GDPと消費税

2016年05月19日 10:17

1-3月のGDP速報が発表になりました。前期比年率1.7%増、という数字は様々な思惑を呼び込みました。

まず、事前コンセンサスより0.3%ポイントほど高かったことで「思ったよりもよかったじゃないか」という声がある一方、うるう年で一日多い分、計算上、GDPは高く押し上げられるため、プラス成長ではないとする見方など様々であります。株価は一旦上げたもののその後、すとんと落とし、結局小幅安で終わるという内容でしたが、中身を見ると銀行株がスーッと上昇しています。理由はGDPが良かったから日銀がマイナス金利幅を増幅させないだろうという推測が働いたものです。

GDPはこの1年ほど振れ幅が小さくなり、プラスマイナスの境目を行き来する状態が続いています。つまりざっくり言えばこの1年、ほとんど成長していない、とも言えるでしょう。その前、14年の第1四半期が高め、第2四半期が大きく下げたのは14年4月1日の消費税の導入による消費者行動が反映したものです。これらを除くと日本経済は正に成熟という言葉がピッタリでプラスの作用とマイナスの作用がお互いに打ち消し合う状況にあると言えるでしょう。

プラスだったことは円安期に国内の景観が上昇し、設備投資が増え、ベアも2年続き、賞与を含め、多少給与に改善があったことや海外からの訪日外国人が消費を支えたことでしょうか?マイナス面は国内消費が外国人のかさ上げ分を除けば伸び率が低迷したこと、住宅についても冷えてきていることがでしょう。更に今年に入って急速な円高になったことで多くの企業の2017年3月期予想が前年度から大きく下方修正している点が気になります。近いうちに日経が取りまとめると思いますが、予想利益は16年比で10-15%ぐらい下回る感覚ではないでしょうか?

言い換えれば日銀がどれだけ金融緩和政策を行ってもほとんど効果が表れてなかったとも言えますし、安倍首相が政策的に景気を押し上げようとした様々なプランも十分に効果が出る状態になっていないとも言えそうです。

個人的には安倍首相も黒田総裁も相当頑張って踏み込んだつもりなのでしょうからこれ以上悪くいうつもりはありませんが、結果が伴っていないことは事実です。更にはオリンピック景気もやってくる気配がないというのはどういうことなのでしょうか?経済効果や盛り上がりが今のところまだ水面下の建設事業に限定されているということもあります。

思い起こせば64年の東京オリンピックの際には新幹線やら東名高速など日本をリフォームするほどの効果があり、戦後日本から離脱するという明白なテーゼがあったと思います。正に五輪の本来の目的が機能したわけです。ところが今回の五輪は招致した東京都知事、それを引き継いだ都知事ともにミソをつけていることや新国立やエンブレム問題など楽しい話題がほとんどないスタートを切っていることもマイナス要因でしょう。

オリンピック懐疑論のご意見も頂戴していますが、私も以前からそう思っています。いまや、各スポーツ分野で世界大会がそれぞれ行なわれている中でオリンピックの本来の効果は維持できなくなりつつあるでしょう。抜本的見直しが必要です。

さて、日本の景気の話ですが、岡田民進党代表が「来年の消費税は上げるべきではない」と18日の党首討論で明言したことで国会内でざわめきが起きるほどだったと報じられています。岡田代表が同趣旨のことを2-3週間前にインタビューで述べていたので「ざわめき」が何を意味しているのか、私には今ひとつわからないのですが、氏の趣旨は「だからアベノミクスは失敗したので責任を取れ」ということでしょう。まぁ党利党略の話ですが、安倍首相も既に引き上げ時期延期方向で検討しているわけですから「さすが、民進党」という声にもならないでしょう。

では財源問題はどうするのか、ですが、思いっきり違う方法を考えてみたらどうでしょうか?私がふと思ったのが個人資産にかかる資産税導入です。多分、ほとんど俎上に上がったことはないと思います。個人資産に対して一定額を超える部分について毎年、僅かながらも課税するという発想です。但し、からくりはここで課税した金額は相続税の支払いの際、全額控除できるとするものです。(あるいは資産が一定額を下回ると払った税金が還付される仕組みです。)

これは個人が相続税対策を打ち出しにくくするとともに消費や贈与の前倒しを促進し、残された者に掛かる相続税負担を極力減らすという発想です。税務当局からすると税の前倒し支払いが生じるとともに資産の活性化がおきます。勿論、この計算は一筋縄ではいきませんが、日本独特のスタイルにはワークすると思います。

企業ベースでは資産税というものがかつて存在し、カナダでも90年代までありました。「大企業税」というもので純資産額に対して確か0.6%程度の税金がかかっていましたが、極めて悪評だったため、その後廃止されました。但し、私の案は相続税の前払い的発想と資産流動化ですからご批判は多いと思いますが、考え方としては今の消費税よりも面白いと思います。

消費税がここまで叩かれる理由の一つは消費税の高い北欧などの生活レベルと日本の格差レベルの相違ではないかと思います。経済的観点でみると日本の貧困率は16%程度ですが、北欧諸国はせいぜい5%前後です。つまり国民に平等に課税する消費税は貧困層が少ない国家では機能しますが、日本のように所得格差が大きいところでは難しいのであります。この点もあまり指摘されてこなかったと思います。

私が財務省の役人なら個人資産に目をつけないはずはないのですが、政治的に国民を敵に回すことになるのでしょうね。それこそそんな発案をした人はボディーガードが必要になってしまうかもしれません。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 5月19日付より

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