電気自動車を巡る世界大競争に日本は勝ち残れるか

2016年05月23日 06:00

今、官民をあげて、電気自動車を巡る世界大競争が勃発しています。

アメリカでは、「テスラが日本の自動車・電機メーカーを破壊する日」で述べたように、業界の異端児イーロンマスクが2016年3月にモデル3を発表し40万台近くの予約を獲得しました。ただ、本当に作れるのか疑問の声がわき上がっていますが、しかし、自動車メーカーに火を付けたのは事実です。老舗GMシボレー・ボルトやフォードもこれに追随しています。アメリカ政府も、例えばカリフォルニア州は、ゼロ・ゼロエミッション車(EVまたは燃料電池車)規制(ZEV規制)を強化して、各自動車メーカーに2025年までにこのZEVの販売をカリフォルニア州新車販売台数の15%とする販売義務付けています。その基準が満たせないと規制を満たした他車からクレジットを購入するか、多額の罰金を納入するかといった規定です。

ドイツでは2020年までの100万台の電気自動車普及に向け、PHV向け補助金制度を2016年5月18日に政府が承認しました。BMWは、「もう車は売らない。電気自動車関連のサービスを売る。」とモデルチェンジに躍起です。

韓国では、政府・産業通商資源部は昨年、2030年までの新エネルギー産業戦略を発表し、電気自動車(EV)の累計販売台数を100万台に到達させる目標を立てました。この目標では、韓国では2030年までに市街地を走る3万3000台の路線バスをすべてEVに置き換える、さらに大型の電力貯蔵システム(ESS)のカバー範囲拡大するなどの、全国のEVインフラ建設を加速させるとしています。中国と韓国のリチウムイオン電池製造を巡るつばぜり合いが起きています。

中国は、、グローバル経済の終焉とIoT革命とシェア経済の進展を敏感に察知し、中国のメガバブル崩壊を防ぐべく、ありったけの資源を電気自動車と電池・再生可能エネルギー普及に投下しています。鉄鋼が売れず、スマホが売れなくなったから、あとは電気自動車という訳です。

中国の動画配信大手で、スマホやテレビ生産・販売事業も手掛けるIT企業「LeEco」の創業者兼CEOジア・ユエティン氏。彼は中国産業界のトランプのようなビッグマウスですが、「車は4つのタイヤがあることを除けばモバイル端末と同じだ。本質的にはスマートフォンやタブレットと同じだよ。われわれは(EVで先行する)米テスラを追い抜き、新時代に向けて業界をリードしていきたい」と豪語しています。

 

スマホと電気自動車は同じ ファラデー・フューチャーCEO吠える

一方、日本ですが、政府は2016年5月19日、産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)を開き、新しい成長戦略の素案をまとめました。人工知能(AI)などを活用する「第4次産業革命」を推進し、首相が掲げる「名目国内総生産(GDP)600兆円」を達成したいとのこと。これに対するメデイアの反応は、多くの項目を総花的に並べていて、「迫力不足」と冷ややかです。

しかし、その「総花」のなかに電気自動車やV2Gが一切例示されていませんのが気になるとことろです。燃料電池への配慮なのでしょう。

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一方、民間は独自の動きを見せ、例えば、日産自動車は、英国で革新的な分散電力システムを英国で発売開始しています。

さて、欧米、中国、韓国、日本と各馬出走ゲートで鼻息荒く大競争への突入の準備をはかっておりますが、この新しいゲームは最後に誰が勝つのでしょうか。「LeEco」の創業者兼CEOジア・ユエティン氏のように、電気自動車はスマホと同じだから、コスト競争力のある中国が勝つのか?それとも、インテグレーションで勝る韓国か?もの作りドイツ・日本か?頭脳のアメリカか?

その答えを探るためには、この新しいマーケットは次の図のように三層構造にあることを理解することが大事でしょう。

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まず、電気自動車の主要部品であるリチウムイオンバッテリーの生産で誰が勝つか?次に、電気自動車の生産でだれが勝つか?最後に電気自動車も部品として組み込まれたEnergy Management System(EMS)で誰が勝つかです。

EMSについては拙稿(中央集権型から分散型へのパラダイムシフトエネルギーと交通と通信の融合)をご覧下さい。

このうち、電池は価格以外での差別化が難しいコモディティなので、まずは日本がリード、次に韓国に抜かれて、最後に中国が勝つというスマホや半導体が辿ったレース展開を予想します。

次に、電気自動車ですが、これは価格が大いに影響しますが、やはり車は命を載せて走るので、「スマホと同じと」CEOが言い切ってしまうデリカシーのない中国製は、特に日本の消費者は受け入れないでしょう。私はそんなCEOがいる会社の車には乗りません。何かあっても、人の命がもの扱いされそうです。

また、電気自動車をそれ単体として見ると韓国製にも分がありそうですが、アフターダービスも含めたシステムの一部として見たときに、OEM供給はあり得ても韓国ブランドは先進国では浸透しないでしょうね。システムメンテの世界は奥が深いので、きめの細かいおもてなしの日本、質実剛健で堅牢なシステムを売りにするドイツ、奇抜なアイデアであっと言わせるアメリカが三つどもえの争いになるでしょう。

私は日本勢が勝つ可能性はかなりあると思います。ある意味で、政府が燃料電池に傾注してくれて、電気自動車に関して民間企業にちょっかいを出さない今の状況はいいかもしれません。トヨタ・日産・ホンダが欧米でシステム構築の武者修行して、2017年を目途に完全電力自由化の中でEMSを逆輸入するというのがベストシナリオですね。

Nick Sakai  ブログ ツイッター

 

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