人材派遣業という中抜きモデルを破壊するIoT革命

2016年05月24日 11:00

シェアリング経済の象徴的なアプリはAir B&BとUberですね。これは、両方とも、「もの」を持っている人と使いたい人のコミュニケーションコストをITアプリで圧倒的に引き下げて、「もの」の共有を仲立ちする仕組みです。その「もの」が「自動車」であったり「宿泊場所」であったりするのですが、新規参入者は既得権者であるタクシー業界やホテル業界の強烈な抵抗とロビー活動にあっております。政策規制当局もおざなりの規制緩和に留まっていて、Uberなんて要らないもん!でチキリンさんも批判されています。

さて、今日、私が取り上げたいのは人材派遣です。下の図のように人材派遣というビジネスも、「「労働力」という「もの」を持っている人」、と「「労働力」という「もの」を使いたい会社」をマッチするということでは、構造としては、Air B&BとUberと一緒なのですね。

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さて、では「労働力」の利用者たる会社から、「労働力」の提供者に払う料金のうち、そのマージンとしてどれくらい中抜きされているかというと、調べてもなかなか公式なデータは見つかりません。

やっとたどり着いたのが限界集落からこんにちはさんのブログ。この人も同じ問題意識をもって、公開情報を手作業で地道に集計。その結果、なんと最大50%、中位でも30%程度とはじき出しています。皆さんはこの水準をどう思われますか?

ちなみに、されにこの3割削られた中から、さらに交通費・寮費やらが引かれ、さらに訳の解らない経費などが引かれていくのでしょうね。手元にいったい何割残るのか。私はこの中抜き3割は相当高い水準だと思いますね。

派遣会社はどのぐらいマージンを引いているのか調べてみた

限界集落からこんにちは さんからの引用

<調査概要>

・調査期間:2015年1月10日~1月25日
・調査対象企業:一般社団法人 日本人材派遣協会(JASSA)の登録企業全部
・調査サンプル企業数:560社
・リストアップ事業所数:841拠点
・調査方法:インターネットを使い該当情報の有無を各社ホームページ上で確認する

<調査結果>
・マージン率の公開率:19.1%(公開企業が107社、非公開企業が453社)
・全体平均マージン率:26.8%
・上位下位10%を除いた中間平均マージン率:26.6%
・マージン率最大値:50.0%(旭化成アミダス株式会社 IT事業グループ)
・マージン率最低値:11.6%(株式会社インテリジェンス 九州支社)

<調査データPDFファイル>
・アイウエオ順(オリジナルデータ)
・マージン率ランキング順
・地域別順
※2016年版調査データの公開に伴い公開停止。こちらのデータが欲しい方はメールでご連絡ください。

<データ注意事項>
1、マージン率は各社の公開値に対し少数点第二位を切り上げ。
2、マージン率0%の事業所は統計目的上、平均値などの計算では除外対象とした。
3、マージン率数値は各社が発表している直近年度のデータを引用。
4、「2012年12月~2013年12月末」より前のデータしか公開していない企業は「×(非公開)」評価として扱った。
5、公開データの事業年度が明らかでない会社は今回に限り、「○(公開)」評価として扱った。
6、本社で派遣事業を行っていない企業は便宜上、一番上に来る事業所を「本社」として表記した。
7、交通費を賃金に含めるマージン率の計算方法を優先的に掲載。
8、個人による調査のためデータの誤字脱字はもちろん、情報が公開されているにもかかわらず見落としている可能性もございます。この点に関しては予め了解の上、一つの調査データとして参考していただくと助かります。

しかも、限界集落からこんにちはさん調べでは、こうしたデータを公開している方がむしろ少数派で、大手企業は公表すらしていないという状況だそうです。あの高名なR社の関連企業や、CSRに力を入れ女性の味方として売っているP社や、野球場の冠にもなっているF社さんなども公開されていないとか。

そもそも人材派遣法とは何かというと、元々職業安定法で、賃金の中間搾取などを防ぐため「労働者供給事業」を禁じていたのですが、その例外として1985年に制定されたもののです。当初は専門業務に対象業務を絞っていましたが、2003年に「小泉改革」で、例外扱いで禁止だった製造業および医療業務への派遣を解禁し、専門的26業種は派遣期間が3年から無制限に、それ以外の製造業を除いた業種では派遣期間の上限を1年から3年になりました。

つまり、人材派遣業というのは「労働法制という岩盤規制の撤廃」として鳴り物入りで出てきたビジネスなのです。ここは大変重要です。私は、これを「規制緩和」と呼ぶのは妥当ではないとは思いますが、だがしかし当時の小泉改革の規制緩和の目玉策だったわけです。だから、人材派遣事業者は、仮に、さらに彼らのビジネスを脅かす新しい「超規制緩和」モデルが導入されても、絶対に、「人材派遣事業の規制を保護するべき」などというポジションは取る資格はないはずです。

そこで皆様のお耳に入れたいのが、今、実際にこの「古い人材派遣事業モデル」を脅かす事態が発生しているということです。ICTアプリを使った新規参入者が現れれば、既存業界の30%などという暴利とも言えるマージンはあっという間に一桁になるでしょう。私が考えつくくらいですから、利に敏い方はすでにスタートアップを始めていると思います。派遣が欲しい会社がアプリで検索、近所にいる時間に余裕がある方が応募する、両者見合えばポイントで決済。あら簡単。

では人材派遣事業者が世の中に存在する意義とは何でしょうか?まず第一に、使う側と使われる側のミスマッチを防ぐことです。第二に条件で折り合わなかったらすぐに、契約を解除できることです。面倒くさい「指揮命令権」や「労務管理」を代行してくれることです。

しかし、これこそICTアプリの最も得意なところです。人を使う企業にしてみれば、どこの馬の骨かわからない人物をリクルートするコストは膨大です。だから派遣事業者にアウトソースして手間を省いているわけですが、しかし人材派遣会社よりも、より迅速に、適性のある派遣労働者を検索できて、契約で折り合えばいつでも更新・満了できるというシステムがあれば膨大なコストダウンになります。UberやAirB&Bのように「出品者」の評判の履歴が残っているので安心です。だから、間に業者をいれなくても直接レビューして選択できるようになればいい訳です。

で、このシステムの一番のメリットは「ものを提供する側=派遣労働者」側にあって、彼らも、「ブラック派遣先」をサービスを提供した後に評価できるようになるので、企業の淘汰が進みます。口づてでなく星で定量的に評価されるブラック企業はいくら高い金額を提示しても誰も集まらず、ホワイト企業は安くても集まるということがIoT革命では簡単に起こります。このような市場メカニズムで職場のホワイト化が進みます。

こうした「破壊的イノベーション」を持ち込む参入者に、既存の大手人材派遣業者は、強烈なロビー活動をしかけて「業界の保護」を訴えて来ると思います。「労働者」の保護の名目で、ちょうどタクシー業界が「利用者の保護」をうたい文句にするように。例えば、「派遣者のしっかりした養成が疎かになる」や、「指揮命令がしっかりできない」などです。

しかし、業界は現在圧倒的に不利な状況にあります。何故2004年に中間搾取の脱法行為とも言える派遣法改正が起きたのかというと、当時はグローバル経済で中国の工場労働者に負けてしまうという日本株式会社の危機感があったことと、当時、人余りが深刻で「買い手市場だった」ことが背景にあります。しかし、今やグローバル経済は終焉し、少子高齢化で圧倒的な人手不足が発生しています。今は、売り手市場なので、このアプリが導入されれば、急速に普及する可能性があります。

今こそ破壊的革新をもたらす価格破壊人材派遣アプリを誰かがスタートアップして、「人材派遣業」という岩盤規制を打破し、このような阿漕な中抜きモデルを根絶させる時が来ています。

いやいや痛快な時代がやってきましたね。「立て万国の労働者!」

Nick Sakai  ブログ ツイッター

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