知財計画2016のポイント

2016年08月15日 11:30

知財本部が官邸で開催され、安倍首相以下全閣僚出席のもと知財計画2016が決定されました。

柱は2本。
・IoT、ビッグデータ、人工知能などの第4次産業革命の進展と超スマート社会(Society5.0)への展望
・TPP協定を契機に加速する経済のグローバル化

政府は「Society5.0」を標榜して新しい成長戦略を描こうとしています。5.0というのは、1)狩猟 2)農業 3)工業 4)情報に次ぐものだそうです。IoTを第4次の産業革命ととらえるのはドイツ流ですが、日本は産業のみならず、社会・文化を含む文明の転換ととらえるという解釈ですね。ぼくもこっちのほうが性に合います。

項目は4つ。
第1. 第4次産業革命時代の知財イノベーションの推進
(デジタル・ネットワーク化に対応した次世代知財システムの構築など)
第2.知財意識・知財活動の普及・浸透
(知財教育・知財人材育成の充実等)
第3. コンテンツの新規展開の推進
(コンテンツ海外展開・産業基盤の強化、アーカイブの利活用の促進)
第4. 知財システムの基盤整備
大モメだったコンテンツ分野、トピックをいくつかピックアップします。
まず、最も激論が続いたのは、<<デジタル・ネットワーク時代の著作権システムの構築>> 。
そのうち、「イノベーション促進に向けた権利制限規定等の検討」は最後まで調整が続きました。

結論:「柔軟性のある権利制限規定について、次期通常国会への法案提出を視野に、その効果と影響を含め具体的に検討し、必要な措置を講ずる。」
細かい内容はともかく、「柔軟性のある権利制限」の法案を作るということです。

これに続く文章も重要。「予見可能性の向上等の観点から、対象とする行為等に関するガイドラインの策定等を含め、法の適切な運用を図るための方策について検討を行う。」法制度だけでなくガイドラインを作る。ぼくはこっちの作業のほうが意味を持つのではないかと考えます。

法律は大雑把なことしか書きません。実際にどう運用されるか、どこまでがシロでどこからクロなのか。業法などだと所管の官庁が告示などで細かい解釈を示すのに対し、それは司法に任せる、というのが著作権制度の建てつけなのです。

でもそれだと日本の場合、萎縮してビジネスや利用が進まない。それより官庁や関係業界、学界や弁護士、司法関係者などが知恵を出し合い、「まぁこのへんじゃね」というガイドラインを作っておけば、予見可能性が高まって、ずいぶんラクになるはずです。

次の項目。「著作権者不明等の場合の裁定制度の更なる改善」。
「補償金供託について、一定の場合に後払いを可能とすること等の見直しについて内容を検討し、次期通常国会への法案提出を視野に、必要な措置を講ずる。」
これも法整備に向かいます。

「円滑なライセンシング体制の整備・構築」。
「拡大集中許諾制度の導入について、我が国における集中管理の状況や実施ニーズ、法的正当性、実施する団体及び対価の在り方等に係る課題を踏まえ、検討を進める。」
明記されました。前進します。

「コンテンツ等の権利情報を集約化したデータベースの整備を官民が連携して分野ごとに進めていく。」「音楽集中管理センター」(仮称) 等、民間におけるライセンシングのための環境の整備・構築に係る取組に対して、その具体化に向け必要な支援を行う。」
これも重要です。

「私的録音録画補償金制度の見直しや当該制度に代わる新たな仕組みの導入について、文化審議会において検討を進め、結論を得て、必要な措置を講ずる。」
これは、書かれましたが、実効性はどうかなぁ。

そして重要課題。「教育の情報化の推進」。
「デジタル教科書・教材の位置付け及びこれらに関連する教科書検定制度の在り方について、2016年中に導入に向けた検討を行い、結論を得て、必要な措置を講ずる。」
検討が明記されて4年が経過。とっととやりましょう。

もう一つ、今回話題のトピック。
<<新たな情報財の創出に対応した知財システムの構築>>
(人工知能によって自律的に生成される創作物・3Dデータ・ビッグデータ時代のデータベース等に対応した知財システムの検討)。

AI、3D、ビッグデータの知財システムについて、世界に先駆けて議論を進めました。計画では「知財保護の必要性や在り方について、具体的な検討を行う」「我が国における検討状況の海外発信に努める」と記載。引き続き課題ですね。

<<デジタル・ネットワーク時代の知財侵害対策>> では、リーチサイトを通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応に関して法制面での対応の検討を進める、サイトブロッキングの効果や影響など検討を行う、プラットフォーマーとの連携促進に取り組む、といったことを明記。 これも重要です。

<<コンテンツと非コンテンツの連携強化>>では、「クールジャパン官民連携プラットフォーム」など官民や異業種間の連携を促進するとして、担当として「内閣府、総務省、外務省、財務省、文部科学 省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、関係府省」が挙げられました。こりゃたいへん。

同時に、「クールジャパン拠点の構築を目指す民間の取組を後押しするとともに、こうした拠点間のネットワーク化に取り組む」とされました。デジタル特区の竹芝CiP、やります。
官邸の会合でのぼくの発言。
「IoTやAIに代表される新ステージへと世界は急展開を見せています。この分野をリードするという観点から、世界に先駆けて次世代の知財システムに関する議論を進めました。国の政策に取り入れて実行していく、そのスピード感の勝負。政府一丸となった対応をお願いします。」

馳文科大臣「著作権制度の見直し、産学連携、知財教育に取り組む。」
よろしくおねがいします。

小林本部員「国として何をクローズし、何をオープンにするかの戦略が大事。独禁法システムも知財政策と同様に重要。その総合戦略を求む。」
正しい。

迫本本部員「米型フェアユースの導入は紛争解決コストが大きくなる。個別規定で足りる。個人・企業インセンティブ向上には税制・会計制度上の対応で進めるべき。」

川上本部員「AIが得意なのはクリエイティブな仕事。クリエイターや熟練工の役割をAIに担わせるとよい。ネットの治外法権に対しサイトブロッキングが計画に明記されたのは重要。この殖産興業と国家主権という明治政府がやった2本柱が今も大事。」

最後に安倍首相。
「1)著作権制度を見直す。2)AIが作る創作物の制度を検討する。3)小学校段階から知財教育に取り組む。4」アニメ等コンテンツとものづくり等とのマッチングを進める。」

いずれもよろしくお願いします。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年8月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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