ドローン戦略を求む

中村 伊知哉

4年ぶりにサグラダ・ファミリアに足を運びました。4年前と同じ風情で、工事中でした。あと10年で完成させるとバルセロナの人は言います。工事にドローンを使って測量するそうです。ドローン、役に立ってください。

先立って、TBSが仙台で開いた「JAPAN DRONE NATIONALS」に参加しました。ドローンレースが新しいスポーツになりました。超人スポーツとして、2020TOKYOを盛り立てたい。ドローンは役に立つ前に、楽しい、という面が本質です。

しかし2015年12月、航空法が改正され、200g以上のドローンに規制が敷かれました。官邸に落っこちたことで、あれよあれよと規制が成立したことにぼくは危機感を抱きました。
「ドローン、規制より利活用を」
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2015/07/blog-post_22.html

2016年前半、国交省へのドローン飛行許可申請は6000件。年間予測が1000件でしたから、10倍以上のニーズがあったということです。政府はドローンの需要や意味を読み切れていないのでしょう。でも、各国は戦略的に動いています。日本も対応が必要です。

ドローンは電波を使うIT。大まかに言えば3点により構成されます。1)デバイス=端末、2)ネットワーク、3)サービス。経済的な可能性は後ろのほうが大きいと思います。

まずデバイス。2012年にファントムを発表した中国のDJIが世界シェアの7割を握ります。一方、業務用はアメリカ製が強いようです。ただ、カメラ、センサー、バッテリーなど部品は日本製が強い。スマホ端末と似た状況です。

今後、汎用化・大衆化が進むとなれば、小型・精密化やおもちゃ化が見込めます。今年の東京おもちゃショーでは大賞の3点をドローンが占めました。日本メーカーの活躍を期待したいものです。

ITとしてはネットワークがより重要です。現在はアマ無線の電波を使っていますが、2020年以降、5Gで運用することが見込まれます。

携帯電話向けの3G、4Gインフラの整備は日本が世界をリードしたんですが、それで競争力を発揮したことはありませんでした。5Gのインフラ整備で先行して、ドローンで競争力を発揮しませんか。

NTTドコモは携帯電話網を使ったドローンの実証実験を始めるそうです。従来のドローンだと数百mほどしか飛ばせなかったのが、2km以上飛ばせるようになる。農薬散布や農地管理などに使うとのことです。

このためには電波法改正などが必要とのこと。政府がすべきことは、こういうことに道を開く規制緩和です。実証の結果などを待っていては、後れます。
アメリカが気になります。NASAが通信会社ベライゾンなどと連携し、ドローン向け航空管制システムUTMを開発しているというのです。無人で管制するクラウドシステムだそうです。

このシステムは、携帯電話の基地局を利用して、数万機のドローンと常時接続するもので、米連邦航空局FAAが運用する見込みです。これは運用システムを握る国家戦略。

JAXAがドコモやauと連携して国交省が運用するなんて話、聞きません。日本は遅れている模様です。プラットフォームを握られる、デジャブが漂います。規制論の前に、戦略論をやろうよ。

さらに重要なのがサービスです。空撮、農薬散布、警備、測量、インフラ点検、災害調査、貨物運送。利用範囲は広い。これをどう広げ、産業と文化を作っていくかです。

政府には世界に先駆けて利用を規制緩和し、ドローン利用先進国とすることを求めます。そして政府自身が公共事業や防災などで先行的に徹底的にドローンを使うことをお願いします。戦略です。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年8月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。