誰も予測できなかった「トランプ旋風」

田原 総一朗

tahara アメリカの大統領予備選挙が、いま白熱している。その台風の目は、なんといっても共和党候補の指名争いでトップを走る、ドナルド・トランプさんだろう。

「激論!クロスファイア」に、タレントでカリフォルニア州弁護士のケント・ギルバートさんと、東京財団の渡部恒雄さんに来ていただき、この「トランプ旋風」について徹底激論をしていただいた。

ギルバートさんは共和党支持者だ。だが、トランプ候補には賛成できず、彼が共和党候補に選ばれることを非常に危惧していた。ご存じのようにトランプ候補は、「すべてのイスラム教徒のアメリカ入国を拒否すべきだ」「メキシコは問題のある人間を送り込んでくる。だからメキシコとの国境に壁を作るべき」などといった、過激というよりも、むちゃくちゃな発言で知られるからだ。

2月25日付けの「ワシントンポスト」紙は、「トランプ氏の指名獲得を阻止するため、共和党指導者はあらゆる手段を講じるべき」という社説を掲載した。「ワシントンポスト」は民主党寄りの新聞だ。このような社説は、異例中の異例と言ってよく、危機感の大きさがあらわれている。

「ワシントンポスト」紙やギルバートさんが恐れるような、このような人物が、共和党候補の指名を獲得しそうな勢いを持つのは、なぜか。その背景には、「世界の警察」をやめたアメリカへの、というより、オバマ大統領への不満があるのだろう。

ロシアとウクライナをめぐるクリミア半島の問題や、ISなどによって内戦状態に陥っているシリアの問題などで、いま、世界におけるアメリカの存在感は、小さくなっている。ロシアの影に隠れている、とさえ言えるかもしれない。「強いアメリカ」を求める国民の不満が、過激な発言を繰り返すトランプ候補の支持へと向かっているのだ。

一方、アメリカ国内の貧富の差は拡大するばかりだ。仕事のない若者も大量に生まれている。こうした不満を抱える白人の貧困層の支持は、民主党の大本命と言われているクリントン候補ではなく、社会民主主義を標榜する民主党のサンダース候補に集まっているという。

ギルバートさんは、「共和党分裂もあり得る」と語っていた。果たして「トランプ旋風」は、どこまで続くのか。ひとつだけはっきり言えることがある。「トランプ旋風」が終わらない要因に、アメリカが抱える、さまざまな層の国民の不満があるのは間違いない、ということだ。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2016年3月22日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。