2台目の需要

私は折々シンプルライフの時代と申し上げてきました。モノを沢山持つ時代からある程度に絞り込み、必要な時、必要な分だけ借りる人が増えてきたのではないか、と指摘してきました。シェアスタイルにもつながるこの質素な生活は確かに一部では増えつつあるはずですが、世の中突然、皆が皆、シンプルライフに変るわけではありません。

日経ビジネスの特集「凄い売り方」の中に「セカンドとして持たせる」需要の発掘の記事がありました。その例として、ちょっとした掃除に便利なスティック型掃除機、襟汚れなどを落とすハンディタイプの洗濯機、パナソニックのビューティーシリーズで単機能のフェイスケア商品群などが挙げられています。

掃除機については私も以前にセカンドを購入していました。いわゆる重たい掃除機はコードを出して「さぁ、掃除します」というモードになりますが、ちょっとこぼしたものをさっと掃除機で吸わせるのには充電型のスティック掃除機なら吸引力は弱いけれどさっとできてさっと仕舞える便利なグッズです。

農家の方には割とセカンドカーをお持ちの方が多い気がします。一台は作業用の軽トラック。もう一台は街に行ったり人を乗せたりする時のセダン。使い分けの需要だと思います。

外国に目を転じましょう。セカンドハウス、サードハウスをお持ちの方が本当に多くなりました。その理由はホテルが完全な快適空間ではないことがあります。まず、部屋に(台所といった)水回りがない、自分のモノをキープできない、行くたびに毎回部屋が変わったり、予約が取れないこともあります。夏のリゾートは高くて目が飛び出るような宿泊料金です。ならば、一室持っていた方が値上がり期待もあるし、寝酒のウィスキーも手軽です。良いスピーカーからお気に入りの音楽を聴くこともできます。

セカンドの需要はこだわりの人がより追及したり、新製品が出た際に新しいものに飛びつくことに似ていると思います。つまり、ハンディ掃除機がどの家でも均等に需要があるのではなく、ごく狭いマーケットながらそこには強い需要がある、ということでしょう。

趣味の世界を覗けば、例えばカメラに凝る人は次々と高いものに買い替えたり望遠レンズをつけたりして、いくつもカメラを所有しているようです。私の知り合いは先日、5台目の車(クラッシックカー)をゲットしたのですが、奥様が「彼はあれでハッピーなのよ、子供みたいでしょ」と笑っていました。つまり、一般人にはその価値が分からなくてもこだわっている人だけに分かるその満足感、ともいえそうです。

日本人はほぼ単一民族ゆえの個性の出し方があります。学校でクラスメートに「へぇ、凄ーい!」と言われる嬉しさは多くの人が経験してきたと思います。そのちぃっちゃな優越感こそ大人になった時のこだわりに繋がっていくのだろうと思います。

ならば、冒頭のシンプルライフもフランス型の単なるSimple is bestではなくて、こだわりのシンプルライフがあってもよいでしょう。「私はバックは一つしか持っていないよ、バーキンだけど」となればおおっ、と思うでしょう。

これをビジネスをする側から見れば今までの製品の切り口を変える、ということは必要です。以前にも書きましたが私は携帯はiPhoneと格安携帯の2台がありますが、格安の方はあまり使わないこともあり使用料はせいぜい月2000円ですがある一定条件の時にそれがあることで便利さを感じるのです。

多くの製品は機能を一つにまとめあげるトレンドがあったと思います。ここからは自分だけの○○を生み出す工夫があったら面白いでしょう。例えばお酒好きの方にとって一升瓶が入る冷蔵庫があればよいと思うでしょう。でも世の中にそんなものありません。朝のトーストが完璧な焼き具合で勝手にスィッチが切れるオーブントースターがなぜないのでしょうか?人それぞれ価値観とライフスタイルがあり、そのこだわり方は100人100様です。そんな潜在的なセカンドの需要、あるいはそれだけあれば後はいらない、というシンプルライフ派にも受ける製品づくりのアイディアがあればよいな、と思います。

では今日はこのぐらいで。