事業継承問題の思案

2016年08月07日 10:37

事業継承は日本国内のみならず一部の海外の日系社会でも同じ問題を抱えています。特に古くから移民が日系社会を形成した南北アメリカ大陸ではその傾向が強いかと思います。ここバンクーバーでも日本でも身近な問題になった事業継承についてどのように考えたらよいのか、思案してみましょう。

バンクーバーのケースで見ると御子息がいる場合には家族内継承をしている、あるいはするつもりのところが主流であります。中には親の仕事を継ぎたくないといって全く違う分野に進んで親を困らせたり、子供が日本語が全然できず日本向けの仕事が任せられないというケースも確かにあります。しかしながら一般的には、カナダのように起業者に有利な税制に加えて大手企業が少ない中、業績次第で首切りも頻発するわけですから親の基盤を引き継ぎ、自分の会社でやりくりするのは長期的な安全策の一つではあります。

一方、日本国内も戦後直後は個人事業がその再生の発端でありました。あのトヨタですらドジョウの養殖から鍋、釜製造、あるいは住宅など個人事業に近いこともやりながらの再スタートを切っています。ところが高度成長期になるとより大きな企業が有利になり多くのサラリーマンを生みました。最近では投資余力を持ち最新の技術やマーケティング、経営ノウハウを取り入れた会社が生き残りをかけたエリート集団を形成しているようにも見受けられます。以前にも書きましたが、日本の個人経営事業をぶっ潰したのは大規模小売店舗法を巡るスーパーや百貨店の進出が第一弾だとすればコンビニの爆発的増加がその第二弾であると考えています。

商店街側にも問題はあります。個人商店を束ねた商店街や商工会などが一枚岩になれず、発想の転換もできませんでした。個人商店の子息はダサい親父の店舗を継がず、スーツが着られる一流会社のサラリーマンになったわけです。それこそ昔を知っている人ならば「あの人は勤め人」という別世界イメージもあったはずです。結果として商店街は歯抜けになり、衰退の一途をたどっていきます。

世の中、変わりつつあるのかな、と思うのがバブル崩壊後、終身雇用は当たり前ではなくなり、転職や非正規雇用が普通になりました。我々の時代には男30代半ばまでが転職の最後のチャンスと言われましたが、今では社長を公募するところもあるわけです。(うまくいっていないようですが。)一流企業の名刺と福利厚生、それに安定だけが欲しかった多くの従業員に「会社に何かあったら自分は何ができるのか?」という自問自答を求めたのではないでしょうか?(だからこそ公務員が人気の就職口なのですが。)

この流れからすれば起業の土壌は再び出来つつあるのですが、メディアや最新の情報に翻弄されるのか、多くの人は「こんなビジネス、俺にはできない」と二の足を踏んでしまいます。個人的には最先端の技術やマーケティングは必ずしも必要ではないと考えています。自分に合ったやり方を貫けばよいのではないでしょうか?

私の会社にはウェブを使った事業戦略、マーケティングの勧誘が良く来るのですが、断る言葉はたった一言、「私のビジネスは半径500メートル範囲なので地球全体をカバーするウェブマーケティングは必要ありません」と。アップルのiPhoneは当時日本で最先端だった第三世代携帯に対して第二世代の携帯技術をベースに生まれました。何も最新、最先端だけが良いわけではないのです。

以前、自動車販売会社の社長と話をしていた際、長年売っているいわゆるベストセラーと最新のモデルの違いについて「安定感、故障率で考えるか、見た目で見るか、消費者の好みの問題」とおっしゃっていました。なるほど、そこから発展させれば高齢者はよりコンサバになるわけですから携帯もスマホではなくガラケーでよいわけです。

事業継承というテーマを考えるにあたり多くの若くして事業を継承する側は「俺に何ができるのか」と考え、必死に最先端のことを勉強しようとしていないでしょうか?もしも上場会社を目指し、日本全国に支店や店を構える規模なら別です。たった一店舗あるいは数店舗ならば最新の何かより客の期待レベルを考えるべきです。案外、昭和40年代のやり方がワークすることもあるかもしれません。

事業継承は個人的に非常に興味がある分野です。私が仮に継承する立場であればまず、敷かれたレールは本線か支線か見ることです。支線はすぐそこに必ず行き止まりがあります。その場合、諦めるのではなく、そこから線路を更に伸延する方策を立てることです。

資金手当ては大きな難問でしょう。今の銀行は個人の新規事業に融資審査できる能力はありません。そんな銀行は融資の姿勢を変えるべきです。例えばネットで小口出資金を仰ぎ、必要資金の5割集まったら銀行が残りを融資するとか、信用金庫は事業計画立案の作り方講座を開くなど啓蒙し顧客を取り組む姿勢を見せるべきではないでしょうか?

原則論で言えば世の中には安いコストのお金があふれています。大手企業がマニュアルとリスク管理に基づいた商品ばかりを投入するためニッチマーケットだらけになっています。モノはたくさんあるようですが、案外見落としているものは多いものです。

個人的には事業継承には非常に面白い環境が整ってきたと思っています。私もプランを練っています。ぜひとも大企業にはできない面白いことをやってみたいと思いませんか?

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、みられる日本人 8月7日付より

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