サラリーマンは高等教育の登壇でチャンスが拡大する

尾藤 克之

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写真左は著者、右はインタビューに協力いただいた石川氏。

「給料が厳しい」「お小遣いが足りない」と、副業を考えるサラリーマンが最近増加傾向にある。実際にサラリーマンで副業している人はどのくらいいるのだろうか。

まず業種は労働集約型と成果報酬型に分類される。労働集約型としては、引越し、コールセンター、飲食業、清掃、配達などがあり、成果報酬型としては、アフィリエイト、投資などがあげられる。調査方法や調査時期が異なるため単純に比較はできないものの、サラリーマンの約7~20%が副業をしていると推測できる(総務省調査6.8%、インテリジェンス調査20.1%の結果を参照)。

石川和男(以下、石川)は大学や専門学校で講師をしている。講師をしているといっても本業はサラリーマンで平日8時半~17時までは建設会社の総務経理を担当。講師業をしているのは平日夜や日曜日、会社帰りに大学で財務分析講座、日曜日に専門学校で教鞭をとっているそうだ。

●実務や実学について伝えられることがあるか

石川は副業について次のように述べている。

「実学について伝えられるものがあれば、大学、短大、専門学校などの高等教育機関での登壇による機会を増やすべきでしょう。」

しかし登壇にあたり誤った解釈がされていることも危惧している。

「大学、短大で登壇するためには大学院に進学し、英会話が堪能で、論文を提出し博士号を取得していること。専門学校であれば名門大学出身で特定分野の専門性に造詣が深いスペシャリスト。どちらも非常に難易度が高いという誤った認識が定着しています。」(同)

一見すると、石川の経歴は華麗にみえる。しかし石川自身はこれまでの人生は順風満帆ではなかったと振り返っている。

「高校は受験すれば全員合格できる高校に入学し、大学は名前を書けば全員が受かる大学に入学して留年も経験しました。就職はいまでいうブラック企業です。その後、30歳で会社を辞めて税理士試験の勉強をはじめましたが、合格するまでには10年の歳月を費やしました。私は全然エリートには程遠い人生を歩んでいます。」(同)

石川は税理士資格を取得する前から、高等教育機関で登壇を実現していたそうである。そして、登壇することは決して難しくないと次のように説明する。

「実践的なコンテンツが高等教育の場で求められています。イメージしてください。場所は大学の教室、窓の外には緑のキャンパス。あなたは教壇にたち、得意な分野を学生に教えている。学生は目を輝かせ、休憩時間にはあなたのもとに駆け寄って質問をする。これは現実の話です。しかし誰でも登壇できるわけではないので一つの基準を紹介します。」(同)

・弁護士という法律の専門家の立場で、トラブル回避方法を教えたい。
・税理士の知識を活かし、税金の使い道や種類について伝えたい。
・行政書士として開業している。会社設立や許可申請のノウハウを教えたい。
・経営コンサルタントとして、会社組織について伝えたい。
・人事コンサルタントとして、就職活動のアドバイスをしたい。
・ファイナンシャルプランナーの知識を活かし、生活設計について話したい。
・営業一筋。営業の真髄を伝えたい。
・総務、人事、庶務を渡り歩き、会社法、民法などの法律に詳しい。
・今年で退職するが、いままで経験してきた実学を伝えたい。

一つの仕事を極めていて実学があり実践的であること。多くのサラリーマンにとってチャンスがあるものと推測できる。

●サラリーマンが登壇するメリット

またサラリーマンには登壇のメリットが大きいとも述べている。特に実績を重視するビジネス社会での影響は大きいと。

「あなたの名刺に大学講師という肩書きが加わったらどうでしょうか。名刺やプロフィールに『大学講師』『非常勤講師』の肩書きがあるだけで格段に信用度がアップします。知人は企業研修で1時間5万円講師料をもらっていますが大学講義は1時間8,000円で喜んで引き受けています。これは、大学という社会的信用の対価を得ているためです。」(同)

この感覚は著者になる感覚に近いかも知れない。著者であれば誰もが実感するが、自著が書店に平積みにされていたり、面置きされていることは自分の名刺が書店に置かれていることと同じ効果がある。またお客様を訪問する際、セミナー、勉強会などで名刺と一緒に渡すことも可能である。書店売上ランキングに自著がはいっていればそれは快感以外の何者でもない。アドレナリンが一気に噴出される。自著は信頼を高め自分を効果的にPRするためのツールになるわけだ。

「日本人は過去の実績やどこの組織に属しているかで相手の価値を推し量る傾向があります。大学教員の肩書きはそれだけで社会的信用がアップします。実際に講師をやっている人のほとんどは名刺に●●大学非常勤講師という肩書きをいれています。」(同)

文部科学省の学校基本調査(2015)によれば、いま国内には3,948校(大学779校、短大346校、専門学校2,823校)の高等教育機関が存在する。1校に10人の教員がいたとしたら、39,480人(3948校×10人)になります。100人としたら394,800人になる。

「早稲田大学の教授から非常勤講師までの教員数は何人だか知っていますか?なんと5,406人(2014時点)もいます。狭き門ではないと思いますよ。」(同)

皆さまも、これを機会に高等教育の登壇を副業に考えてみてはいかがだろうか。

※石川の新刊
一生モノの副業 この1冊でわかる大学講師のなり方』石川和男・千葉善春(共著)

●尾藤克之(BITO Katsuyuki)
コラムニスト/経営コンサルタント。議員秘書、コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。著書に『ドロのかぶり方』(マイナビ)『キーパーソンを味方につける技術』(ダイヤモンド社)など多数。