次世代知財システムで世界をリードしたい

2016年08月01日 11:30

次世代知財システム検討委員会。とりまとめ会合。
アジェンダは、フェアユース、AI、3Dプリンティング、データベース。
世界をリードする議論だったと自負します。

「IoT、ビッグデータ、AIなどデジタル・ネットワークの発達を最大限に活用することで、新たなビジネス・イノベーションを促進するとともに、社会を豊かにする新しい文化の発展に結びつけていくための次世代の知財システム」という基本認識は合意に至りました。

AIが生む創作物に関しては、保護策とプラットフォーム対策を検討するとともに、世界に先駆けて取り組んでいる日本の議論を海外発信する、という点も合意。

国境を越える侵害問題について、リーチサイトへの法制対応を進める。オンライン広告についても手を打つ。対策の実効性を高めるためにプラットフォームとも連携する。という点も合意です。

ネット化に対応する仕組み。米国型フェアユース、英国型フェアディーリングなど柔軟な権利制限、拡大集中許諾、裁定制度の拡充、報酬請求権化などさまざまな手段を検討し、新システムを構築する方向では合意しました。

しかし、「柔軟な権利制限」を巡っては、最後まで揺れました。
「早期の法改正」という方向は打ち出したものの、どのような仕組みをどんな速さで実現するか。その記述は、委員、事務局、そして霞が関の調整マター。しかもこれは与党の論議や国会情勢とも絡む難しい方程式でした。

なお、議論はあっさり通過しましたが、権利制限導入に当って「ガイドラインの策定」も盛り込まれたのは実は大きいと考えます。

著作権法は事業法ではなく、だから主務大臣が公定解釈を下すことがない。疑義があれば裁判を起こすしかないんです。だけど行政が一定のガイドラインを示すことで、ここまではシロ・これはクロが一応は分かりやすくなる。専門家+政府+司法が連携して作ればいいと考えます。

もう一つのヒットは、最後の文章。
施行から50年を迎える著作権法に関し、「次世代の著作権制度のあり方について、今後、具体的な検討が開始されることが期待される。」と記述。50年ぶりの全面見直しを書き込みました。

さて、とりまとめ2回めの会議、しかも年度をまたがっての異例開催、さらに、島尻大臣のほか、副大臣・政務官を交えての重い最終回。しゃんしゃん会合。
・・とはならないのが、この会議であります。

田村委員:情報の量的拡大だけでなく、情報の多様化と利用法の多様化を前面に打ち出すべき。
水越委員:AI創作物について、海外だけでなく国内もさらなる議論喚起が必要。

→ですねぇ・・。

瀬尾委員:最後の部分、「期待される」では弱い。もっと前向きな記述にすべきだ。
赤松委員:フェアユースにもっと前向きなことを強調した記述にすべき。

→調整がつらいけどねぇ・・。

福井委員:画期的報告だ。権利処理コストをいかに下げるか。米国はプラットフォームが巨大化したが日本の知財収支は赤字。状況を直視すべき。残された時間は少ない。

福井委員:各論1.権利制限は立法に向けた現実的提案。2.権利者団体は保護強化だけでなく流通促進の姿勢を見せている。拡大集中許諾の運用を注視しよう。3.教育が重要。文学・芸術・メディア系では著作権教育を必修化すべき。

瀬尾委員:日本のコンテンツは負けてはいない。負けているのはソフトウェア。ITインフラの部分。

喜連川委員:ハード→ソフト→サービス→データへとゲームが変わっている。変化についていけるかが問題。われわれがグーグルブックをなぜ作れなかったのかが問題。イノベーションを阻害するレギュレーションのしがらみを打破しなければ。

宮島委員:危機感の共有が足りない。日本社会のリスクを前に出し、より伝えやすくすべき。
喜連川委員:読んだ人がわかりやすく、ワクワクするようにすべき。

→これは合意する。報告書をどう書くかより、この議事録をどうプレイアップするか、そしてわれわれ委員がどう情報発信するかということかと。

福井委員:多くのメニューの組み合わせで目的を達成することが明確にされた報告。権利制限+孤児著作物対策+拡大集中許諾+集約データベース。官と民の連携が重要。

という議論を経て、とりまとめとし、座長一任をとりつけましたが、権利制限や最後の締めなど、記述への異論もあり、まだ調整が残ります。あと一息、がんばります。

最後に一言あいさつしました。

「開催前にメンバー表をみて、盛り上がることは間違いないという期待と、まとまるのか?という不安とがよぎった。その期待と不安は的中した。

AI、3D、BDに政府がここまで取り組むのは例がなく、国際社会をリードする議論ができた。50年ぶりに次世代制度を検討すると明記したのも大きい。ただ、これが入口であり、ここから始まる。ワクワクする。

一方、この委員会は好き勝手な放談だけでなく、それを政府・知財計画に持ち込むというミッションがあり、とりまとめに関係者に苦労をかけた。この報告書より議事録のほうが読み物としては面白いだろう。この成果を内外に発信することがわれわれの課題。委員のみなさんにお願いする。」

さいごに。島尻大臣から、ぼくがこんなに悩む姿を初めて見た、とのコメントがありました。
これを踏まえ、知財計画2016を自信をもって進めるとのこと。よろしくおねがいします。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年8月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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