国会議員や国家公務員の二重国籍禁止は無意味

池田 信夫

キャプチャ国会で二重国籍の論議が始まった。自民党の有村治子氏の質問に対して安倍首相は「外相、副大臣、政務官は議員がなる。首相もそうだ。外交交渉は国益と国益がぶつかる。そうしたことについて、果たしてどうだろうか、ということになる」と答弁した。

これはその通りだが、維新の出している国会議員の二重国籍を禁止する法案には意味がない。今でも国籍法ですべての日本国民に二重国籍を禁止しているので、国会議員も禁止だ。これは(閣僚を含む)国家公務員も同じで、首相も外相も二重国籍は禁止だ。すべての日本国民に泥棒を禁じているので、国会議員や閣僚に泥棒を禁じる必要がないのと同じだ。

問題は国籍法の運用である。どこの国でも移民や国籍には複雑な事情がからみ、明快に断定できない。日本の場合は在日韓国人などに「特別永住資格」という国籍のようで国籍でない資格を与えたため、二重国籍を厳格に禁止すると、彼らの扱いが厄介なことになる。さらに台湾との関係には「一つの中国」がからみ、法務省も「台湾を国と認める」とも「認めない」とも明言できない。

だから国会議員については、立候補の届け出のとき「外国籍を保有しているか」という質問を設け、国籍離脱を証明する書類の提出を求めればよい。国家公務員については外交官のように採用のとき明文で禁止し、雇用してから見つかったときは催告して国籍を離脱させればよい。閣僚についても、誓約書と一緒に旅券のコピーを提出させるぐらいで十分だろう。

ただし蓮舫代表のように悪質なケースは別だ。彼女は問題が発覚してから1ヶ月以上にわたって嘘をついて逃げ回り、今に至るも証拠となる書類を見せていない。小野田紀美議員は、求められてもいないのにすぐ出したのだから、蓮舫氏も戸籍謄本や旅券を出すべきだ。

もちろん出せないのは理由がある。彼女の旅券は1985年以降に更新されているので、そのとき旅券に「外国の国籍を有していない」と記入したのは旅券法違反の動かぬ証拠だ。戸籍謄本で国籍選択の「宣言」をしたのは早くても今年9月6日で、これは国籍法14条違反の証拠だ。以上は公選法違反(経歴詐称)の証拠にもなる。

このように厳格に運用すれば、国会議員も国家公務員も二重国籍を排除できるので、今後はそれに特に注意して国籍法を運用する、という閣議決定ぐらいで十分だろう。その運用に実効性をもたせるためにも、蓮舫氏のような悪質な違反は起訴し、議員資格を剥奪すべきだ。