失敗するビジネス

2016年04月30日 11:16

私も様々なビジネスを通じていろいろな世界を見てきました。その中で一般個人がビジネスで失敗するケースを考えてみたいと思います。

私のところのかつてのテナントさん。5000万円かけて立派なスパを作りました。ロシア人のご夫婦で奥様がホッ ト ストーン スパの有名な先生でしたが自分の店を初めて持つので店舗づくりもこだわりぬきました。猫足の石造りの風呂はエジプトからの特注。天井にはプラネタリウムのごとく星がきらめき、そのバスタブに赤ワイン注ぎ込む極楽の世界の器まではできました。が、建設費用が嵩み過ぎ、運営費用が残っていなかったのです。

このご夫婦が開店後、わずか6か月で夜逃げ屋本舗する直前に御夫婦を捕まえ、物件は全部差し押さえて書類にサインさせこちらの被害を最小限に食い止めました。

次の事例です。金持ちの台湾人と香港人の若者2人がペットショップを開きます。が、数年後、店の運営に関して二人の意見は合わず、一人は役員を降りました。残った一人は事情があり、カナダの東に引っ越します。店は、というとアルバイトを雇いながら店が開いているだけの状態。挙句の果てに売り上げは盗まれるわ、商品は消えるわ、で、これもギブアップです。

彼らは小銭があり、ペット好きという趣味感覚で店を開けたのが失敗の始まりでした。乗っていた車はベンツから中古のアメ車に変わり、ストレスを溜めてかわいそうな状態でありました。しかし、ビジネスの世界はシビアなのがこちらの世界。その場合にはいかに早く諦めるか、これが重要でその思いっきりがその人の将来すら左右します。

日本人による海外起業も往々にして失敗が多いようです。まず、ビジネスの世界に対する情報量が圧倒的に欠如していて日本人の間だけの知識に限られてしまっている場合が多いようです。ところが世の中は深く、思わぬ落とし穴はあちらこちらに開いており、そこに落ち込んだ日本人起業家は数知れず。

もう一つは起業に関する全体的なビジネス知識が圧倒的に少ないと思います。かといって、自分の専門以外の分野を専門家に依頼するととてつもない費用がかかることもあります。特に弁護士代は最近、尋常ではありません。私も先日、ある契約書を2件依頼しただけで200万円以上かかりました。ふざけた金額です。そうなるといかに弁護士を使わずにリーガルドキュメントを作り上げられるか、これにかかってくるのです。

また、仕事上、私もパパスママス(父ちゃんかぁちゃんビジネス)のオーナーさんとも付き合いますので彼らに「オタクの顧問弁護士は」と聞いても「はぁ?」となるし、弁護士代などまず払えません。そうなると私がこう言う場合はこうなんですよ、とイチイチ説明していかねばなりません。

こちらで大きな不動産事業をやっている会社はショッピングモールなどの出店に関し、「素人さんお断り」となるケースが大半です。何故か、といえばパパスママスではビジネスレベルのやり取りができないことが最大の理由です。賃貸借契約書だけでも4-50ページとなり、かなり厳しい条項が並ぶ中でぱっと読んでそれが理解できる一般人がいたら驚きです。難解な言葉とその裏に隠された法律的意味合いを理解するのは並大抵ではなく、逆にそれが出来る水準の人しかビジネスの相手をしてもらえないとも言えるのです。

私も大家として賃貸借契約の標準契約書は準備しています。ざっと5-60ページでしょう。ですが、テナントのひとつ、カナダトップクラスの銀行とのリース契約は銀行の標準契約書を押し付けられています。つまり、彼らは「お前のところの契約フォームなど使えるものか」という姿勢が端からあるわけです。そしてその契約書のトリッキーなこと、よく注意しないと落とし穴だらけで穴が開くほど契約を読み、理解しないと大家がドツボにはまる仕組みになっています。

こう考えるとビジネスはいよいよ難しく、要求されるレベルも髙くなってきています。昔は信用金庫からお金を借りてビジネスをスタートさせる、という話もあったのですが、ビジネススタンダードと起業者に求められるレベルが格段に上がった今、いくら低金利時代でも銀行からお金を借りるところまで行けないというのが本音なのです。お偉い役人はこう言うギトギトしたビジネスのど真ん中の雰囲気をほとんど理解していません。

では新しい起業はもう無理なのか、といえば知恵を出せばよいのだと思います。専門の知識をもった人たちがなにかあれば助け合えるグループをつくればよいのだと思います。台湾には起業できる資金援助のグループがありますが、今はお金も大事ですが、法律、会計、財務、人事、許認可、マーケティング、販売、アフターサービスや瑕疵保証など本業に付きまとう付随知識の範囲が異様に膨れ上がっています。昔はそれでも力づくでできましたが今それを一人でやるのは不可能に近いと思います。

これでは日本を含め、起業の夢は遠い彼方に、ということになりかねません。

起業者の為の仕組みづくり、これが日本でも海外でも一番必要な支援である気がします。私が所属するNPOでもこのような方向性を長期ビジョンとして打ち出すことを提言してみたいと思っています。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 4月30日付より

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