「報道の自由」の最大の敵はマスコミ自身である

2016年04月21日 10:59


国連特別報告者のデビッド・ケイ氏が外国特派員協会(実態はフリー記者の集団)で会見した議事録が出ているが、彼の話は何も具体性がない。「記者が匿名を希望するので話が聞けなかった」というが、匿名を条件に何を聞いたのかもいわない印象論だけだ。

彼が報道の自由を阻害している制度としてあげるのは、放送法第4条と独立行政委員会がないことだが、こんな話はわざわざ日本まで来て調査しなくても、国連のファイルに書かれているだろう。問題はその規定を国会で答弁した高市総務相ではなく、放送法を改正しない国会にあるのだ。

そして彼が最大の問題として指摘するのは、記者クラブである。

記者クラブのシステムについても勉強いたしました。また、独立メディアのトップの経営幹部が政府の幹部と会っていると。こんな話を何度も何度も今週聞くことになりました。

その通りである。問題は「政府の圧力」ではなく、記者クラブを中心にした一部マスコミと政府の癒着である。日本政府は、北風ではなく太陽でマスコミを懐柔するのだ。

一例をあげよう。2012年12月下旬、朝日新聞の木村伊量社長(当時)は、総選挙に勝利した直後の自民党の安倍総裁と会食した。彼が首相になると「首相動静」に記録されるが、首班指名の前なら記録に残らないからだ。

木村氏は安倍首相を敵視するキャンペーンをやめて政権と手を握り、2期目も社長をやろうとした。その最大の取引材料が「慰安婦問題で朝日が謝罪する」という約束で、その約束どおり特別調査チームがつくられ、2014年8月に特集記事が出た。

しかし記事の内容が謝罪もしないで開き直るものだったため、かえって社会の批判を浴び、慰安婦問題は再燃してしまった。手打ちに失敗した朝日は、安保法制で大キャンペーンを張って安倍首相を追い込もうとしたが、辞任に追い込まれたのは木村氏のほうだった。

これが日本の政府とマスコミの関係だ。大手新聞は一方で政府を批判しながら、他方では記者クラブの家賃や電気代まで政府に払わせ、軽減税率を適用されている。テレビ局は総務相を批判しながら、自分たちの電波利権は離さない。1~12チャンネルはあいたままだ。

こうした寡占構造が、日本のマスコミが腐る原因なのだ。ケイ氏が警告すべき相手は政府ではなく、既得権を政府に保護されて弱みを握られているマスコミである。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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