寝たきり老人で儲ける方法2 --- 山本 直樹

2016年04月10日 06:00

前回の「寝たきり老人で儲ける方法」の反響が大きかったので、続編を書きます。

要約すると、生活保護の医療扶助を使えば、どんなに手がかかる寝たきり老人であっても、本人も家族も自己負担ゼロで病院に放り込めてしまい、しかも、毎月15万円ぐらいが本人名義の通帳に「保護費」が別枠で入ってくるので、通帳を管理している家族が好きなように使えてしまう、というものでした。

医療現場でよく出会う典型的なケースをいくつか紹介します。

例1)

80歳代女性。自宅で50歳代の息子と二人暮らし。夫は早くに他界している。もともと持病があり働けないため、生活保護受給中。最近さらに元気がなくなり、発熱して食事がとれなくなった。息子さんは「どうせカゼだろう」と考えて、布団に寝かされていた。やがて痰がゼロゼロとからむようになり、呼吸も苦しそうになったので、救急車で搬送されてきました。

救急車の後ろのドアが開いて、ストレッチャーが降ろされる時に、息子さんがぴょんと飛び降りて、僕らに向かって叫びました。鬼の形相で。

「母ちゃんを殺したらお前らも殺す!」

物騒なので守衛を呼びました。彼はいわゆるニートで、病気の母の身を案じるのではなく、母が亡くなると収入が途絶えるのをなにより気にかけていました。

この方は治療の甲斐なく、肺炎で亡くなってしまいました。月末の31日に病状が悪化したのですが、「せめて、来月まで何とかもたせろ」という息子さんの怒号は忘れません。「1日の0時過ぎれば、(保護費が)1か月分もらえるんだからな」というのです。実の親が死の床にあることで動揺していたのならまだしも、今にも人生を閉じそうなお母さんの横で、妙に冷静でカネを少しでも多く受け取ろうとそろばん勘定をしている様子に言葉を失ったのを覚えています。

例2)

68歳男性。脳出血の後遺症で寝たきり。身の回りのことは何一つできず、全介助で意思疎通もほとんど不能。要介護5。身体障害者1級で障害年金をもらっている。療養型の病院に長年入院して生活していましたが、尿路感染症が治らないとして転院搬送されました。

検査してみたら敗血症で危険な状態でした。家族に病状を説明したところ、例1)と同様に、「必ず治せ! 絶対に死なせるんじゃないぞ」と激高されました。一生懸命治療するのはもちろんですが、結果まで保証できるほど医療は簡単ではありません。理由を伺うと「当たり前だろ、生活がかかってるんだからな」とのことでした。

この患者さんがご家族にもたらす収入を考えてみます。障害基礎年金は年額約98万円ですから、月8万円。これに障害厚生年金などが上乗せされているので、仮に月額20万円とします。

高額療養費という制度があります。医療費の自己負担額が高額になった時に、後から一部が払い戻されるという制度です。ICUに入るような重症の場合には、百万円単位で医療費がかかります。人工呼吸器や透析、昇圧剤、抗菌薬などで、仮に5百万円かかったとしても、ありがたいことに高額療養費が適用されると患者さん側はだいたい10万円足らずの支払いで済みます。

年金の20万から医療費の10万を差し引いても、10万は手元に残ります。つまり、家族としては、患者さんを延命させればさせるほど、金銭的にメリットになるわけです。生活保護の医療扶助で無理をいう家族の例は、前回に書きましたが、生保でなくても、普通に年金をもらっている家庭でも、「最後は金目でしょ」というどこかの大臣みたいなことが起こっているわけです。

医療者としても、一納税者としても、こうした事例はやりきれません。何より家族にカネをもたらすために、身体を張って延命処置を受けさせられている患者さんご自身に申し訳ないと思います。

改善策としては、生保や年金の受給者が入院している間は、本人名義の通帳に支払うのをいったん止めることが考えられます。技術的にはマイナンバーを使えば可能でしょう。入院中に発生するおむつ代や日用品費などは、病院から役所に請求すれば、患者さんの不利益にはならないと思うのです。私は法律の素人ですが、条文を読んだ範囲では、国会の議論は必要なさそうです。いかがでしょうか。

山本 直樹     総合内科医

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