池田まきの「でんわ勝手連」は米国では常識的な手法である

渡瀬 裕哉

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(池田まき応援隊イケマッキーズFacebookページから)

補選の結果は予測の範囲内であり、数字以上の成果が出ることなどあり得ない

北海道5区補欠選挙の結果については、与党が勝つことは当たり前の状況だったと思っています。

あえて言うなら、選挙は計算して逆算できる票以上の票は出ないので、

前回の自公票 131394 今回の自公票 135842
前回の野党票 126498 今回の野党票 123517(前回よりも投票率は0.8ポイント低下)

新党大地の選挙協力分を計算に入れると勝ち負けは最初から決していた勝負なので、「北海道5区」で民進党が勝つかも?みたいなことを言っていた人は選挙を知らないと思います。実際の結果としては市レベルでも前回とほぼ変わらない得票傾向であり、全体の投票率が落ちる中で与党側は得票数を増やして勝利しています。(大地票でも脱落した部分もあるでしょうから、概ね妥当な数字だと思います。)

つまり、自公側はスキャンダルの影響などで大勝を逃しましたが、野党側も通常運転通りの票が出ただけなので、この選挙結果について評価するなら、「ハナから結果は分かっていたと思いますが・・・」っていう感じです。そして、自分の率直な感想は「どっちが勝っても罰ゲームみたいな投票結果に興味あるの?」とも思います。

なぜ、新党大地は野党統一候補に協力しないのか?(2015年12月29日*拙稿)

でんわ勝手連は「米国の選挙学校では普通に教えていること」である

筆者は共和党系の保守系選挙学校であるThe Leadership Instituteの選対事務局長を育成する教育カリキュラムを受講したことがありますが、その際に電話作戦の手法についてもレクチャーを受ける機会を得ました。

同レクチャーの中で教えられた電話作戦の手法が、ネット上でボランティアを募集して作成したマニュアルの通りに電話かけを手伝ってもらう、という手法です。まさに今回の「でんわ勝手連」のことであり、2009年当時はなかなか斬新だなと思ったために記憶に残っています。

そのため、今回の池田まき勝手連の「でんわ勝手連」は通常のやり方として米国の選挙では普通に取り入れているものとして理解しています。

それにしても、今回のでんわ勝手連の呼びかけに応じてサンダースのボランティアの方も参加されたという話題性もあり、ネットの使い方や運動のやり方で世界中から情報収集・手法採用を行っている左派の運動にはなかなか関心させられます。

一方、プロの選挙プランナーの皆様から指摘が出ているように、日本では時代遅れの公職選挙法が実質的に民主主義の発展を阻害しているため、同手法を採用することは未成年者対応や外国人対応などの問題があります。

そのため、このやり方が日本で受け入れられるかどうかは分かりませんが、左派系の皆さんが勝手連という形式を取ることでグレーな部分を堂々とスルーしようとする度胸はなかなかのものだと感心しました。(*筆者は現行法については遵守すべきだと思います。)

公職選挙法違反だ!と叫ぶ人々は民主主義の首を自分で絞めていることを学ぶべき

選挙運動の話になると、重箱の隅をつつくようなことを並べて、選挙違反だ!と叫ぶ人がいますが、その際にお願いしたことは「選挙違反だ!」と叫ぶのと同じくらい、「公職選挙法を変えるべき!」と叫んでほしいということです。

現在の公職選挙法の規定には治安維持法時代の名残り(戸別訪問の禁止など)の意味不明なものが多く残っており、筆者は日本は「なんちゃって民主主義国」であるという感覚を持っています。現行の公職選挙法は自由な政治活動や選挙運動を阻害するための法律であると言っても過言ではなく、立候補予定者が有権者に思いや政策を届けることを阻止するための様々な規制の見本市みたいなものです。

上記の問題については全ての立候補経験がある人が同意してくれると思いますが、基本的には現職有利の規定であるために選挙後に公職選挙法が自発的に改正されることはほぼありません。

そのため、一般有権者にまで公職選挙法の問題点が浸透せず、同法が制定されてから50年以上も日本は「なんちゃって民主主義」の下で選挙を行ってきています。(むしろ、選挙期間などは短縮を繰り返しており、なんちゃって民主主義度合は強まっています。)

公職選挙法は投票日と投票方法だけを決めて、後のことは全て有権者の良識に任せるべきです。それ以上の細かい規制などは単なる言論の自由と政治活動の自由への侵害でしかありません。

そのため、今回の池田まきの「でんわ勝手連」について、プロの選挙プランナーの方などから公職選挙法違反が早速叫ばれていることが非常に残念であり、そのような負のエネルギーを公職選挙法の改正というポジティブなほうに向けることが必要だと感じています。

専門家として果たすべき役割を認識し、専門家の皆さんが時代遅れの公職選挙法の規制で飯を食っている存在に堕すことを恥じるべきではないかと思った次第です。

公職選挙法の廃止――さあはじめよう市民の選挙運動 (Civics叢書)
市民政調 選挙制度検討プロジェクトチーム
生活社
2009-05-30

 

 

渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)

早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員
東京茶会(Tokyo Tea Party)事務局長、一般社団法人Japan Conservative Union 理事
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