【映画評】ある天文学者の恋文

2016年09月24日 06:00
Correspondence (La Corrispondenza)

天文学者エドと、教え子のエイミーは、秘密の恋をしていた。その日もホテルの一室で愛しあった後、エドは自宅へと戻っていった。ある日、出張中のエドからエイミーにメールが届く。だが同じ日、大学の講義が始まる前、エドが数日前に亡くなったという衝撃的な訃報が届く。驚くエイミーだが、それからもエドから、次々にメールやプレゼントが届き続けた。エドが残した謎を解き明かそうと、エイミーは、エドが暮らしたスコットランドのエジンバラ、二人で訪れたイタリア湖水地方を訪れる。そこで、エイミーが誰にも言えずに封印してきた過去を、エドが密かに調べていたことを知るのだが…。

死んだはずの恋人から届くメッセージの謎を解き明かすラブ・ストーリー「ある天文学者の恋文」。亡き恋人からの手紙や贈り物の意味は?誰かのいたずらなのか。死者からの不思議なメッセージなのか。もしやエドはまだ生きているのか。ミステリアスなその謎を調べる主人公エイミーの旅は、そのままエイミー自身をみつめる旅になっていく。謎を解くカギのひとつは、天文学者エドと教え子エイミーが星と天空を愛し、その神秘に魅せられていることだ。夜空で美しく輝く星は、その輝きが地球に届く時、もしかしたらもう何年も前に消滅しているかもしれないという不可思議な事実。時間と空間を超えて届く輝きがあるように、本物の愛もまた、時を超えて届けられる。

ミステリーの詳細は映画を見て確かめてほしいが、エドの愛情の伝え方は、考えようによっては恋人をいつまでも束縛するエゴイスティックなものともいえる。それでも最愛の人が誰にも言えずに抱えていた苦しみを和らげようと、人知れず心を砕くのは、恋人の愛であると同時に、大人の慈愛のようで胸にしみる。名優のジェレミー・アイアンズが、老天文学者の大きな愛と内に秘める寂寥感を静かに熱演して味わい深い。スコットランド・エジンバラの落ち着いたたたずまいや、イタリア湖水地方のサン・ジュリオ島の美しさが、物語を彩り、少し風変わりなラブストーリーに、エンニオ・モリコーネの美しいメロディーがそっと寄り添っている。ジュゼッペ・トルナトーレ監督が近年得意とするミステリー仕立ての恋愛映画だ。
【60点】
(原題「CORRESPONDENCE/LA CORRISPONDENZA」)
(イタリア/ジュゼッペ・トルナトーレ監督/ジェレミー・アイアンズ、オルガ・キュリレンコ、、他)
(ミステリアス度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年9月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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