フリーランス医師をなくす方法 

2016年05月02日 06:00

「フリーランス医師」という働き方は、麻酔科では既に珍しくはない。2015年の日本麻酔科学会調査では、「一般病院の59%、大学病院の39%が外部からフリーランス医師を雇用」しており、ドラマ「ドクターX」のように「医師派遣業者に頼る大学病院」の存在も確認されている。国立がんセンターのように、フリーランス医師に頼る有名病院も珍しくなくなった。当然ながら、こういう変化は教授とか院長とか厚労省のエラい人には面白くないらしい。

2016年4月、厚労省の「医療従事者の受給に関する検討会」で、「フリーランスの麻酔科医は、少し悪乗りしている」という不快感丸出し発言があった。とは言え、減らす対策は思いつかなかったようだ。というわけで、大学病院に再び医師を集め、「フリーランス医師をなくす方法」を、当の本人から提案したい。

1.新研修医制度の廃止
フリーランス医師の台頭は、「2004年導入の新研修医制度(=卒後2年間、厚労省指定病院での研修義務化)」と「それに始まる大学医局の弱体化」の影響が大きい。就職したての2年間を「お客様として過ごす」ので、「9000人×2学年」分の医師マンパワーがドブに捨てられ、その後のキャリアパスでもキツい仕事を回避する若手医師が増えた。いいかげんに厚労省はこの制度改革が失敗であったことを認め、速やかに廃止して関係団体を解散すべきだ…が、実際の厚労省は「日本専門医機構」という団体を追加して、卒後3~5年目の研修もさらに監修する気らしい…トホホ。

2.ちゃんと働いているソルジャー中堅医に報いる
「医学生の3~40%は女性」の時代となり、男性医師(+独身女医)に当直が集中して、「コンビニバイト以下の時給で当直×月8回」に疲れ果ててフリーランスに転身した元大学病院勤務医は多い。せめて、医師バイトの相場レベルの当直手当を支払って、激務に報いるべきであろう。基本給は低めに抑え、手術件数や残業時間に応じた一時金を充実させるべきである。

3.脱、年功序列賃金
2の結果、年収が「30代、当直月8回の産科医」>「60代、院長」となるケースも出現するかもしれないが、それを当然と受け入れるべきである。現在「当直月8回の産科医」は「年俸3000万」でも確保困難だが、院長が辞めても代わりは難なく見つかるからである。

4.副業の公認、あるいは医師版Airbnbの導入
女医率上昇につれて大学病院でも「週24時間勤務」のような時短制度が整いつつあるが、現在は事実上ママ女医にしか適用されていない。大学病院における給料アップが困難ならば、時短フレックス勤務を中堅男性医師にも適用し、副業で大胆に稼ぐことを公認すべきである。医師版Airbnbのようなシェアリングエコノミーでもあり、限りある医師を有効に活用できて、過疎地や震災医療にも有用である。そして、こういう変化こそが、真の意味での「雇用のダイバーシティ」だと思う。

要するに、「勤務医の勤務形態をフリーランスに近くする(=雇用の流動化)」ことが、有能勤務医のフリーランス転身の予防策になるのである。また、個々の医師としては「どういう勤務体系でも生きてゆける確かなスキル」を身に着けることが、今後より重要になると確信している。

「フリーランス医師」シリーズ 5/5 -完-

フリーランス麻酔科医

1966年生まれ。フリーランス麻酔科医。地方の非医師家庭に生まれ、某国立大学を卒業。米国留学、医大講師を経て、2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、2012年から、「ドクターX~外科医・大門未知子~」「医師たちの恋愛事情」など医療ドラマの制作協力に携わる。2013年から、東洋経済オンライン「ノマドドクターは見た! 」で論壇デビューし、執筆活動も行う。近著の「フリーランス女医が教える 「名医」と「迷医」の見分け方」で、フリーランス医師の実情をレポートしている。

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筒井 冨美
フリーランス麻酔科医、医学博士

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