的な方法は西日本への人口誘導だ。それはまた、緊迫するアジア情勢のなかで東シナ海の平和維持のためにも不可欠なことでもある。

東京の生活は快適だ。ただし、それは、子供が少なければのことだ。かつて、ローマの奴隷の生活は悪くなかった。しかし、彼らは原則として家庭を持ったり子供をもうけたりできなかった。そして、人口が足りなくなると戦争をして奴隷を連れてきた。

東京でも地方から人を連れてきて、彼らの多くは結婚しないし、しても、子供は少ない。それでは困るから、また、地方、とくに西日本から人を吸い寄せて辻褄をあわせてきた。しかし、ローマが戦争で奴隷を連れてくることができなくなったときに滅びたように、日本も地方から出てくる人も居なくなったときに破綻しそうなのである。
shouzou
八幡和郎  評論家・歴史作家。徳島文理大学大学院教授。
滋賀県大津市出身。東京大学法学部を経て1975年通商産業省入省。入省後官費留学生としてフランス国立行政学院(ENA)留学。通産省大臣官房法令審査委員、通商政策局北西アジア課長、官房情報管理課長などを歴任し、1997年退官。2004年より徳島文理大学大学院教授。著書に『歴代総理の通信簿』(PHP文庫)『地方維新vs.土着権力 〈47都道府県〉政治地図』(文春新書)『吉田松陰名言集 思えば得るあり学べば為すあり』(宝島SUGOI文庫)など多数。


編集部より;この原稿は八幡和郎氏のFacebook投稿にご本人が加筆、アゴラに寄稿いただました。心より御礼申し上げます。

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