貧乏暇なし

たまに会う人に「最近、どう?」と聞かれると「貧乏、暇なしだよ」と答えています。聞く方は自重しているのではないかと思われるようですが、本当にバタバタして余裕がないことが多いのです。多分、これは性格の問題で余裕があると必ず何かを詰め込んで24時間を濃縮圧密状態にしてしまう貧乏性が招いた結果なのでしょう。

サラリーマンをしているとき、ある上司が「仕事なんて深堀すればいくらでも溢れてくるんだから結局、何処であきらめるか次第だよね」と述べていたその言葉を忘れられません。9時-5時で終わらせようと思えばそれで終わるし、週末も根詰めないとダメな様に追い込むことが出来ます。これは一種のワークライフバランスで悪い言い方をすれば仕事が好きな人ほどライフを切り詰めるわけです。仕事があまり好きでなければなるべく定刻で終わってライフの比重を上げるかもしれません。

ビジネス系のコンサルタントなどは猛烈型の人が多くて、睡眠時間さえ削って仕事せよ、勉強せよ、営業せよと吠えている人も多く見受けられます。それは当然の話で彼らはお金を取ってその人の給与なり社業を改善しようとするのですからもっと働かせることで成績を向上させないとコンサルタントの価値がなくなる訳です。

ここでコンサルの言う通り頑張ると「さすが、○○先生、おかげで売り上げがこれだけ伸びました」といったお礼状が届き、それを顧客からの声として宣伝に使う訳です。ところがこのコンサルも使い続けないとだんだん効果が薄れてくるわけで「やっぱり○○先生がいないとだめだ」というコンサルの術中にはまるわけです。英語で言うpump up(気合を入れて頑張ろう!)というのは自転車のタイヤの空気入れではないですが、ちょっと抜けてきたらそこでまた足すようなものなのでしょう。

私の場合、何がバタバタしているのか、といえば現状に絶対に満足せず、常に改善を考えているからだと思います。業務がスムーズに行われるのは当然ですが、顧客がどうやったら更に満足するのか、どうやったらライバルと圧倒的な差をつけることが出来るのか、ここにフォーカスしています。

その中で海外で仕事する私が最近心がけていることがあります。それはコミュニケーションです。電話、会議、メールなど媒介手段は何でもよいのですが、とにかく相手と徹底的にやり取りし、こちらがどれだけ顧客に熱心であるか、その姿勢を見せることにしているのです。このスタイルは海外における日本人としてはかなりユニークかもしれません。言葉の問題もあるのですが、一番大事なのは相手を説得させるだけの論理性であります。

やり取りをしながら「このお客様は我々に何を期待しているのだろう?」と推測し、その期待をどこまで現実化させ、水平展開できるか、を探っていきます。もしも似たような声がいくつもあるのならそこが当社のサービスで絶対的な弱点ですから資金を投じてでも改善していくのです。

例えばセキュリティに対して高い期待があるかもしれません。顧客サービスがいつでも受けられることを望んでいるかもしれません。そのボイスに対してすぐさま対応して細かくコミュニケーションすることで私は顧客との信頼関係を築いています。

BtoCの業務の場合残念ながら相手の声は9時-5時、月-金の枠では収まりません。ですので例えばマリーナは7日営業が普通ですし、レンタカーや駐車場は24時間営業で対応しているのです。

そこまでしたら稼いでいるだろうと邪推されると思いますが、せいぜい人並みです。理由は安く提供するからでしょう。当社のサービスが安いのは理由があります。少人数、本社等のオーバーヘッドがない、宣伝広告費もほとんどなく口コミでお客さんが集まってくることがあるでしょう。

実はインターネットマーケティングで最近思うことはかつてはウェブなどでいかに格好良く見せ、検索で上に上がるようにするかが絶対不可欠なテクニックだと思われていました。が、今はSNSの時代で顧客が友人を含め、勝手に繋がっています。ここで「ヒロさんのところのレンタカー、良かったよ」とか「彼はすごくいい人だよ」とか「彼に言えばどうにかしてくれるよ」という口コミがSNSを通じて拡散してくればそれでOKなんです。

つまり宣伝技術ではなく、そのサービスを受けた人が良かったよ、とつぶやいてもらえる本当の満足度を提供することが全てなのです。私のビジネスはここに全精力を投入しています。スタッフから「このお客さん、クレームがひどくてたまらない」と嫌がる客を引き受け、そのわだかまりを10日ぐらいで解消させるのは引き受けてからまめなやり取りと論理的アプローチで相手に納得させることしかないんです。

これは私が零細企業の社長だからこそできる即断即決と電話越しに思いついたアイディアをすぐにオファーできるフレキシビリティがあるからでしょう。

ですが、さすが外国です。一つひとつのやり取りは十人十色。ここが一番難しくマニュアルもなければ解決方法の答えも全部カスタムメードです。これが私を貧乏暇なしにさせる最大の理由です。ですが、お客さんとやり取りして説得できた時は嬉しいものです。こんなささやかな幸せを求めて今日も暇なしの日を送っています。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 5月29日付より