【映画評】シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ

渡 まち子
シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ-オリジナル・サウンドトラック
アベンジャーズは、世界を救う一方で、彼らが各地で繰り広げたバトルが甚大な人的・物的被害を及ぼしたことが問題になり、アベンジャーズは国際的政府組織の管理下に置かれ、活動を制限されることになる。アイアンマンことトニー・スタークはこの処置に賛成するが、アベンジャーズのリーダーとなったキャプテン・アメリカは強く反発し、自発的に平和を守るべきだと主張。2人の対立が高まる中、世界を震撼させるテロ事件が発生する…。

アベンジャースのメンバーが内部分裂するという非常事態を描くアクション大作「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」。「アベンジャーズ」の続編のような位置付けだが、あくまでも物語の軸は、キャプテン・アメリカだ。アベンジャーズのメンバーは、誰もが平和を守りたいと願っているのに、考え方はそれぞれ異なる。個々のパワーが桁外れなだけに、彼らの対立は熾烈を極め、さらにキャプテン・アメリカは、旧友への友情というしがらみもあって、ついにチームはアイアンマン側とキャプテン・アメリカ側の2つに内部分裂してしまう。それぞれの言い分は一理あって、なんともやるせないが、正義、友情といった直球のドラマがしっかりと描かれている。加えて、ヒーロー活動による被害とそこに生じる悲劇という問題提起は、現実世界を鋭く照射した深いテーマだ。

このシリーズでは、ヒーローたちがどんどん増えるが、今回は、復讐を胸に秘めた高貴な身分のヒーローが登場。さらに後半は、自在に空中を飛び回る少年と、小さな小さなヒーローまで!最初から最後までクライマックスのような大事件が次々に起こるが、それらすべてが次のステージへとつながる布石なのだ。内紛という禁断の戦いに、ヒーローたちもとまどい、苦悩する。深いドラマ性とド迫力のアクション、さりげないユーモアと、すべてを丁寧に描き分けるアンソニー・ルッソとジョー・ルッソの両監督の手腕は確かだ。さて、今回登場しなかった、巨大なヒーローと神様は、はたして今後、どうからんでいくのか。「アベンジャーズ」の今後に、目が離せない。

【80点】
(原題「CAPTAIN AMERICA:CIVIL WAR」)
(アメリカ/アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ監督/ロバート・ダウニー・Jr、クリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、他)
(ドラマ性度:★★★★☆)

この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年5月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。