18歳未満の店内飲食禁止―迷走する英マクドナルド --- 平 勇輝

アゴラ

macirusuti 2■英国マクドナルドが導入した驚きの新ルール
国内でも迷走ぶりが指摘され続けているマクドナルドですが、先日、英国マクドナルドが発表した新たな経営方針が日本マクドナルドに引けを取らない迷走ぶりでしたのでご紹介したいと思います。その経営方針とは、一部店舗での18歳未満の店内飲食の禁止。ハッピーセット(ちなみに米国や英国ではハッピーミールと呼ばれています)やそれに類する商品などで子どもをターゲットとした商売を1970年代後半から世界的に続けてきたマクドナルドですが、なぜこのような思い切った決断を下したのでしょうか。

■18歳未満の店内飲食の禁止、その背景とは
BBC英国放送協会の報道によれば、事件の発端は、ストーク-オン-トレントと呼ばれる地区で数週間前に起きた20人もの10代の若者たちによる乱闘騒ぎだそうです。騒ぎの知らせに加えて銃声も鳴り響いていたことから、地元警察は武装警察官とヘリコプターを出動。結果、8人が逮捕されましたが、この時逮捕された全員が既に保釈中とのことです。英国マクドナルドは、今回の事件を受けて、反社会的行動をとる可能性のある18歳未満の顧客の店内での飲食を一部店舗で禁止するという新たなルールを設けました。より正確にいえば、18歳未満の顧客は、18歳以上の大人と一緒でなければ店内での飲食が許可されないといった内容です。英国マクドナルドは、BBCの取材に対し、今回の対応がとりわけ若者だけを狙っただけの措置ではないと主張していますが、逮捕者が出た事実に鑑みて「他の顧客の安全を守るために一時的な措置として」18歳未満のみでの店内飲食を一部店舗で禁止するに至ったと説明しています。

一連の報道に対し、ある視聴者は「子どもたちは学校帰りに街なかを出歩くし、安く食事ができるからマクドナルドに行く。彼らは他にどこにも行く場所がない」とコメント。一方で、銃声が鳴り響く深刻な乱闘騒ぎにまで発展したことを受けて、今回の英国マクドナルドが設定した新ルールを肯定的に受け止めている視聴者もいました。

また、地元警察も「子どもたちの集団は、無料Wi-Fiを使いたいがために飲み物を1つだけ買う。これが迷惑行為へと発展する」と今回の英国マクドナルドの決断を間接的に支持するコメントを出しました。

「反社会的行動」という表現にはなにか物々しい雰囲気を感じてしまいますが、未成年の利用客による迷惑行為と捉えれば、思い当たる例は日本国内でもいくつもあるかと思います。子どもにこそ笑顔で食事を楽しんでもらいたいというのがファーストフードチェーンの願うところですが、子どもであるが故に店舗関係者や他の利用客を困らせているといった現状もまた事実です。

■解決しなけらばならない問題は山積み
いかにより多くの顧客に気持ちのよいサービスを提供できるかというテーマは、飲食店に限らずすべての産業関係者にとっての至上命題であることは間違いありませんが、今回のような極端な経営判断は、日本に限らず、イギリスでもマクドナルド離れを加速させかねないこともまた間違いないでしょう。

最後にちょっとしたこぼれ話ですが、あるイギリス人ネットユーザーは今回の報道に対して「反社会的行動よりも子どもの肥満問題の方が心配だからマクドナルド自体を禁止すべき」とコメント。今のマクドナルドには、場当たり的な問題解決を図るのではなく、もっと顧客の声に耳を傾けた抜本的な経営改革が必要なようです。

平 勇輝(たいらゆうき)・ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校法学部犯罪社会学部所属、ロンドン大学キングス・カレッジ校国際安全保障研究センター非常勤研究員