相次ぐ精神保健指定医問題の背景

2016年09月09日 09:47

 去る9月2日に、痛ましい相模原市「やまゆり園」19人殺害事件に関して障害者殺傷 措置入院診断に関与の医師 資格不正取得かの報道がなされました。

「措置入院が必要かどうかは「精神保健指定医」という国の資格を持った医師が診断する必要がありますが、関係者によりますと、男の措置入院をめぐる診断に関わった医師について、厚生労働省が調べたところ、1人が資格を不正に取得していた疑いがある」(NHK)

そして、本日は、こんなニュースも飛び込んできました。障害者者施設襲撃 精神科病院から退院する際の書類に不備
書類不備のみならず「容疑者は入院中にも、薬物依存の治療プログラムを受けておらず」という状況だったそうです。

昨年は「聖マリアンナ医科大学病院で、11人の医師が実際には診療していない症例を国に報告するなどの方法で不正に取得していた」ことで前代未聞の大量処分となっています。

 東京都では、今年の2月に都立病院医師が精神保健指定医の資格を失効したまま診察を218件も行い、懲戒処分となっております。(過去ブログ都職またも失態。都立病院医師、精神保健指定医資格更新失念ご参照)

 「精神保健指定医」とは、精神保健福祉法18条では以下のように定義されてます。
(精神保健指定医)
第十八条  厚生労働大臣は、その申請に基づき、次に該当する医師のうち第十九条の四に規定する職務を行うのに必要な知識及び技能を有すると認められる者を、精神保健指定医(以下「指定医」という。)に指定する。
一  五年以上診断又は治療に従事した経験を有すること。
二  三年以上精神障害の診断又は治療に従事した経験を有すること。
三  厚生労働大臣が定める精神障害につき厚生労働大臣が定める程度の診断又は治療に従事した経験を有すること。
四  厚生労働大臣の登録を受けた者が厚生労働省令で定めるところにより行う研修(申請前一年以内に行われたものに限る。)の課程を修了していること。

ことに留意すべきなのが33条。

(医療保護入院)
第三十三条  精神科病院の管理者は、(中略)その家族等のうちいずれかの者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる

 つまり、精神保健指定医は、一定の技術要件を要さねばならず、またその判断で、強制入院、身体拘束、隔離など人の身柄を拘束ができるということです。医師の判断で、このような、一人の人間の人生・尊厳にかかることができてしまうことに驚かれる方もおいでかと思います。これは指定医に「強制入院、身体拘束、隔離」の権限があるというよりは、指定医の資格があるということで、逮捕監禁罪に問われないという「違法性阻却事由」があるだけのことなのであります。よって、資格がない、資格要件を満たさない、あるいは不正取得した者がそのような行為を行えば、逮捕監禁罪に問われることにもなりかねません。
 ことに東京都立病院の医師が失念で失効し、しかも自覚のないまま業務を8か月近くしていたということは、本来地域医療の底上げを図る自治体医療現場としてはあってはならないことでした。厚生労働省から都へ指示されたものについては「他の精神保健指定医が分担して専門的な見地から診療録等を閲読・分析したうえで、院内の幹部医師や看護師等の幹部職員を交えた事例検証会で改めて確認し、診療内容は適切であると確認」としてしているとしていますが、入院精神療法については、精神保健指定医が行った場合として算定していため、183 件 235,200 円を返還する事態となったわけです。

 都は、診療内容は適切と言い切っていますが、指定医の資格を失効したままで、当該医師が指示した各件数内訳は、以下の通りです。

◆強制入院(緊急措置入院) 21件(うち未成年 1件)
◆身体拘束 65件(うち未成年 0件)
◆隔離 63件(うち未成年 2件)

 未成年を含んでいる数字で見ますとリアルにどんなことが起こっているか想像と理解がしていただけると思います。なお、当該医師は本年4月に指定医資格を再取得しています。

 また、あわせて、東京都に精神保健指定医辞退届と指定医証返納届(取消・停止)の届出本文の情報開示請求をしました。

*****
平成27年
指定取消しによる返納 8名
診療科目変更につき辞退 1名

平成28年
一身上の都合による辞退 1名
老化のためによる辞退 1名
*****

 病院経営本部担当課長によれば、平成27年の取消し返納は、これまでにない数であったとのことです。指定取消しにあたっては、精神福祉法19条の2において「法律若しくはこの法律に基づく命令に違反したとき又はその職務に関し著しく不当な行為を行つたときその他指定医として著しく不適当と認められるときは、厚生労働大臣は、その指定を取り消し」出来ると定義していますから、どのような「著しく不当な行為が」ことが起こったのでしょうか…。

【お姐総括】
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 やまゆり園事件容疑者が措置入院するにあたり、3名の精神保健指定医が診察していますが、一人目は「そう病」と診断し、別の指定医は「大麻精神病」「非社会性パーソナリティー障害」と診断しました。最後の1人は「妄想性障害」「薬物性精神病性障害」と診断しています。同一人物に対する診断が3人で全て異なるという現象をみても、精神保健指定医の診断や判定が果たしてどれが正しかったのかどれも正しくなかったのか?という問題も残ります。聖マリアンナ医大の大量処分と、東京都における大量取消しの関連性も気になるところ。個人情報保護のために当該医師のことはご覧の通り不明ですが、都民や患者の人権と尊厳を守るため、今後処分逃れのための精神保健指定医の返上などないか、相次ぐ指定医をめぐる事案に引き続き厳しく注視してまいります。

改めまして、やまゆり園の犠牲者の皆様のご冥福を心よりお祈りいたします。

☆お姐、その人らしく生きる自由を守るために声なき声に耳を澄ませ備えよ常に!☆

上田令子 プロフィール

東京都議会議員(江戸川区選出)、地域政党「自由を守る会」代表、地域政党サミット(全国地域政党連絡協議会)副代表
白百合女子大学を卒業後、ナショナルライフ保険(現ING生命)入社後、以降数社を経て、起業も。2007年統一地方選挙にて江戸川区議会議員初当選。2期目江戸川区議会史上最高記録、2011年統一地方選挙東京都の候補全員の中で最多得票の1万2千票のトップ当選。2013年東京都議会議員選挙初当選。2014年11月地域政党「自由を守る会」を設立し、代表に就任。2015年3月地域政党サミット(全国地域政党連絡協議会)を設立し、副代表に就任。

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上田 令子
東京都議会議員(江戸川区選出)、地域政党「自由を守る会」代表、地域政党サミット(全国地域政党連絡協議会)副代表

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