溢れたマネーの行方

2016年03月25日 10:35

バンクーバーで釣り船などチャーターボートのビジネスをしている長年の知り合いと立ち話をしていたところ、「俺の船を中国人が買ったんだ」と言います。「へぇ、で、あなたはリタイア?」と聞けば、「いや、中国人は金はあるんだけど船の動かし方も知らないので船の所有権だけ売って俺はまだ、その釣り船屋をやっているよ」と。ちなみにその船を買った中国人氏、このあたりのマリーナやら船やらいろいろな海に関するビジネスを買いまくっているようで、「金だけはあるねぇ。」とお互いに笑ってしまいました。

中国人の爆買いは日本でショッピングする観光客レベルだけではなく、世界の会社を爆買いしています。スイスの農薬大手、シンジェンダを5兆円とかカナダの石油大手ネクセンを1兆7000億円といった巨額のものから数百億円程度の「小型」なものまでごろごろしています。スターウッドの買収ドラマは今のところ、再び逆転され、中国側がどう出るか注目されていますが、そのペースは尋常ではありません。

最近思うのはマネーの「吹き溜まり」であります。日米欧がこぞって輪転機を回したわけですから本来であればマネーがどこかにあり、かつての経済原則であれば通貨価値の下落を伴うインフレ要因となっていたはずです。が、例えばアメリカの連邦準備銀行があれだけドル紙幣を刷ってもインフレにならないのはそのマネーが一部に吸い上げられているからではないか、という推測が可能であります。

では、どこにでしょうか?例えばここバンクーバーの不動産に向かうマネーは尋常ではありません。バンクーバーもインフレとは無縁ですが、不動産の上昇だけは当たり前のようになっています。昨日には2015年のバンクーバーの不動産総取引額の3分の1が中国マネーだったことが明らかにされています。

この仕組みはかつて、日経平均が4万円近くまで付けたバブルの時と同じで買うから上がる、上がるから買う、という循環が生まれているとも言えそうです。但し、いわゆるバブルとはマネーの効果が広範囲に拡散し、経済の潤滑となりますが、現在は投機としての不動産というごく一部にだけマネーが滞留しているのでしょうか?

ニューヨーク大学のルービニ教授は最近の世界経済を「ニューアブノーマル」と称していますが、その原因の一つに増加したマネーサプライを銀行が融資に回さず「貨幣の流通速度が急落し」、超過準備預金として死蔵したから、と説明しています。(日経ビジネスより)

ルービニ教授のこの指摘をもう一歩踏み込むと銀行が融資可能な伝統的事業は不動産か冒頭に紹介した中国企業のようなM&Aに伴う資金需要などに狭められているとも言えます。例えば昔はテレビにしても白黒からカラー、フラット画面から液晶という具合に進化しましたし、放送側もそのシグナルの質を向上させてきました。これは時間軸を伴う成長とも言え、企業は工場や研究開発などの投資を継続し、より技術向上させ、消費者もより高性能なものに買い替えるといったマネーの循環効果がありました。

が、今や、アフリカの奥地でも液晶テレビとスマホは普通にあるわけで世界最先端の商品が地球上に一気に浸透したことで個人事業主、中小企業などの活躍の場を含めた途中の成長過程を省いたとも言えないでしょうか?

つまり、資本のチカラで持てる者が一気に買収をし、先進国と新興国とのギャップを埋め、資金力があるものが勝ち残れるというビジネスモデルであります。

よって今後は誰も手を付けていない新たなビジネスが地球儀ベースで生まれ進化していくスタイルがない限り世界経済の低成長はアブノーマルでもなんでもなくごく普通の事態とも言えます。

インフレ率を2%にしたいという日欧米の中央銀行のその経済的根拠は何でしょうか?1%に置き換えられたらどうなるのでしょうか?安倍首相にすれば2020年頃にGDP600兆円を目指すとしている以上、何が何でも成長を数字として示さねばなりません。

一点、私に疑問なのは日本国民が本当に4-5年で今から2割のGDP成長を望んでいるのか、その気構えがあるのか、となると案外、現状でも全然問題ないと考えている節がないともいえません。

溢れたマネーはごく一部に引き寄せられている半面、引き寄せられなかった人々が必ずしも不幸ではないというパーセプションギャップが本当のアブノーマルではないかと私は思います。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 3月25日付より

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