厚労省は地域分割して社会保障は「足による投票」で

2016年05月12日 17:34

小泉進次郎氏を事務局長とする2020年以降の経済財政構想小委員会は、厚生労働省を年金、医療、介護を担う「社会保障」、少子化対策などを担う「子ども子育て」、雇用や女性支援を担う「国民生活」に再編する案を中心とする提言をまとめた。

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JBpressにも書いたように、厚労省を解体することは財政改革の第1歩だが、単に3分割するだけではだめだ。まず必要なのは、社会保障関係費の削減である。図のように社会保障給付は116兆円を超えているが、保険料は65兆円しかなく、その赤字を埋めているのが税金だ。

中でも大きいのが、約32兆円の社会保障関係費だ。これは社会保障会計とは別の裁量的経費だが、一般歳出(国債費と地方交付税を除く政策経費)58兆円の半分以上を占めている。これを圧縮しないと、国民負担はこれからの超高齢化で激増する。

その原則としては、まず社会保障会計を独立採算にすることだ。これは保険である以上は当たり前で、基礎年金の一部など法律で決まっているものは変更が困難だが、医療や介護の赤字補填はやめる。労働行政は異質なので、経済産業省に吸収して雇用の流動化をはかる。

また保険料の徴収や支給などの実務は地方社会事務所で行なわれているので、政策決定以外の業務はブロックごとに分割し、財源と一体で移管してはどうか。このとき保険料や徴収方式も各地方の「社会保険ブロック」にまかせる。

たとえばAブロック(関東)の年金制度は現行の賦課方式だが、Bブロック(東海)は積立方式、Cブロック(近畿)はベーシックインカムとする(方式は各地域で住民投票で決める)。こうすると、すでに年金を払い込んだ高齢者は関東に残り、これから年金を払う現役世代は東海地方か近畿地方に移動するだろう。

今の日本は不公平な「老人の高福祉・若者の高負担」になっているので、これを「高福祉・高負担ブロック」と「低福祉・低負担ブロック」に地域分割し、各個人が足による投票で選ぶのだ。この場合、Aブロックに若者が残らなくなるおそれもあるが、すでに年金を払った今の40代以上は残ったほうが得だ。

逆にBブロックに移ると今まで払った保険料はパーになるが、その代わり他人の老後の面倒をみる必要はなくなり、自分の積み立てた年金を自分で受け取る。Cブロックは社会保障を廃止するのと同じで、すべて税の再分配で解決する。ベーシックインカムの支給額はブロック内で決めればいい。

これは私の思いつきで単なるたたき台だが、せっかく厚労省を分割するなら、単に厚生省と労働省に戻してもしょうがない。専門家の批判や反論を期待する。

追記:多くの人から「Aブロックは老人だけになる」という批判をいただいたが、実際には逆に、どのブロックでも高齢者が多数派なので、今まで払った保険料がパーになるB・Cブロックに移行する地方はないだろう。現行方式で独立採算にすると、巨額の財政赤字になる。国の場合は国債で穴埋めできるが、地方債の発行には限度があるので財政再建団体に転落する。つまり「焼け跡リセット」が早まるわけだ。くわしい議論はオフレコ政経ゼミで。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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