【映画評】ライト/オフ


レベッカは離れて暮らす幼い弟マーティンから「電気を消すと、何かが来る」という不可解な話を聞かされる。暗闇に潜む不気味な何かにおびえる弟を守るため、久しぶりに実家に戻ることになったレベッカは、たくさんのライトをつけて夜を迎え、そこで一晩を過ごす決心をする。そんな中、ひとつ、またひとつとライトが消えていき、暗闇から得体のしれない何かが迫ってくる。なぜ狙われるのか、理由もわからないレベッカとマーティンだったが、やがて、レベッカの家族、とりわけ精神的に不安定な母親ソフィーにまつわるある秘密が明らかになる…。

動画サイトで公開され1億5000万回再生された恐怖映像を長編映画化したホラー映画「ライト/オフ」。製作が「ソウ」「死霊館」のジェームズ・ワンなので、やはり細部がきちんとしている。90分に満たない長さだが、コンパクトにまとまっている佳作ホラーだ。暗闇に潜む何かは、ヒロインの家族と深い因縁があるのだが、光を嫌うという設定は、他作品にもあるので、まったくの作りものではないようである。この恨みと恐ろしい力の行使は、一家を苦しめる恐ろしい“何か”の思い込みの部分が大きい気がするのだが、この物語、どこか他者に対して壁を作っていたヒロインが、絶対に弟を守ると決意し実行する成長物語になっているところがいい。いつも問題が起こると逃げ出していたレベッカが、家族を守るために戦う勇気が示されている。

音でビックリさせるショックショーンもあるにはあるが、本作で本当に不気味なのは、かすかに聞こえる何かをひっかくようなノイズだ。これが実はかなり怖い。なぜ闇に潜むのか、なぜレベッカ一家(特に母親ソフィー)に執着するのか。そしてダイアナという名前のその怪物の本当の目的は。詳しくは映画を見て確かめてほしい。…だが、しかし!電気を消したらシルエットが見え、付けると消えている。次につけると近づいている。この一連の動きに、昔遊びの“だるまさんがころんだ”がどうしても重なってしまったのは、私だけ?? ダイアナ主演のスピンオフを強く希望!だ。
【60点】
(原題「LIGHTS OUT」)
(アメリカ/デヴィッド・F・サンドバーグ監督/テリーサ・パーマー、ガブリエル・ベイトマン、ビリー・バーグ、他)
(姉弟愛度:★★★★☆)


編集部より:この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年9月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。