安倍首相の苦悩

2016年06月02日 10:14

消費税引き上げ延期を正式に表明、衆参同時選挙も否定しました。野党のみならず、与党幹部からも様々な異論が飛び交う中、安倍首相は数か月に及び悩み、苦しんだ末、判断を下しました。ここはある程度想定通りでした。私が昨年12月に他紙で書いた2016年びっくり10大ニュースには「安倍政権、再び消費税問題でホットシートに」としていましたがホットシートどころか折れてしまったわけです。

さて、首相の会見内容を拝見しました。身内も含め、様々な声が高まる中、ニッポン丸をどうかじ取りするか、今まで以上に責任ある、そして、注目される政権運営となります。その参議院選挙、首相の目標は自民単独過半数、とのことですから国民はそれでも安倍首相に期待することを想定しているのでしょう。(個人的には消去方式で行くと彼しか残らない、という気もいたします。逆立ちしても麻生さんではないし、岸田さんは外交をさりげなくこなす次期有力首相候補でありますが、今は外交より経済です。そして次の首相はまた消費税問題と立ち向かわねばなりません。)

首相の会見で経済関係を一言で並べるとこうなるのでしょうか?

サミットでも表明した通り世界及び日本経済は強い下振れ懸念がある中でアベノミクス、三本矢、一億総活躍を駆使してこの難局を乗り切る。またTPPと民間の国内投資促進を促し労働の構造的問題も対処していく。

正直、ポピュラーな言葉を全部並べただけなのですが、このところ、私はやや違う視点を考え始めています。労働力については近日中に別トピを上げますのでそちらでカバーさせてもらいますが、、要は一億総活躍時代が招く低賃金化の懸念であります。これがデフレから脱却できなくなる要因となっているかもしれません。

もう一つ、安倍首相が強い意志をもって推進しているのがTPPであります。ところが5月30日の日経にこれに一石を投じるかもしれない地味な記事があります。「世界の貿易、謎の低迷」であります。世界経済は年3%程度成長しているのに2015年以降世界貿易は横ばいと報じられています。GDPと比べた世界貿易量は11年以降下落続き、日本の輸出シェアも5%台前半まで下がってきているそうです。

日経がなぜ「謎」という言葉を使ったかといえばオールドエコノミーでは貿易量の増大と世界経済の成長はリンクして持ちつ持たれつの関係であると理解されているからです。それ故、戦後、アメリカは自由貿易を標榜し、世界の関税の壁を破り、自由貿易協定を進めてきました。この教科書的発想がこのところ加速度的に崩れてかかっている可能性を十分検証する必要があります。もしかするとTPPそのものを否定するかもしれません。

この「謎」のヒントは企業の現地化であろうと推測します。理由は「地産地消」のみならず、適度な二国間貿易協定であるFTAにより企業のローカルナイズ化を推し進められるからです。また為替のヘッジに有効な手段でもあるでしょう。つまり、かつては日本から爆発的輸出を行ってきましたが国家間の貿易摩擦問題を解消し、相手国の雇用を促進する為に輸出そのものを否定しつつあるのが現代の企業運営であります。事実、ホンダの自動車輸出比率はかつての5割以上から今はたった3%程度なのです。

ここでいう「適度なFTA」とは企業が作る長期戦略とパズルのように散らばるFTAの関係であります。FTAは当事者間だけがメリットがあると思われがちですが、企業は何処にでも動けるメリットがあり、どこかの国がFTAを進めれば進めるほどその甘い汁は日本企業にも落ちてくる仕組みであります。

とすればTPPは政府レベルでの満足度創出には意味があるのかもしれませんが、企業ベースではあまりメリットはないかもしれません。そこにあまり力点を入れるより活発な企業活動を日本経済にどう反映させるか、そちらの方が重要になってきています。

日本企業は儲けています。しかしその企業の株主は日本人とは限りません。そして配当は海外に漏れるわけです。日本人は裕福ではない、企業に務める社員も裕福ではない、だが、海外投資家を含めた株主だけがおいしい思いをするこの仕組みの是正は考えた方がよさそうです。また、資産税のアイディアが最近、あちらこちらで聞こえてきました。私も少し前に資産税への取り組みについてこのブログで書かせて頂きました。

今、日本経済も世界経済も大変革中であります。この変革はかつての常識をことごとく覆し、永続的なビジネスモデルがワークしにくくなったとも言えます。当然ながら稼ぎ方も働き方も変わってきたわけですから今までの延長線上から離脱し、全く新しいスタイルを構築しなくてはいけないと考えています。

野党や自民の重鎮は安倍首相のチャレンジの足を引っ張るのではなく一緒に考え、前向きのアイディアを討論していく形にすべきでしょう。アベノミクスは失敗したから内閣不信任案では野党のレベルは100年たっても変わらないことになります。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 6月2日付より

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