立憲主義に反する志賀原発への死刑宣告

2016年04月28日 08:05

もしある日、あなたの家に区役所の人が来て、こう言ったらどうするだろうか。

  • 区役所「建築基準法が改正されて、断層の上に家を建ててはいけないことになりました。あなたの家の地下に12万年前に動いた断層があるらしいので、家を取り壊します」
  • あなた「私の家を建てた20年前には、建築基準法にもとづく建築確認をもらって建てたんですよ」
  • 区役所「法律が変わって、昔建てた家にもさかのぼって適用することになったんです」
  • あなた「それは法律の第何条に書いてあるんですか?」
  • 区役所「書いてありません。有識者会合で決まったんです」
  • あなた「その有識者会合の決めたことに区役所は従えと法律に書いてあるんですか?」
  • 区役所「書いてありません。区役所がそう決めたんです」

これはSF小説ではない。原子力規制委員会が27日に受け取った、北陸電力志賀原発について「原子炉建屋直下を通る断層が活断層と解釈するのが合理的」という報告を出した有識者会合なるものは何の根拠法もない集まりで、報告書にも法的拘束力はない。

規制委員会が2013年に決めた新規制基準では、12万~13万年前以降にずれた可能性が否定できない断層を「活断層」と定義し、その上に原子炉建屋などの重要施設を置くことを禁じているが、それまでこういう禁止規定はなかった。

志賀原発1号機の建設が開始されたのは1988年であり、2013年に改正された法律を遡及適用できるという規定はない。もし遡及適用して廃炉にするなら、通産省は北陸電力の地質調査結果を承認して設置許可を出したので、過失は通産省にあり、国家賠償が必要だ。

2基で7000億円の建設費がかかった志賀原発は、北陸電力の最大の資産であり、国がこれを何の法的根拠もなく廃炉にすることは、憲法第29条に定める財産権の侵害である。先週の記事でも書いたように、立憲主義とは「個人の権利・自由を確保するために憲法で国家権力を制限する」ことであり、委員会の措置は立憲主義に反する。

安保法をめぐって「立憲主義を守れ」と騒いでいる人々が、このような巨額の財産権侵害に沈黙しているのは奇妙だ。彼らは憲法で守られるのは正義の味方の人権だけで、悪い電力会社の財産権は侵害してもよいと考えているのだろうか。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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